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うつしおみ 第6話 木の葉散る
秋の木漏れ日は、
夏の喧騒と冬の静けさとに戸惑いながら揺れている。
木の葉たちは手に入れたものが失われていくのを眺め、
それでもまだ何かをつかもうとしている。
冬の冷たさを届ける風が、
そんな姿に寂しげな眼差しを向けて通り過ぎる。
喜悦の夏が過ぎれば、
冬の来る前に眠りに落ちると知っている。
それでもまだ何かをつかめるのではないかと、
高く澄んだ空へと乾いて痩せた手をのばす。
秋の夕陽に揺れる変わり果てた自分の姿に、
もはや何の力も宿ってはいないと知らされる。
紅く染まった木の葉たちが、
一枚また一枚と枝から離れて秋風に舞い踊る。
大地が色とりどりの木の葉で埋まり、
それは風に吹かれて寂しげな声で歌う。
その歌声が聞こえなくなれば、
世界から忘れ去られるのを待つだけだ。
大地はそんな木の葉たちを抱いて、
沈黙の言葉を語り続ける。
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