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うつしおみ 第28話 流転の果てに

流転する世界の苦い痛みに耐えかねた魂は、
深い森の静寂へと救いを求める。

蒼空は灼熱の世界を眺めているだけで、
手を伸ばしても見知らぬ振りをするだけ。

闇夜に消えてしまえば楽にはなれるが、
それでもあの道は残されている。

世界は我が魂を虚空より引き戻し、
険しい岩山の風雪に晒して絶望に落とすだろう。

魂はその世界で虚ろにさまよい、
凍りついた涙が何の役にも立たないと知るのだ。

世界は魂に何かを伝えようとするが、
甲高い雑音混じりの小声が風に掻き消されるだけ。

蒼空はそこにいて無言を貫き、
魂の心の叫びは朝露に流れて深海の静けさへ還される。

この果てしない流転の中で、
魂はどこを目指せばいいのかいまだに知らない。

生きている理由も、その意味も分からず、
自分が誰かさえ忘れている。

だが、魂が自らの根源に目覚めれば、
それだけで、この世界の流転は即座に静止するのだ。

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