見出し画像

【短編小説】ゆめ

ゆめだ、と思ってから、私の身体はこわばらなくなった。

だってそれだけで、悩まなくて済む。

ここにいる私はきっと、もうどんなしがらみからも解放されている。

さっきまで両手に握っていたロープは、もう離していい。

昔いなくなってしまった、猫のゆめが、小さくすこやかに鳴いた。

やっぱりこっちにいたんだ、と顔を緩めしゃがみ込むと、手元に近寄ってきてくれた。

ありがとう、と言うと、身体が波で覆われて行った。

私はもう、自由だ。

おわり

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?