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うつしおみ 第58話 小さな光

魂は春の浅い眠りの中で、
心の奥で光る小さな金色の光を見つけた。

それは魅せられるほどに美しく、
見つめているだけで幸せな気持ちになった。

さらに近づき触れてみると、
その輝きは魂を包み込み、眠りから目覚めさせた。

その目覚めは強烈な印象を刻みつけ、
それで魂は誰とも違った存在になれたと思った。

だが、魂はその光を眺めたり触れたりするだけで、
それが本当は何かを知らずにいた。

金色の光はただ美しく輝いているだけで、
魂に特別な何かを与えることはなかった。

魂は次第にそんな光に飽きていき、
興味も薄れて見向きもしなくなっていった。

心の闇の中で金色の光は遠く離れて小さくなり、
ほとんど見えなくなった。

そのとき魂は世界にあふれる極彩色の景色に惹きつけられ、
そこで眠りに落ちたのだ。

そんな眠りもいつか目覚めを迎えるが、
金色の光はいつも魂の中で輝き続けている。

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