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うつしおみ 第39話 循環の停止

柔らかい太陽の日差しと湿った土の匂いの風が、
魂に何かを思い出させる。

この世界に生まれたときには名前すらなく、
存在する何の価値もなかった。

魂は自分が何者かを知るために名前を受け、
世界から何かを手に入れようとした。

そうして何者かになれば、世界での価値が高まり、
一時の安心を得ることができた。

だが、そうして生きてもいつか死が訪れ、
得たものすべては世界に還される。

魂は名前を失い、純粋な自我という魂に戻り、
ただ闇雲に霧の夜をさまよう。

そんなときは光さえあれば救われると、
そんな輝く世界に生まれたいと願う。

純粋な自我が自分だと思い続けている限り、
この光と闇の循環は止まらない。

魂が世界で真我に目覚めるとき、
永遠とも思われたこの循環は完全に停止する。

真我はその循環を超えて立ち、
それをさも美しいものかのように眺めるのだ。

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