季節の贈り物

夫の母は私の実家に季節の挨拶をしてくれている。
実家からも我が家と義母の家に、家業に伴う品が機械的に送られている。

結婚後ほどないお盆の帰省の時だっただろうか。

帰ったばかりの私に母が不穏な気配で話しかけてきた。

「ちょっと、『夫』君のお母さんから御中元が届いたんだけど・・・。」

嫌な予感がした。

「それが、〇〇だったのよ。」

〇〇・・・母が好まない物。

気付かないふりをし「そうなんだ。」とだけ答える。

少しの沈黙。後、母が嫌悪感も露わに口を開く。

「家ではこういうのは使わないってちゃんと言っといてちょうだい!」

そう言うとそのまま部屋を出て行った。

帰省早々いつもの嫌な塊が込み上げてくる。

これは普通なのだろうか。

気に入らないのなら直接自分で言えばいい。
どのみちお礼の電話をするのだから。

きっと母は電話口で丁寧に言うのだろう。
『結構な物を頂戴しまして。』

自分では絶対に言わない。
おくびにも出さない。
だけど『気に入らない』は我慢出来ない。

それが

娘の嫁ぎ先からの贈り物の不満を娘に言わせようとする暴挙となる。

自分の不満を晴らすことしかない。

夫の母は私を介した縁戚だ。

だけどお中元が気に入らない母の眼中には、母とお中元と義母しか存在しない。

私は母が自分の品位を損なわず憂さ晴らしするためのちょうどいい捨て駒だ。

もし私が馬鹿正直に贈り物の不満を伝えたとして。
その先の私の置かれる状況は、母にとって関心の外側だ。


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