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ちょっと気になる「インティマシー・コーディネーター」

https://otekomachi.yomiuri.co.jp/workstyle/20220610-OKT8T343650/

最近ちょっと気になっているのが、映画関連のネット記事でもちらほらその名前を見かけるようになった「インティマシー・コーディネーター」という職業。

いわゆるヌードシーンやラブシーン、濡れ場、ベッドシーンといった
「親密=インティマシ―」なシーンを支援する専門家だという。

今年「君らしく働くミライへ」(QuizKnock・著)という中高生向けの本が出版され、「新時代の仕事」として様々な職業が掲載されているのだが、ここにもインティマシー・コーディネーターが取り上げられている。

なぜ私がこの職業に興味を持ったか?ということを少し書かせていただきますと。

私の推しである田中圭という俳優さんは、おそらく同世代では群を抜いて
インティマシー・シーンの撮影経験が多い俳優さんだと思う。
正直、そういうシーンがない出演作品を探す方が大変なくらいに。

彼は、いい作品を撮るために監督から要求されれば、裸になることくらい全く厭わないタイプだし、芝居のうまさはもちろん、そういう部分でも重宝されてきたところは正直あるんだろうと思う。

ただ、時には本人からも「AV男優かと思った」という発言がでるほどの、かなりキワドイシーンがある作品もあって、ファンとしては正直、やきもきすることも少なくない。

もちろん彼自身は、露出狂でもなければ、自分の肉体美を誇示したいナルシストでもない。
あえてそういうシーンがある作品を選んで出演してるわけでもないだろう。

ほとんどの俳優さんがそうであるように。

脱ぐくらい、ベッドシーンがあるくらい、普通のこと。
だって俳優ってそういう職業だから。

本人も周りも視聴者も、おそらくその一言でずっと割り切ってきたのだろうと思う。

でも私はちょっと気になっていた。
果たして、彼の尊厳は今までちゃんと「守られて」きていたんだろうか?
脱いで当たり前という無言の圧力で辛い思いをした(させた)ことはなかったんだろうか?と。

俳優部は、演出部の想いを形にするために存在している。
演出側が必要だと判断すれば、俳優はそれに従って演技をする。

それは職務上、当然の事だとは思うけど、でも俳優さんと監督さんとでは明らかに立場が違うように思う。

俳優さんというのは基本オファーがなければ仕事ができない存在なので、製作陣に物申すのはなかなか勇気がいる事も多いだろう。
駆け出しの俳優さんに至っては特に、そういうシーンでの自分の扱い(演出)に抵抗感や意見があっても、なかなか言い出せないだろうな…ということは素人にも想像がつく。

特に、現場では発言権が弱いだろう(そしてそういうシーンが発生する可能性が高そうな)若い女優さんが、過酷な状況に一人で立ち向かわなければらない状況になることは想像に難くない。

そしてそれは「若い」「女」優さんに限ったことでもないんだろうなということも。

男性俳優なら別に脱いでも平気だろう、とか、
若くて綺麗な女優(イケメンな俳優)さんが相手役だから良いだろう、というのは、見ている側のただの思い込みでしかない。

もちろん演出側としては、それが作品上必要だから指示しているだけで、俳優さんを傷つける意図は全くなかったとしても。
結果的に俳優さんの尊厳を踏みにじることになってしまっていたら、
そして観る側が何かの拍子にそれを知ってしまったとしたら、
どんなに高評価の作品だとしても、見ている側としてはやはり辛い気持ちになってしまいそうな気がする。

また、そういったトラブルは演出と俳優の間に留まらず、俳優さん同士の間でもあるとのこと。
先輩後輩といった上下関係が影響したり、逆に仲良しであるが故に自分の意見を言い出せないとか、さらには、片方はそのつもりがなくても、もう片方の相手役の方に「知らず知らずのうちに」不快な思いをさせている可能性だってある。

そしてそれが回りまわって、その本人の将来的な仕事に影響を与えてしまう可能性だってなくはないのだ。

そういったことを考えると、俳優さんにとっても演出側にとっても、インティマシー・コーディネーターというのはとても大切で、心強い存在なんじゃないかと思う。

ただこの職業はまだ知名度が低いので監督さんによっては、一方的に俳優さん側の味方をし、演出に口だししてくる存在なのでは?と警戒されてしまうこともあるらしい。

でもそんなことはなくて、あくまでも演出と俳優さんの間に立って意見を調整したうえでベストな作品を作り上げる撮影スタッフの一人として存在し、演出側・俳優側と適度な距離感を保ちつつも、俳優が一方的に傷つくことだけは絶対にないようにということを心掛けているとのこと。

こういった記事を読めば読むほど、ホントに大切な存在だなぁと思ってしまうし、むしろ今までいないことが普通だったのか…!ということに少し驚いてしまう。

今、撮影現場でのパワハラやセクハラが問題になっている。
でも、ほとんどの監督さんはそんなこと望んではいないはずだ。

もちろん意見の相違はあるにせよ、不必要に傷ついたり苦しんだりすることなく、お互い気持ちよく仕事をしていきたいと思ってるのはきっとどこの業界でも同じだろうと私は信じている。

将来的に、性的シーンがある場合にはインティマシー・コーディネーターに間に入ってもらうということが当たり前になっていけば、意図しないまま俳優さんに対してパワハラ・セクハラの加害者になってしまう、ということも避けられるのではないかなぁと思う。

ただ2022年8月現在、インティマシー・コーディネーターというのはまだ日本には数名しかいないとのこと。

インティマシー・シーンというデリケートな部分に関わる以上、
性に関する正しい知識も絶対に必要になってくるし、
演出側の意図を汲みつつ、演じる人の気持ちを大切にするためには
映像作品に関する知識も必要だろうし、
なにより、俳優部・演出部(だけに限らなそうだけど)との高度なコミュニケーション能力が必要になってくるということを考えれば、確かに誰にでもできるという職業ではないのだろうなぁと思う。

でもできれば今後は、目指す人・利用する人がどんどん増えていって欲しい。

そしてどのようなシーンにおいても、俳優さんの尊厳が「守られる」ことが当たり前になって欲しいなぁ。

いち映画ファンとして、俳優沼住人として、そう願っているのだ。

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