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第13話 甘いコーヒー時間

朝、ベッドからでるのが嫌で仕方ない季節。起きなきゃならんのは分かってるんやけど寒くて嫌やなぁ。スマホの時計を見ながらエアコンで部屋が暖まるのを布団を被りながら待ってるとLINEが入った。

「おっと、石井くんから」
開いてみると

『 今日、仕事何時に終わる?時間できたから、少し会おう』

絵文字もなんにもない文章やけど、一気に嬉しくなって被っていた布団を跳ね除け飛び起きた。

もちろん返事は
『 やった〜!嬉しい☺時間分かったらまた連絡します✨⸜❤︎⸝‍』
寒いなんてどっかいってもうたわ。仕事行くのも苦じゃなくなったよぉ!

仕事中、今朝の石井くんからのLINEが嬉しすぎて顔がついニヤケてしまう。
「なに?あきちゃん、どうしたの?いい事あったの?」と他の芸人さんにも引かれる程にテンションが高かった。こんな忙しい時期に時間できたからって少しでも会えるなんて、そりゃスキップかてしたくなるよねぇ!
早く夜になぁれ!

勤務終了して、すぐに石井くんに電話すると駅にいるから来て、ということやった。
はやる気持ちを抑えつつ、足早に駅に向かった。

「あっ、いたいた。」
背高いからすぐに分かったよ。
見つけて抱きつきたい気持ちを抑えながら石井くんに駆け寄って行った。
「お疲れ様。寒いから行こか」
「うん!」
人混みではぐれないように石井くんにくっつくようにして歩いてると、フワッと右手が暖かくなった。
コートの袖で見えづらいけど、石井くんの大きくて長い指の左手が私の右手を握ってくれていた。
私は喜びも表現するかのように、その手を少し強く握り返した。
電車に乗っていくつかの駅を通り過ぎ、ある駅に降り立った。まだ手は繋いまま、私はひたすら着いていくだけやった。

「あれ?ここって…」

2人で歩き着いた場所は、以前に私が石井くんへの誕プレを買うために出掛けた際に偶然入ったカフェやった。

「いらっしゃい。あー、あの時の子だね」
「こんばんわ」
私たちが来るのを分かっていたかの様な口ぶりの店長さん。
「店長、突然にでごめんなさい」
「いいよいいよ。僕は2階にいるから。ごゆっくりね」

と、店長は言い残し扉を1つ出て2階へと上がって行った。石井くんが言うにはここは1階がカフェで2階が店長の自宅らしい。
そういった話をしながら、石井くんは店長が立っていたカウンターの中に入り、お湯を沸かし始めた。

「なにするの?」
「俺のブレンドコーヒー淹れたる」

お豆を挽いて、フィルターに入れお湯を注ぐとコーヒーのいい香りがしてきた。なんだか甘い感じ。

「いい香り。うん!美味しいー!!」
「そりゃ、良かった」

満足そうな顔した石井くんは、自分の分をカップに注いで、カウンターから出てきて私の横に座った。

「あと、これ。少し早いけどクリスマスプレゼント」
「えっ!ホンマに??!」

ドキドキしながら、紙袋を開けてみると小さな箱が入っていた。
中にはカジュアルぽく、シンプルな可愛い腕時計。

「わぁ…!いいの?こんな可愛いの!」
「こんなんやったら、仕事中でも付けれるやろ」
「うん!ありがとう!!!」
嬉しくって早速付けてみる。
そんな私の姿を石井くんはずっとニコニコしながら見つめていた。

「あかんあかん、私も貰ってばかりでは」
と言いながら、リュックから私も用意していた石井くんへのクリスマスプレゼントを渡した。

「じゃん!実は私も用意してました。石井くん程のではないけど…。喜んでくれたらええな」
「おお。ありがとうな」

ラッピングの中身は陶器でできたコーヒーフィルター。
何も言わなくても、表情にも余り出ないけど喜んでくれてるのは分かるよ。

こんな暖かい2人の空間が何時までも続けばいいのになぁ。

気がつけば、外では雪が降っていた。

でも、繋いだ手は暖かいよ。






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