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ブライダル市場の接客力がいろいろ勉強になり過ぎる件(結婚指輪編)

またちょっとご無沙汰していまいました。ご覧くださりありがとうございます。あれよあれよと結婚の準備を進めることになり、テンパりやすい性分なのでテンパって過ごしておりますが、ようやく最初の関門をいくつか乗り切れた感じです。そのあたりの体験が面白いから、覚えているうちに書いておこうかと。

たぶん、ちゃんと準備して結婚に臨んでいる方々にとっては「今さら何を驚いているの??」というレベルの話なんだと思います。すみません、すみません。今日は、結婚指輪の話です。(ちなみに、婚約指輪は「なくていいよね~」って2人で話してスルーしました)。

「結婚指輪」という特殊な市場

「結婚指輪」を買いに来る男女は、ライバル店のどこかでほぼ100%指輪を買う。しかも、クロージングまでの期間もかなり短い。価格は多様化しているようだが、専門店を回って指輪を選ぶカップルの殆どは、控えめに見ても20万円以上の買い物をするはずだ。このため、日常のお買い物とはまったく違う独自の市場や接客が繰り広げられていて、日頃おっさんに囲まれて働いている身には新鮮この上もない。
端的にまとめておくと、接客品質の高さと競合店研究がすごい。

来店前

結婚指輪でしかお世話にならない専門店が沢山あることに驚く

私はこれまで、結婚指輪も、フツウのアクセサリーと同じようにデパートに行ってうろうろ眺めて買うのだと思っていた。

でも実際は、多くの人は、結婚指輪の専門店で指輪を買う。「結婚指輪」の人気のお店ランキングを見ると、ハリーウィンストンとかティファニーとかもあるけれど、上位は国内の結婚指輪専門店が名を連ねている。そんな目で銀座を歩いてみると、松屋の通りにはとにかく結婚指輪のお店がすごい勢いで密集していてビックリする。

国内専門店の魅力はアフターサービスの充実で、特定のブランドにこだわっていない人の多くは、専門店で買っているのであろう。私も、そもそも指輪があまり得意ではないため、着け心地重視で国内の専門店一択で回った。

予約の所要時間は2時間。予約は必須。

さらにビックリしたんだけど、結婚指輪って「ふらっと来店して見られる」わけではない。お店によって例外はあるだろうが、基本的に「勝手に眺めて回る」スタイルが認められていなくて、接客の所要時間は2時間とされている。なので、平日はさておき、土日祝日は予約必須なのである。

ギフトカード合戦が繰り広げられる。

で、予約必須の世界で何が起きているかというと「ギフトカード合戦」だ。ギフトカードは「予約して来店すること」に対して付与されるお店が多い。さらに、ギフトカードは「お店」と「紹介サイト」の両方から出ていたりする。いくつもあるウェディング情報サイトやアプリが、それぞれに「ココから予約来店すると、さらにAmazonギフトカード○千円」みたいな上乗せ特典を乗っけている。

ゆえに、たとえば平日ふらりと来店すれば、予約しなくても接客を受けられるのだろうが、後で「ギフトカード」の存在を知ったらちょっと残念な気分になるのではなかろうか。自分の場合は、3店舗を予約来店しただけで、トータル2万1千円分のギフトカードをいただいた。

同じことは「挙式バトル」ではさらに苛烈で、一カ所を決め打ちで会場を決めた私は、後から「もっとウェディングフェア回ってギフト券5万円ぐらいもらえば良かったな」という気持ちになった。(とはいえ、アラフィフにとっては時間と勢いとタイミングの方が大事!)

個人情報の感覚はなんかもうマヒする。

ブライダル市場であれやこれやする時には、どこでも個人情報を書くことになる。新郎新婦の名前とか連絡先とか挙式予定日とか。個人情報提供を拒むことって果たしてできるのだろうか?なんだかもう必須っぽいし、この程度の個人情報はもう秘匿するものでもない感じだから諦めてはいる。なんかもう日常といろいろ感覚が違う。

お店巡り:華麗なる接客力バトル

ブライダル関係のお店を回って驚くのは、接客品質の高いこと高いこと。きれい上品おしゃれかわいいなんか良いニオイする気がする!日頃おっさんに囲まれて働いている身には(2回目)衝撃の異世界なのである。

1店目:やわらかい接客とIメッセージのMさん

まず最初に行ったA店。店員さんは客室乗務員のように優美なスカーフを巻いている。笑顔が素敵なMさんが、極上のやわらかい接客をしてくれる。カウンセリングシートを書くと、最初にお店のこだわりを紹介される。そして、私たちの指の形を見ながら、お勧めの指輪を提案してくれる。

Mさんのキラートークは「職人さんたちが…」というお話の混ぜ込み。いかにお店の職人さんたちが素晴らしいかに、Mさん自身が心から惚れ込んでいる様子のIメッセージでお話される。売り込みが強くなり過ぎないながらも、そのお店の好印象が残る上級テクだと思う。「ルーペで見てみていただけますか。ダイヤの爪がこんなに細かいんです!」など、流れるようにPRが入るのに嫌みがない。

しかも、3月の期間限定キャンペーンで、先着○○件が10%OFF、ということを知らされる。このお店を退店する時には「他のお店も一応は回るけど、このお店で良いよね」ぐらいの気分になっていた。

2店目:すごい洗練されたお店(接客の印象薄)

さて、なんなら翌日にはA店で決めちゃおうか、という気分になっていたので、気になる別のお店も見ておきたい、ということで飛び込みで行ってみたB店。こちらは2時間後なら枠があるということで、所用を済ませて再来店した。B店はとても洗練された雰囲気のお店で、待ち時間にくれたカタログと紙袋のオシャレ様感がスゴかった。

一方、接客は他の3店と違って、指に合わせた提案とかもなく、気になる指輪をひととおり見てもらって、特に印象なく終了した。このお店の接客パワーの薄さから、各店の接客品質の大事さを改めて実感することができた。

3店目:めちゃくちゃかわいい店員さんのキラートーク

翌日、3店目のC店に行く。来店時は、内心「もうA店で良いけどな」ぐらいのテンションだったのだが、ここからC店の怒涛の反撃が始まるのである。C店はとてもキレイな建物で、店員さんのユニフォームもとても素敵だ。そして、とにかく、店員さんがみんな素敵な笑顔でかわいい!かわいい女子を見るとなんかもう幸せな気持ちになる。

接客しくれたNさんは、なんだかもう可憐で若々しくてお話は丁寧で、でもかなりしっかりとお店のアピールもされる方で、なんという人材に恵まれた業界であろうか、とつくづく感心してしまった。

C店の接客は、指の形の診断から始まる。指の何カ所かの寸法とか角度を測って、「ご新婦様の指の形は○○なので…」と判断基準を示した上で、お勧めの指輪を紹介していってくれる。この店は照明がとても効果的なので、ダイヤがものすごくキレイに見える。

少し会話をしていくと「よろしければ、前のお店で気に入った指輪がどんな感じだったか教えていただけますか?」と聞かれる。そして、その場でipadで競合店の該当商品を探し出して、こちらですか?と確認される。見積もあるので商品名で確定できる。

そして「このデザインはここ2年くらいのトレンドでして」と、類似商品を見せられる。こうしてだんだん、A店に傾いていた気持ちがリセットされていく。A店がPRしていた、着け心地・アフターサービス・素材の品質などを、C店も同じかそれ以上という盤石のトークで説明をしてくれる。

そして、A店が提案していた指輪に対して、C店では「ご新婦様の指の形はこうだから」と、まったく切り口が違う指輪を提案される。「ご新婦様の水かきの形が○○なので、こちらの方が××で」と根拠を示されるので説得力がある。

最後に、決め球みたいな感じで「わたくし、ご新婦様の指の形にきっと合うと思うので、ぜひご提案したいデザインが」ということで、ちょうど良い感じの指輪を提案されて、もうC店で決まりだね、という気分になった。

4店目①:王者の貫禄、総合力でいつのまにかクロージング

C店の接客を後にし、ひとやすみしたあと、予約していたD店に行く。このお店はランキング上位にいつもいるお店だ。店構えは少し古い感じで、C店のキラキラ感よりは見劣りする。ユニフォームも特別に素敵な印象は無く、やや古い感じがする。ショーケースの指輪にも、なんだかあまり惹かれない。

「ひととおり話を聞けば良いかな」ぐらいの気分で接客が始まる。対応するOさんは、これまでの店員さんよりは少し落ち着いた雰囲気で、それまでの店員さんのような「うわ、若い!かわいい!キラキラ!」という雰囲気ではなく、テンションの高さもなかった。

Oさんに尋ねられて、これまでの他店で良いと思った指輪の写真をいくつか見せて、指の形に合うものを提案してくださいと伝える。Oさんは「お似合いになりそうなものをどんどんお出ししたいので、見比べていただいて、無いなと思ったらこちらに置いてください」といって、どんどん指輪を見せてくれる。

4店目②:Oさんの大人の接客技術

出してくれる指輪は、A店やC店のようなキラキラ感は無い感じがするが、意外と指に着けると馴染んでいる感じがする。着け心地はA店と同じくらい良いなと思った。Oさんの接客のテンションは高くはないのだが、要所要所で、これまでのライバル店の売りのトークを絶妙に無力化していくのだ。これが意図的に組み上げられているならこれもまたすごいスキルだと思う。

(C店で最後に提案された指輪について)
Oさん:「C店のXXXXXですね。こちらの指輪はC店の一番人気で、C店から来られたお客様は皆さん、比べていらっしゃいます」
→私:C店が私の指の形に合わせて提案してくれたっていうわけでもないんだな、となんとなくテンションが落ち着いてくる。

私:照明がお店で違うから、指輪とかダイヤの違いが分からなくなっちゃって。C店に行った時はダイヤがものすごくキレイに見えたんですけど。
Oさん:確かにC店さんはLEDライトをたくさん使っていらっしゃいて、当店はそうではないので、ちょっとわかりにくいですよね。ただ、指輪は普段、自然光の下で見ることが多いですから、自然光で見た時に(以下略)

他にも、C店が「このツヤ消しの技術は絶対に他にはないものでございます」と断言していたのと同じような技術をD店でも見せてくれたり、ダイヤの品質やアフターサービスのこだわりをまた遜色ないレベルで説明してくれたり。

悩んだ末に、初来店限定特典割引にもプッシュされて、結局、D店で私たちの結婚指輪を購入することになったのであった。

買物後:アップダウンを繰り返して、結局お幸せである

指輪選びを終えて帰宅したら、なぞの情緒不安定に襲われた。
ときめいたりワクワクしたのは、A店やC店の方だった。けれども、自分の年齢とか、ビジネスシーンでもずっと身に着けることとか、今後さらに歳を取って行くこととか、総合力で考えると、やっぱりD店で良かったような気はする。でもでも、もっとゆっくり選んでも良かったのかな、とか。そもそも、買った指輪の裏側の誕生石を入れられるのとか、やっぱりお願いしたら良かったかな、とか。やっぱり2人でデザイン揃えれば良かっただろうか?とか、後からあとからいろいろなタラレバが押し寄せてくる。

そもそも、彼はちゃんと選んでいたのだろうか?彼もC店を出た時には「これが良いね」って言ってたので、妥協したのではなかろうか。なんだかもう、めんどうくさいからはやく決めれって思ってたんじゃなかろうか、などと、ぐるぐる。

でも翌日に彼に会ったら、彼が、どんな風に指輪を選んで行ったか、を話してくれて、指の形が違い過ぎるからデザインは別々にしたけれど、共通点も意識してチェックしていたり、ビックリするぐらいちゃんと判断して選んでD店に決めていたことが分かったら、なんだかすごくホッとして、私の指輪選びブルーは雲散霧消したのだった。

指輪を買い終えた時にはなんだかもうくたくたに疲れていたんだけど、あの独特な接客ワールドを堪能できたのが本当に面白かった。
指輪に後悔はないんだけどちょっと思うのは、こういうのって決まり出すとどんどん進むから、結婚が決まる前でも、妄想力でいろいろ結婚指輪だとかドレスだのは見ておいた方が良いんだろうな、とか。

そんなこんなで何事も完璧はないのだけれど、私にとって彼の存在がこの上もなく大事なので、そんな彼と一緒にいられるのだから、全てのプロセスにそんなに神経質にならなくても良いのだろう。
今はただもう、私たちの指輪ができあがってくるのが楽しみだ。



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