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ベントマン 貴方を待っています。

その日はあんまり通らない道を歩いていた。
明確にこの景色を知っている訳ではないが、どこか見たことのあるような、懐かしさを漂わせた道だった。
しばらく歩いているとベントマンを見つけた。

「よっ!まってました〜ベントマン!」
のCMでお馴染みの彼である。そこ以外のフレーズは思い出せないので延々と私の脳内に「よっ!まってました〜ベントマン!」がイヤーワームする。騒がしい。
……久しぶりにベントマンを見たなぁ、懐かしいなぁ。子供の頃は良く見たきがするけど、知らない内にほっともっとの方が良く見かけるようになった気がするな。
そんな気持ちを抱きながら歩いていたらふと違和感に襲われた。デジャヴを感じたのだ。
そういえばこの前この道を通った時も全く同じ感想を抱きながら歩いていたな。というよりもここを通る度に毎回同じ事を思っている事実を思い出したのだ。
しかし忘れていた訳ではない。恐らくベントマンを見た時に懐かしい感情が他の感情よりも早く出力してしまっているのだろう。パブロフの犬のように私の中でベントマンを見るとどんな思いよりも先に"懐かしさ"が記憶から掘り起こされるようになっている。それほどまでに私の過去とベントマンの癒着は強いのかも知れない。
それほど高頻度で通っていた訳でも家のすぐ側にあった訳でもない。しかし幼い私に「弁当屋」なる存在がこの世にある事を教えてくれたのはベントマンだった。故に私の中での記憶の優先順位が高いのかもしらない。
この適度な頻度で出会うからこそ、今でも鮮明に懐かしさを感じられるのだろう。普段忘れているだけで、私はどこかでいつでもベントマンに出会う事を求めているのかも知れない。
「よっ!まってました〜ベントマン!」
私は彼の言葉を信じて待っている。また会える時の事を。

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