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うつしおみ 第32話 太陽の詩

太陽がいつ生まれたのか知らないが、
空を見上げたときに、それはあった。

その光は大地を遍く照らし、
厚い雲に覆われていても、その向こうで輝いている。

人の目が向いていないときでも、
その存在を忘れていたとしても、それはある。

いつも空にいて休むことも眠ることもなく、
それでいて何かを要求することもない。

その光に何かの意図や計画があるわけでもなく、
善悪や感情すらもない。

誰かが太陽を神と呼んで崇めたが、
太陽が私は神だと言ったわけではない。

暗闇を切り裂く光は力強く澄み切っていて、
それでいて柔らかなやすらぎがある。

太陽はあらゆるものを焼き尽くす力を持ち、
あらゆる生命を育む力をも合わせ持つ。

誰もがこの太陽の末裔であり、
そして、それをこの空に生み出した始祖でもある。

我が存在はその光を大地より仰ぎ見て、
その太陽を懐に抱いてもいるのだ。

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