舞台・僕だってヒーローになりたかった
鈴木おさむ✖田中圭 舞台三部作の2作目、2017年の作品。
「芸人交換日記」でこの二人が作る舞台にドはまりした私なので、本作もどうしても観たい!と思っていたのだけど、DVDはとっくに売り切れ。
もちろんTV放送なんてないからなかなか観る機会にめぐまれなくて、ずっと悔しい思いをしていた。
が、2022年(かな?たしか)にDVDが受注生産で再販されることに!
もう大喜びして購入。
ただその頃から自分の仕事が忙しくなってしまったこともあり、購入後に一度は見たものの何度も見返す余裕まではなかった。
だからなかなか感想なども書く機会がなくてちょっと消化不良みたいな感じがあった。
しかしこの度(2024年8月)ついに、日本映画専門チャンネルでTV初放送!
しかもリアルタイムは字幕付きで視聴できる!!
(でも録画すると字幕は消えてしまうんですけどね…)
おかげさまでがっつり鑑賞することができたので、記念に感想などを書いておこうかなと思います。
ではまずは超ざっくりしたあらすじから。
主人公の小中正義は、子どもの頃からチヤホヤされて順風満帆の人生を送ってきた。
ところがその人生は高校時代に出会った人物によって狂いが生じ始める。
そして大人になって起業して社長にまで上り詰めた後、決定的な挫折を体験。
それをきっかけに自分の生き方を変える決心をする。
そこで以前秘書をしていた常識的な女性・真子に自分の傲慢さを指摘し徹底的に教育し直してもらう。
正義を嫌っていた真子も、人柄が変わったようになった正義に惹かれるようになり、二人は結婚。
ささやかだけど幸せな生活が始まった。
…ように見えた。
そんな矢先、政府の高官から
「国民のために、テロリスト(ダークヒーロー)を演じてくれないか?」
と依頼された正義。
妻子のため、国民の為にその依頼を引き受けた彼は、必死にテロリストとしての任務を果たそうとする。
実はそれは人を絶対に傷つけず、器物の破壊も最小限で行う方法で実行された。
でも何も知らない人々からすれば、正義は平和を脅かす存在であり、悪役でしかない。
国民は彼を嫌い憎むようになっていった。
そうこうしているうちに、正義と敵対する「正義のヒーロー」龍馬が現れる。
龍馬もまた、政府高官から依頼されて計画的にヒーローの任務を請け負っていたのだが、人々はそのヒーローの登場に熱狂する。
そして正義は、その「ヒーロー」である龍馬と、この計画の首謀者である日本と国民からしだいに追い詰められていく…
おさむさんの舞台らしく、本作でも圭くんのセリフ量は半端じゃない。
ひたすら観客に向かって語り続け、軽やかに動き続ける。
ちなみに、圭くんがあまりに軽々とやってるから大変さをあんまり意識せずに観られてしまうんですが、
たぶんこれとんでもないことやってますよ!!
では要所要所の感想などを。
正義は、当初は鼻持ちならない人物として登場する。
見た目の雰囲気はちょっと違うけど「夜のせんせい」に出てきた、上武俊介をほうふつとさせる小憎らしいキャラクター。
服装もヘアスタイルも口調もまぁちょっとイヤミなくらいにキザで、陽キャの代表みたいな存在感がある。
田中圭という俳優は、好人物を演じるのもいいんだけど(春田みたいなね)、こういう過剰なエリート意識を持った人物を演じさせてもホントに天下一品!
あまりにも上手すぎて、もしかして本人もこういう人じゃないの?と思わせてしまうのは良いのか悪いのか😅
ところがそんな正義がテロリストになると雰囲気が一変する。
髪を下ろし、ダークスーツに身を包んだ彼の目は暗い輝きを放ち始める。
太陽の明るさから月をほうふつとさせるものに変貌してしまうのだ。
でもこのダークな雰囲気もまた似合うんだよなぁ、田中圭という人は。
というか個人的には、むしろこういうちょっと陰がある感じがすごく魅力的な人だと思う。
そして、そういう陰のある(訳アリの)人物が命の瀬戸際まで追い詰められていくさまをものすごくリアルに演じることができるのが、彼のお芝居の素晴らしさの一つだと思っている。
考えてみれば、彼がおさむさんの舞台で演じる人物たちはみんなそうた。
相棒のために自分の夢を諦める甲本。
家族のために悪役を買って出る正義。
大切な人のために命を投げ出す月人…。
みんな繊細で、熱い理想や夢を持ってるのにその生き方は限りなく不器用で、情けなくて、格好悪いところもたくさんある。
でも、だからこそ愛おしい。
その不器用さが切なくて愛おしくて、もう全力で守ってあげたくなってしまう。
そう思わせてしまうのは、圭くんが舞台で見せるひたむきで真っ直ぐで熱いお芝居と、田中圭という俳優さんのもつ個性をしっかり捉えてるおさむさんが描く人物像がものすごくうまくかみ合っているからなんだろうな。
本作でも、自分なりの使命感を持ち、生き生きとテロリストという悪役を演じていた正義が、この世界の不条理さに苦しみ、追い詰められていくさまを観ていると辛くなってくる。
その痛々しいまでの不器用さと必死さに、観ている側もどんどん感情移入してしまい、悲劇的な結末に胸が張り裂けそうになる。
しかも結果的に沢山の人々を救った正義こそが、実は本物のヒーローだったと人々が気づくのは「全てが終わったその後」だったのだ。
このあたりのやるせなさや切なさは、三部作全てに共通している。
圭くん演じる主人公たちは皆、自分の中の正義を声高に叫んだり誰かを責めたりしない。
誰にも何も告げないまま自分一人でそっと大きな決断をする。
観ていてとても切ないし悲しい。
でもその決断は最後にほんのわずかの救いと希望につながっていく。
完全な絶望というわけじゃない。
だから、私はこの三部作が大好きなんだろうなと思う。
ちなみにこの舞台には、圭くんと同じトライストーンに所属している個性派俳優・手塚とおるさんが官房長官の甲本として出演している。
正義と甲本とのやりとりは主に作戦会議でのシーンになるのだけど、ここはコメディタッチで描かれていて、二人の会話のテンポの良さゆえについつい笑ってしまう。
私は密かにとおるさんも大好きなので、どさくさにまぎれて圭くんに本音を言うシーンがあったりするのがとっても嬉しい。
それと、おさむさん舞台三部作は、主題歌がJ-POPなのが特徴の一つだと思うんだけど、
本作ではコーネリアスの「The Sun Is My Enemy」が使われている。
明るくアップテンポな曲で出撃が順調に行われているときは景気づけとしてもとても楽しいんだけど、ラストシーンで使われると切なさがより一層強調されていて、毎回聞くたびにすごい使われ方だなぁと感心してしまう。
しかも確か劇中にも「太陽が敵になる」みたいな台詞があったと思うんだけど、
太陽が敵 → 夜・月 → 月人
ということで3作目の「もしも命が描けたら」に繋がっている?って思ったら、このあたりもちょっと感動していたりもする。
最後に、文中に写真を貼れなかったので、参考までにこちらの観劇レポートを。(やっぱりプロが書くレポートはすごいです)
残念ながら鈴木おさむさんは脚本業から引退してしまったけど、これからもこっそりと圭くんとの舞台だけはやってくれないかなぁ。
別名でいいから。
観る人がみたら
「ああ、これきっとおさむさんのホンだ」
って分かるような舞台になっていてくれればそれでいいから。
いつかまた、新たな鈴木おさむワールドに生きる圭くんを観たいなぁと切に願っています。
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