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32歳クィア、ついに二丁目デビューしてみた

社会はこんなにもLGBTQに対して厳しいのに、
この空間だけは、
みんなが堂々と楽しそうに心配なさそうな笑顔で自由に笑い声をあげて話していて、
その光景が泣いちゃうくらい愛おしく
大切な場所だと思った。

デビューの日

きっかけは、大阪から学会のために東京に来ていた10年来の友人に「二丁目デビューしたい」と誘われて。

その友人はXジェンダー(FtX)で、バックグラウンドもジェンダーアイデンティティもフットワークも自分と似ている、いわゆるソウルメイトだ。
君に言われたら行くしかない。
出張帰りのどろどろに疲れた身体で、金曜日の22時過ぎに扉を開けたのだった。

そこからちょうど1ヵ月。同じ店に既に5回訪れたほど今ハマっている。

これまで足を運ばなかった理由

20代前半でTwitterを経由して多くの仲間に出会い、直接あそぶクィアの友達がたくさんいたにもかかわらず、当時彼らが足しげく通うのを横目に、なぜ自分は行こうとしなかったのか。理由は以下である。

  • 友達を新たに作りに行く必要がなかった&25歳まで学生をやっていたので安旨居酒屋で十分だった

  • 当時つるんでいたクィア仲間たちは二丁目に行くとクラブでオールが基本。「その場で出会った子とノリでキスしちゃった」みたいな話を聞いて、純朴な自分()は恐れ慄いた

  • 「女性限定」「男性限定」「ボイは~」「FtMは~」みたいなお店のボーダーの中に自分のアイデンティティを位置づけることができなかった

3つめの理由が一番大きい。
物心ついた時から自分が女性であること自体に違和感を持っていて、
色々自分の言葉で説明できるようになったのは20代以降だけど、
今現在はTPOに応じてトランスジェンダーと言うこともある「ノンバイナリー」という感じ。
(「心の性別」は定義できないけど、身体のかたちが違う(入れる器間違えちゃってる)という感覚はある。)
 

行きづらかったけど居やすかった

そして、その日友人の友人に勧められて行ったのは、女性限定のお店。いわゆる "ビアンバー" である。
性違和持ちにとっては行きづらい場所だが、
自分は見た目も話し方も女性限定のスペースを脅かすような存在ではない(トランスジェンダー用語で言うと「まったくパスしてない」)はずなので、
あくまで自分のお気持ち次第というところ。
20代の頃よりは鈍感さを得ているため気にせず入った。

とはいえ、レズビアンという自認はなく、"女性は異性" という感覚のため、
「この店に来るってことは女性自認かつレズビアンなんでしょ?」と言われるのは困ると思っていた。

でも実際は誰からも「そういう扱い」を受けるわけではなかった。
つまり「女だよね?」「女だからこうだよね?」とわざわざ言われない女子校状態。

普段「女性としてどう?」「彼氏いないの?」「女の子なのに」「意外と女の子なんだね」と当たり前のように浴びせられる一般の社交場よりは、自分にとってはるかに圧倒的に安全な場所だった。

みんなで好きな女性のタイプを発表したりして、
当たり前に受け入れられて、
そういう話を包み隠さずその場にいる不特定多数の人たちとできるのは新鮮だった。

毎日 "女子校の放課後" みたいな感じで、フラットな関係でなんでも安心して話せる場所。

安心感に震えた。
行きづらかったけど、居やすい、居心地の良い場所だった。

<箸休め>フットサルに参加

お店が主催するフットサルに参加してみたら、ものすんごく楽しかった話。
実は小学生の頃からずっとサッカーが好きでやりたくて、本当は地元のサッカーチームなどに入って活躍したかった。
ただ、想像の中で自分は男の子で、男の子としてやりたかったわけで。
事実、女の子として入ったらかなり目立ってしまう時代だった。
「女の子なのにかっこいいね」にしろ、「女の子のくせに」にしろ、自分が女子だということを突きつけられたり、性別について言及されるのがとにかく嫌だった。
そのような扱いを受けるくらいなら、小3の誕生日に祖母に買ってもらったサッカーボールで、マンションの影に一人隠れてリフティングの練習をするだけの方がマシだった。
その後、受験してリベラルな中高一貫女子校に入り、やっと性別関係ない場所に来たと思ったら、サッカー部がない。
大学は共学で、男女混合のチャラついたサークルか、ガチで強い部活しかない。
ということで、やっと与えられた機会。(※フットサル=サッカーと思ってる素人)
大人になってからこのような女子校的な環境でやりたいことができるなんて、とても嬉しかった。夢がひとつ叶った。


異性愛主義でズタボロになった心身の浄化

今まで交際してきた人はほぼみんな、
同じコミュニティの中で友達から入って親しくなった人で、俗に言うノンケ、つまり異性愛者の女性。おまけに自分も異性愛者自認。

でもこの半年~1年間で色々なことがあり、
これまでの恋愛や社会経験を通して傷付いてきたことが膿になって、
異性愛主義社会そのものへの自虐的な感情と、
シスヘテロ男性(男性として生まれた異性愛者の男性のこと)への嫉妬・軽蔑・憎悪が、
自分の中で抱えきれないくらい強大になってしまった。
例えば男女カップルの仲良さそうなイラストなんかを見るだけで傷付いてイラついて涙が出るくらい、
「結婚したい男の条件」なんてツイートが流れてきたときには喧嘩売ってんのかと発狂しそうになるくらい、
どろどろのヘドロのように、憎しみや鬱憤が心にこびりついてしまって、
心身ともに不健康になっていた。
(精神の安定と心身の健やかさが取り柄だったのに。)

その渦中にたまたま、友人に連れられ二丁目デビューしたのだった。

デビューの2週間後、複数人(全員クィア)で普通の居酒屋で飲んだ後、どうしてもまた行きたくなり、同じ店に友人らを連れて押しかけた。
その時かなり酔っていたのと、やはりみんなあたたかくて安心する場所だったので、弱さが出て、ぐずぐずとくだを巻いてしまった。
くだを巻いていた自分が悪いが、「嫌われる前に帰るよ」と友達に言われて半ば押し出されるように退店。
それがなぜかむしょうに悲しくてスイッチが入ってしまい、帰宅するまで一人ひたすら号泣・嗚咽の阿鼻叫喚をやってしまった。
酒をたくさん飲むと苦痛に満ちた憤りや悔しさの感情が放出されて泣いてしまう不安定な状態がここ数ヶ月続いていたが、その最大級のが来たという感じ。。(Obscurusの解放)
でもそれでデトックスされたのか、翌日その真っ黒な塊に向き合い、言語化したり、二丁目での安心空間体験をはじめ、クィアたちと時間を共にすることで、自分が立ち直っていくのを感じた。その日以降、酔っても黒い塊が出なくなった。

異性愛主義社会で自分を傷付けまくってきたけど、もっと視野を広げて、自分らしくいられる安全な関係と環境にちゃんと身をおいて自分を浄化させようと前向きに思えるようになった。

そう思えたのは、たくさん迷惑をかけても、どんな時も寄り添い、話を聞いてくれて、味方でいてくれる、愛する友人たち、
そして安全な居場所を見せてくれた二丁目のおかげだ。※

愛すべき人たちーー今もまさに社会に傷付けられている仲間たちと、スクラム組んで、支え合って生きていく。


※二丁目というか、二丁目にある特定のお店。最初に行ったそのお店の居心地が良くて、他の店には行けていない。みんな口を揃えてこの店がいろいろな意味で一番安心安全居心地が良いというので、本当にこの店を最初に選んでよかった。奇跡。
店員さんの人柄、お客さんとの関係、お客さん同士の関係が、非常に良い。

相手がどこの誰であろうと、目の前にいる人に、親切にすること。与えること。関心をもち、関わりを持つこと。

          去年公開したnoteより

まさにこれをみんながやっている空間。

お店のオーナーさんと店長さん、店子さんや常連さんには、最大の敬意と感謝を。


お店のyoutubeチャンネル貼っておきます。とても健全でとてもおもしろいです。


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