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うつしおみ 第29話 無明と灯火

光と闇が渦巻く世界で、
魂はどこに行けばいいか分からずにいる。

魂たちはそれぞれ闇雲に歩くため、
幾度もぶつかり合い、朦朧としている。

誰ひとりとして確かなことを知らず、
その苛立ちと悲しみに力が奪われる。

見渡せば茫漠とした世界の中で、
一体、何を知ればいいというのだろうか。

夜明けの一瞬の輝きに歓びもするが、
それさえ夜には闇へと吸い込まれてしまう。

世界に魂の救済がないならば、
世界が魂に救済を求めているのか。

そんな救済など、手のひらさえ見えない闇夜の森で
道に迷う絶望と変わりはしない。

そこに真実があると分かれば希望になるが、
暗闇を照らす灯火はどこにも見つからないのだ。

だが、魂自身が灯火だという真実は、
その光がわずかであっても、世界を希望で照らすだろう。

魂が知るべきことは、
結局のところ、たったひとつのその真実だけなのだ。

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