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静かな夜

真夜中に窓を開けてみる。ひんやりとした空気。華やかな風が肌に伝わる。聞こえてくるのは草木が風になびく音。ゆっくりと雲が流れる。僅かな雲間から光が差し、月がここにいると囁いている。

宇宙から見れば小さな惑星。大地から見れば小さな生き物。そんな小さな器の中に大きく広がるのは、あるようでないような世界。

一輪の花も、昼と夜では印象が違う。晴れの日と雨の日でも表情が違う。春と秋でも装いが違う。上から見るのと下から見るのでも佇まいか違う。けれど、どんな時でも、その一輪の花は、その一輪の花としてそこにある。

静かな夜。蛙も眠っているのだろうか?夜が始まった頃には、周辺を包み込むほどの鳴き声が聴こえていたけれど。僕はここにいる。僕らはここで生きている。目には見えなくても、この世界の中で生きているのだと、必死に訴えているかのように。

それとも、この暗闇の中で、ただ耳をすましているのだろうか?ただ、月を見上げているのだろうか?いまの私のように。大きくて小さな世界の中で。





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