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うつしおみ 第30話 陽炎の日々

どれだけ目をそらしていても、
真実が魂のそばから離れることはない。

魂は見たいものを見るのだが、
それは夏の日の陽炎のように揺らめいている。

たとえそれが陽炎であっても、
魂にとっては乾いた心を潤す甘美な水なのだ。

誰もがそれを手にして祝杯をあげるが、
現実は砕けた砂が手からこぼれ落ちていくだけ。

魂が世界で手に入れられるものなどなく、
ただその流転を必死に泳いでいるだけなのだ。

それでも飽きずに手を伸ばし続けるのは、
そうしないと自分を失う気がするから。

そんな自分が誰なのか振り返れば、
そこにはいつでも静寂の暗闇がある。

魂は妖艶に揺らめく陽炎を真実だと信じて、
移り変わる世界の色に沈んでいる。

それでもあの静寂の暗闇は失われず、
そんな夢見の魂からも消え去ることはない。

その真実はすぐそこにいて、
魂が世界の夢想から目覚めるのを待っている。

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