後悔してもいい。

後悔。

こんなみじめな気持ちになることは、分かっていたはずなのに。

浮気をした。完全犯罪じゃないけれど、罪を犯してしまった。しかも、3人と。
この1週間での出来事。1人の男に抱きしめられながら寝落ちし、2人の男とキスをした。そのうちの1人とは1度きりの、軽いスキンシップみたいなものだったけど、もう1人とはディープキスをした。何度も何度も。
以下説明のために、軽いキス男をK、抱きしめられて寝落ちした男をA、ディープキスの男をRとしよう。

Kは実は、以前、"淡い月に見とれてしまった"という記事で書いたKと、同一人物。
あのときは好きだったけど、キス1回で満足して冷めてしまった。恋愛ってそんなもん。

Aは、最近私の職場に来たばかりの人。びっくりするくらいすぐ馴染んでみんなに好かれているし、個人的に見た目がドタイプだ。
飲み疲れて大きいこたつで6人で雑魚寝したとき、恋人繋ぎをして、そして抱き合って寝た。抱きしめられた感触がとても心地よくて、いい匂いがした。そのとき、Aは皆にバレないよう、スマホで

「洗面所行こう」

って打った文字を見せてきたけど、その誘いは「ねむいー…」って言って断った。なぜって?Aは見た目がドタイプすぎて、キスとかしたら恥ずかしくなるから。てか私、そのとき左どなりにいたRとも恋人繋ぎしてた。
結局、Aとはそれきりで済んだ。私の中ではいい思い出で留まっている。
……ほんとに心地よかったな。

そして、問題のRである。
皆で酒を飲んでもう深夜3時を回った頃、

「めっちゃすきー。もうだめだよ、(彼氏)いるのは分かってるけど、俺はゆなのこと待ってるしもう準備できてるよ。でも、ゆながその気じゃないなら俺のことは捨ててくれていいからね」
「酔ってるから言ってるんじゃなくて本気だよ」

いやいや、酔っ払いにそんなこと言われて信じるかよ!って思ったけど、Rにはそう信じさせてしまう不思議な魅力があって、私はその時、2人で落ちるのも悪くないなって思った。
そのときは、後悔してもいい、覚悟はできているって思っていた。

ここでRについて。
彼は気付けば皆の中心にいて、発言はとても面白いし、皆に愛されている。彼の周りには自然と人が集まってくる。大勢でいる時の彼は私とはほど遠い存在で、そんな姿に、嫉妬交じりの憧れを感じていた。私は自分のことを除け者だと思っているから、Rのその魅力が欲しいと思った。
Rは男だけど私よりも体が小さい。そんな小さな体が脆く思えて、愛おしかった。いつも皆の中心にいて全員に好かれているのに、体は小さいくて脆いっていうギャップにやられた。それから、彼の彫りの深いまぶたが大好きだった。目を閉じている時の彼の顔が愛おしくてたまらなかった。
そんな彼がなぜ私のことが好きなのか、分からなかった。でも、あの酔っ払いの告白を、信じたいと思ってしまった。

久しぶりの脳が溶けるようなキス。カーテンを閉めきったベランダで煙草を吸いながら告白されて、そのまま自然と舌を絡めてキスをした。あの瞬間はまさに幸せの絶頂だった。そのまま死んでもいいと思った。

後悔してもいいって気持ちは、このまま死んでもいいって気持ちとイコールだと思う。でも、結局死なないから今こうして苦しんでいる。そして今は、こんなに苦しいなら死んでしまいたいと思っている。死のループ。

皆が寝静まったあと、私達はずっとキスをしていた。体に触ってこようとしたけど、体の関係を結ぶ気分じゃなかったからその手は避けた。彼は興奮していて、それが嬉しかった。
「近いうちに2人きりになれるところに行こう」
そう誘われた。嫌われたくなくて笑ってごまかしたけど、心の中で即断った。一度体の関係を結ぶと、男は女への魅力がなくなってしまうってことはもう嫌というほど学んでいる。

もう彼とは二度と会わないだろう。その方がいい。ほろ苦い思い出として美しく残る。


キスは浮気なのだろうか。いや、もちろんそうなのだろうけれど、体の関係は無いから死刑は免れる。そう思っている。

このことは全部、心の奥底に大切にしまっておこう。Rのことが好きな気持ちも一緒に。


もう後悔はしていない。

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