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20240810 南海トラフ地震に対しての危機感とともに、より理性的な判断が出来るといいな

自分は、学生時代は地質学を専攻していた。
1995年が大学1回生。
当時、兵庫県に住んでいた。
兵庫県南部地震が、これまでの一生の中で一番大きな地震体験でもある。
2018年にも大阪北部地震で震度6弱を経験したが、兵庫県南部地震の方がはるかに怖かった。
やはり、地震の規模が兵庫県南部地震の方が大きかったこともあり、揺れている時間が長かったことや、本震が起こって以降の余震の数がとても多かったことで、恐怖感が違うものという感じがある。
2018年の地震の時は、揺れ始めて「ドン!!」と来たときに、初期微動継続時間が短かったので、震源の近さを理解したし、古い建物の中にいたので、このまま押しつぶされて死ぬんだろうなぁという達観の方が強かったから、恐怖心が小さかったのかもしれない。

まあ、とにかく1995年の兵庫県南部地震をきっかけに、地質学を学ぶ進路を選択したのは間違いない。
地質学を学ぶと、兵庫県南部地震などは地球上で起きる活動のなかでも、それほど大規模なものではないことが理解できる。
何せ、地球が誕生してから46億年もの時間の中で何が起こってきたかということを知れば、「これくらいのことが起こって当たり前だよなぁ」という感覚になる。

不整合の露頭
下の地層が出来た後、この地層が傾き、そしてその地層を削るような土砂が堆積している。

例えば、この写真を見て見ると、この土地で起こった色々な情報が読み取れる。

上の写真の場所は、京都の南、木津川流域の竹やぶにある地面を削ったところである。
下の写真は、その全体像。

まず、こういう地層が見えるところのことを「露頭」という。
この露頭では、写真の右下方向へ地層が傾いているのがわかる。
地層はどうやって出来るかということは、小学校5年生の理科で学習するけれど、簡単に言えば水の働きによって運ばれてきた土砂が積もって(堆積するという)でき上がる。
堆積するには、必ず水によって土砂が運ばれる必要があるから、水中の環境で起こる。
ということは、まずこれだけの土砂が堆積している場所が元々は、環境が水中(ちなみにここの地層を分析したら海の堆積物だったことがわかっている)だったこと、海底であり、それが現在の標高まで隆起してきたのがわかる。
ちなみに、この場所の標高は50m。
最低でも50m以上の隆起が起こったというのがわかるのだ。

しかも、この土砂が堆積したのはいつなのか?
これも、調べることが出来る。
調べてみると100万年以内。
単純に100万年前に堆積したとして、100万年かけて標高50mの所まで持ち上がったとしたら、1年平均にするとどれくらいの隆起量になるかも計算できる。
海抜0mの所にこれだけの量の土砂が堆積するということはないので、50m+αの深さのところから持ち上がっているというのも、考えればわかる。

そして、基本的に土地が隆起するのに何もなく持ち上がるということはない。
隆起する際に活動として起こることは、当然地震。
1回の地震でどれだけの高さだけ隆起したかということを考えれば、その地震が何年ごとに、どれくらいの規模で発生するかということも見えてくる。
とうぜん、近辺の断層からそうした情報を取得することになる。

こうやって見えたことを積み重ねて考えていけば、今自分が経っている足下の地面がずっと動き続けているということが理解できる。
というか、自分はその感覚を持つようになった。

日本列島は、地球上の陸地のものすごく小さな割合でしかないが、地球上で起こる2割の地震の震源が日本周辺にある。
つまり、日本にいる限り、地震はいつどこで起こってもおかしくない。
そして、それによって地面や地形がずっと同じであるということはないのだ。
人間の寿命が地球表面上で起こる活動周期に比べて圧倒的に短いから、変化しないように感じているかもしれないが、変化し続けている中に存在していることは自覚する必要がある。

いつどこで地震が起こってもおかしくない。
そして、海沿いならば、いつ津波が来てもおかしくない。
そう考えておくことが、とても大切。

特別に地震に備えるのではなく、地震に備えることが普通の状態であることの方が大切。
そう思うのだ。
江戸時代が終わり、日本に産業革命が入ってきて明治以降、人はそれまで危険で住んでいなかったところを生活圏として利用することが増えた。
元々、人が住んでいないということは、何かしら危険があった場所のはずなのだ。
そうしたところは、地震などが来たら命の危険にさらされる確率は高くなる。
そんなところに近づかない、住むところとして選ばない。
それだけでも、震災が起こった場合に生き残る可能性は高くなる。

優先順位の問題なのだろうけど。
経済中心の考え方からすると、受け入れにくいものなんだろうなぁ。
地質学を学ぶと、想定外などあり得ない。
そんなことがわかる。
どうやって身を守るか。
それは常々考えておく必要があることだと思う。


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