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ひきこもりの経緯②

前回の続きになります。

兄は家出をして、遠い街の和食店で住み込みで働くようになりました。
そこのお店のオーナーさんから、息子さんをお預かりしますと電話がありました。

しかし、何年かしてオーナーさんと喧嘩してしまったらしく、そこを飛び出し、近くの寿司店でまた住み込みで働き始めました。
そこで、寿司職人としてのノウハウを教えて頂いたようです。

しかし、またそこでもオーナーと喧嘩をし、飛び出してしまい、その後は住み込みで新聞配達等をしていたようですが、暫くして、「家に帰りたい」と兄が家に電話をし、父親もそれを受け入れました。
家を出て5年くらい経った頃でした。

家に帰ってからは、近くの寿司店やホテルなどで料理人として働いていました。
学歴コンプレックスを持っていた兄ですが、次第に料理人として生きて行こうと思い始めていました。

そんな折、また、兄をどん底に突き落とす出来事があったのです。
私の伯父(父親の兄)が病気で入院をし、退院をした時に、快気祝いをしたいので、そこで料理を作ってくれないかと、叔父(父親の弟)から兄に連絡がありました。
すると、親戚の集まりには行きたがらなかった兄ですが、珍しくそれを引き受けたのです。
その頃、父親とは上手く行っていませんでしたが、その叔父には心を許していたのです。

そして、快気祝い当日、料理を作る為に伯父の家へ行きました。
私も小さかった息子を連れて一緒に行き、料理の手伝いをしました。
私の両親も別の車で来ていました。

そして、もうそろそろ料理が出来上がるという頃に、父親が、
「仕事があるから、これで帰らせてもらう」と言い出し、帰ろうとしたのです。
その時、伯母が必死で
「え?!そんな事言わずに、ちょっとだけでも食べて帰ったら?せっかく作ってくれたのに」
と止めてくれたのですが、
「いい、いい、うちらはいいから」
と、一口も食べることなく、両親は帰ってしまったのです。
その時、兄の顔色がサーッと変わったのを見ました。

家に帰ってから、
「お兄ちゃんが折角作ったのに、どうして食べてやらんかったん?」
と母親に言ったところ、
「お父さんは好き嫌いが多いから食べる物ないし…」
という返答でした。

いやいや、そういうことじゃないだろう!と思いました。
兄の作った料理を食べるということは、やっと料理人として生きていこうと思い始めた兄の事を、認めてやるということだったのではないでしょうか。
兄も父親に認めてもらいたかったに違いありません。
そうすれば、二人の関係も、兄の人生も変わっていたかもしれないと思うのです。

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