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松屋フーズHD決算分析【23年3月期第3四半期】

本日は2月3日に発表された松屋フーズの23年3月期第3四半期の決算短信を見ていきましょう。
飲食店を運営していくにあたって、財務諸表を読めるか読めないかは根拠を持った運営を出来るかどうかに関わってきます。なんとなく売上がこれぐらいの時は仕入れがいくらでシフトがどのぐらいかと感覚値で決めてしまってはいませんか?
飲食店は仕組化ビジネスです。再現性のない運営は、戦略も立てられませんし、安定することもありません。自分のお店の財務諸表を読めることが、再現性のある運営の第一歩です。
また、上場企業の決算書はその業界のトレンドや最新情報がたくさん詰まっています。一緒に分析して、知識豊富で数字に強い経営が出来るようになりましょう。

2023年3月期 第3四半期決算短信 分析

【経営数値ピックアップ】

こちらに掲載されている決算短信月次報告から注目すべきポイントをピックアップします。

2022年4月1日~2022年12月31日の連結経営成績(累計)

〇売上高 78,940百万円(前年同期比12.2%)
〇営業利益 1,457百万円(前年同期比 3,958百万円)
〇経常利益 3,737百万円(前年同期比△27.5%)
〇純利益 1,623百万円(前年同期比△37.4%)
〇総資産 78,725百万円(22年3月期 76,955百万円)
〇純資産 41,718百万円(22年3月期 40,591百万円)
〇自己資本比率 53.0%(22年3月期 52.7%)

<その他>
〇既存店売上高 前年同期比109.4%
〇原価率 33.5% (前年同期34.8%)
〇人件費 32.2% (前年同期33.6%)

<新規出店 24店舗>
〇牛めし業態 22店舗
〇その他業態 2店舗

<撤退店舗 21店舗>
〇牛めし業態 14店舗
〇とんかつ業態 3店舗
〇その他業態 4店舗

<店舗数1210店舗 うち海外9店舗>
〇牛めし業態 992店舗
〇とんかつ業態 181店舗
〇寿司業態 9店舗


【定性情報ピックアップ】

〇プラスの要因
  ・まん延防止等重点措置の解除
  ・外国人観光客の受け入れの再開
〇マイナスの要因
  ・ウクライナ情勢、円安による国内消費への悪影響
〇その他
  ・インバウンド需要の回復期待感

【分析・解説】

<売上の上昇>

2度の値上げによる継続的な客単価の上昇客足の回復が考えられます。
  ・2022年5月と10月に2度の値上げを行なったことによる客単価の上昇
    →23年1月までで客単価前年同期比104.1% 
  ・値上げによる客数の減少はほとんど影響がなかっただけでなく、客数が回復している
    →23年1月までで客数前年同期比105.5%
22年3月期も客単価は102.9%と上昇傾向にはあったが、客数が95.9%と伸び悩み売上は前年割れしてしまっていた。今回はコロナ禍前の2020年3月期の売上に届く勢い

<営業利益3年ぶり黒字>

売上高上昇により、F/L(68.4%→65.7%)が改善し2020年3月期以来の営業利益の黒字化を達成。しかし、売上高水準がコロナ禍前まで回復しているにもかかわらず営業利益率は1.8%と低い。コロナ禍前までは営業利益率は4%程度

<自己資本比率の回復>

自己資本比率が多少の回復を見せた。22年3月期は52.7%であったのが23年3月期第3四半期時点で53.0%となっている。しかし、コロナ禍前の2019年3月は62.7%であったため、そこと比較すると回復には時間がかかりそうだ。


営業利益黒字化だが、一安心とはいかない

ここまで見てきて、売上が向上し営業利益が黒字化になってきているがまだまだ安心できる数値とは言えないでしょう。現在、飲食業界を取り巻く環境は「物価高」「円安」「エネルギーコストの上昇」「人手不足」などマイナスの要因が多く存在する。決算短信では販促活動やテイクアウトの強化により売上の回復を目指すとされていたが、ここまでの3年間でそれはやりつくしたのではないだろうか。新たな売上強化の対策とコスト構造改革の具体案を出すことが不可欠である。


次回の決算分析は株式会社吉野家ホールディングス

決算の分析は競合数社を連続して行うことが理解を深めるうえで一番いいと思います。そのため、次回は「うまい、やすい、はやい」の吉野家について分析していきたいと思います。

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