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第3話 ブルー系の香り

あー、今日は眠い…
昨日はなんだか、やることが沢山あって帰りも遅くなってしまい、それに加えて友達からの彼氏にふられた~と泣きながらの電話…ひたすら聞くだけなんやけど、それが深夜まで続き、泣くだけ泣いたらスッキリしたわ、と電話が切れたのは夜中の3時。しかも、今日の出勤は早めだった為に朝の8時過ぎには家を出た…。正直、しんどい…眠いぃ

なんだか、ぼーっとしながら舞台裏の廊下を歩いていると今日も出番のイケメン高身長の石井くんが楽屋から出てきた。
「お……おはよう」と、珍しく石井くんから挨拶された。
「おはようございます。寄席と夜にもライブでしたね」
と、少し人と会話すると目が覚めてきた。
「先日は美味しいごはん、ごちそうさまでした!」と、デコピンの件での詫びで奢って頂いたことのお礼を言った。何だか、それ以上は会話するには頭が回らず、とにかくランチ食べてどこかで少し寝ようと考えながらその場から離れた。なんか石井くん言いたそげな顔してたような気がしたけど、まぁいいか。

コンビニに行き、とりあえずお握り2つと大好きなプリンがあったので、これ食べたら元気でるかなって(たまにでる妙な女子感)考えながら買って、いつも私がお昼を食べている、廊下に長椅子が置いてある場所へと向かった。私がそこに寝そべっても余裕があり、硬すぎず柔らかすぎない調度良い長椅子。休憩終了まであと40分ほどはあるな、と腕時計を眺めながら、その場に寝転がった。
「夜までもたんかも…」と呟くと同時に目の前が暗くなって、眠りに入った。あー、目覚まし掛けたっけ…??でも、まぁ、大丈夫かぁぁ…等ともう夢なんか現実なんか分からんようになっていた。

なんとなく、足音が聞こえて来たけど全然目が開かない。誰か通り過ぎるんやろう、ぐらいで、そんな色んなスタッフさんが行き交うような所で寝てる私が悪いんやから…と思いながらいると
ほわっと暖かくなった気がした。
背中に微かな温もりと、なんだか頭の方に人影を感じつつも、目を開けて確認する気力もなく、掛けたかどうか定かではない目覚ましが鳴るまで瞼は重たくて開かない。

ピピピッピピピッ…!

夢現の中から鳴り響く高音の機械音。
薄ら目を開けると、視界が明るくなり一瞬、自分がどこにいるのか分からなくなった。
「……起きんなんかぁ…」と呟きながら側で鳴り止まぬスマホに手を掛けて目覚ましを切った。
ゆっくりと、体を起こすと
バサッと、何かが床に落ちる音がした。
「ん?なんこれ???」
床に落ちた物を拾うと、誰かの物であろうグレーのジャケットだった。そして、頭を向けていた所を見るとミルクティーが1本置いてあった。
「誰やろう…??」
と言いながらジャケットを畳もうとすると、なんだかいい匂いがした。あれ?この匂いどっかで嗅いだ事あるような……?

そのジャケットを持ちながら楽屋袖の方まで歩いていると、相席スタートのケイさんがやってきた。
「あきちゃーん!お疲れ様~!ねね、今晩空いてる?ちょっと呑みに行こうよ」
と、いつも私を誘ってくれる私の良きお姉様。
「今晩かぁ…」と、返事を濁してるとケイさんが私の手に持っているジャケットに気づいた。

「それ、どうしたの?誰かの衣装?」

「あー、私さっき向こうの長椅子の所で寝てたんですよ。起きたらこれが掛かってて…」と、説明していると、側の楽屋から舞台衣装に着替えた安田くんと石井くんが出てきた。
「あきちゃん、今日も宜しく~」と安田くん。
2人が通り過ぎていくと、なんだか覚えのある香りがした。
「あれ?安田くんって香水とか付けてたっけ?」と私が言うと
「俺?俺は付けてないなぁ。石井くんとちがう?」
そうなん?と、隣にいた石井くんの側に行くと、確かにあのさっきの香りがした。

「あっっ!この匂い!石井くんやったんやぁ!」

と、つい大きい声を出してしまった。
手に持っていた、グレーのジャケットを石井くんは黙って私の手から持ち去り、今出てきたばかりの楽屋に戻って行った。
それを見ていた、ケイさんが私の横まで来て耳元に呟いた

「なんか石井さん、顔赤くなってたけど、何かあったの?」
「ん?そう、ですか?」
と、ケイさんの言った意味が一瞬分からずいたが、それから仕事も終わり、帰宅してもあの香りは自分の着ている服に残っていて、ケイさんの
「石井さん、顔赤くなってたけど…」という言葉を思い出すと、私まで顔が熱くなってくるのは感じていた。

この服、洗濯したくないかも…。
(あれ??!キモっ…泣)



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