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うつしおみ 第11話 変わらないもの

崩れ落ちていく世界に、
無言の眼差しを向けてその時を待つ。

世界は崩壊したその瓦礫の深みより
何かを生み出そうとする。

たとえ灰燼に帰しても、
その鈍い痛みのあとにあの解放が起こるのだ。

瓦礫に埋もれていたその種は芽吹く時を知り、
暗闇の中で目を覚ます。

最初のその芽はあまりに弱く、
砂に落ちる涙のしずくのように消え去る。

それでも絶え間なく芽吹き、
やがて瓦礫の山を鮮やかな緑色で覆うのだ。

それは森になり、躍動する生命に満たされ、
光り輝く大河の流れとなるだろう。

そうして世界は美しくよみがえり、
また瓦礫の山に戻る日を待つのだ。

世界はそれが本性かのように
崩壊と再生の流転をやめないだろう。

そんな世界を変わらないものが
静かに空から眼差しを向け続ける。

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