見出し画像

電子タバコが生み出す新たな環境問題

従来の紙巻タバコを代替する商品として、昨今、Z世代を中心に使い捨てベイプ(電子タバコ)の人気が高まっています。本稿では、その電子タバコが生み出す新たな環境問題について解説したいと思います。

電子タバコが生み出す環境問題とは?

電子タバコが生み出す環境問題とは、利用後に生み出される大量の電子廃棄物のことです。電子タバコには、電気自動車等に使われる希少資源リチウムが含まれています。アメリカやEUでは「重要な原材料」に位置付けられており、適切に再利用すれば、非常に価値の高い資源となります。しかし、多くの場合、電子タバコは再利用されることなく、廃棄されています。

電子タバコを製造する会社の中には、環境保護に取り組んでいることを謳う企業もあります。しかし、そのような企業を含め、業界全体として、現在、電子タバコの再利用や埋め立て地への廃棄について対策を講じている企業はほとんどありません。

どれくらいの希少資源が電子タバコに使われているか?

フィナンシャルタイムス社の推計によると、昨年は世界で50億米ドルもの使い捨てベイプが販売され、それらには90トンを超えるリチウムが使用されているといいます。そのリチウムの量は、車載用電池11,000台に必要な量に相当します。また、それらの使い捨てベイプには1,160トンの銅も含まれており、その量は家庭用電気自動車充電設備160万個分に相当します。

電子タバコが生み出す社会問題とは?

近年、電子タバコはそのカラフルな見た目やお菓子のような味・香りにより、若者の間で非常に高い人気を集めています。その中には未成年者などの法律上使用を許可されていない年齢の人も多く含まれています。

近年、紙巻タバコの利用者は減少していますが、電子タバコの利用者は増加しています。紙巻タバコの喫煙者を減らすことには成功していますが、利用者全体のニコチンの吸引量はあまり変わっていないのではないかと指摘する調査もあります。

この問題に政府はどのように対応しているのか?

欧米各国の政府は、電子タバコが生み出すこれら環境及び社会問題を問題視しており、規制導入の準備を進めています。例えば、スコットランドとアイルランドでは電子タバコの完全禁止を検討しています。また、EUは一部商品の販売禁止や課税、2027年までに全ての電子タバコに交換可能または充電式バッテリーの搭載を義務付けることなどを検討しています。アメリカでは複数の州が電子タバコの販売禁止を決定しています。

電子タバコメーカーは対策を講じる義務はないのか?

EUとイギリスでは、電子機器製造会社は法律でリサイクル関連の取り組みに資金を支出する義務があります。しかし、イギリスでは、その義務を果たしているのは製造及び輸入会社の150社のうち、わずか16社のみとのことです。多くの電子タバコ製造会社は売上拡大により大きな利益を得ているのにも関わらず、自社が与える環境への悪影響について何の対策も講じていないことが明らかとなっています。

どうしてリサイクルが進まないのか?

電子タバコのリサイクルが進まない理由は三つあります。

  1. 一つ目の理由は、上記のとおり、メーカーが法律の義務を果たしておらず、電子タバコのリサイクルについてほぼ何も対策を講じていないことが挙げられます。

  2. 二つ目の理由は、電子タバコを販売する小売店の問題です。例えば、イギリスでは電子タバコを100,000ポンド以上販売している小売業者は、電子タバコのリサイクル・サービスを消費者に提供する義務があります。しかし、多くの小売店でそのような義務があることを従業員が把握していることは稀です。

  3. 三つ目の理由は、電子タバコのリサイクルが労働集約型のビジネスだからではないかと言われています。電子タバコは可燃性電池を搭載しているために手作業で解体する必要があります。また、機器内に含まれるニコチン液の取り扱いには健康面と安全面の注意が必要となります。

消費者にできることは何か?

この問題の解決に向けて消費者ができることは、電子タバコを地域のリサイクル・センターに持ち込むか、小売店に返却することです。

電子タバコが普及した背景とは?

イギリスでは紙巻タバコの喫煙よりも電子タバコの方が健康上の被害が少ないという理由で、人々の禁煙を支援することを目的として、政府がその利用を推進してきた背景があります。

参考文献


よろしければサポートいただけると嬉しいです。記事作成の励みになります。