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(詩)夕方の坂で手を引く影法師

君のことを覚えている
長い付き合いだからね
君はよく転んで
泣き始めたら
止まらなくて
そして
なんで
泣いていたのかを
忘れて
ただひたすら泣いて
嗚咽しながらも
泣き終わったら
「さぁ次」
と言わんばかりの顔をして
泣いていたことは
忘れたかのように
遊び始める
そんな感覚を
その感覚を
私は
また得たいのだ
大人は
それが
いつからか
できなくなる
たまにこの歳でも
泣いてしまうが
それは
いつもいつも
感覚がはっきりしている
それが嫌
泣きつつも
耳はハッキリ
思考もクリア
それなのに
表情と心ばかりが泣いている
泣くことに
いっぱいいっぱいだった
あの頃と違って
泣く事は
作業になっているようで
泣いたら
「デトックス完了」
とまた問題にとりかかる
あの頃のままで
ありたいと思うけれど
進んだのだから
戻れない
さみしいと感じた
君もさみしいと
勝手に思って
手を引く

あの頃と何が違うのか
あの頃のままで
何も変わっていなければ
成長してないと
みなが言うし
もう私たちだけで
この先を歩みたい



番号:M12-14

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