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誰が「物流」を殺すのか - ⑱宅配便は優れたインフラ構築によって成り立っている

さあ、月曜日だ。
月曜日はボクの得意分野の物流について書く日だ。
先週は「販売物流と調達物流」というテーマの記事を書いた。

今日は「宅配便は優れたインフラ構築によって成り立っている」ということを書いていこうと思う。


宅配便の定義

宅配便とは、小型の貨物を1個単位で全国に輸送するサービスのことを指す。貨物運送事業法上では「特別積み合わせ貨物運送」にカテゴライズされており、不特定多数の荷主の商品を1台の車両に積載し、商品の積み卸ろし(仕分け)をする拠点間を、定期的な幹線輸送で行う運送形態のことを指している。

宅配便というサービスは、全国にインフラが張り巡らせられていることで成り立っているのだが、今日はそのインフラについて解説していこう。

営業所と配送用車両

まず、配送の拠点となる営業所が必要であり、そこにラストマイル配送を行うドライバーとトラックが必要だ。このラストマイル配送は、住宅街や商店街、オフィス街などを走り回ることになるので、できるだけ小型の車両である方が望ましい。しかし、小さすぎると一度に積載できる物量が制限されてしまい、目的の地域に何度も往復しなければならなくなる。なので営業所の責任者は、営業所からの距離、配送密度、道路事情などを鑑みて適切な車両による配送の組み合わせを考えなければならない。

配送を行うためには、その「届ける荷物」が必要だ。
運送事業者が行っている輸送サービスとしての「宅配便」は、ラストマイル配送を行うドライバーが荷物の集荷も行い(配達・集荷・営業を兼ねて行う社員のドライバーをセールスドライバーと呼んだりするが、配達だけを専門に行うドライバーも存在する)、その荷物が全国に向けて発送される。つまり、宅配便事業者は日本全国に荷物がインタラクティブに輸送されるためのインフラを構築しているのだ。

中継拠点と幹線輸送

そのために、宅配事業者は国内の主要な場所に、方面別の仕分けを行い、トラックに積み替えをするための中継拠点(トラックターミナル)を構えていて、その中継拠点間および営業所の間を幹線輸送用(および支線輸送用)のトラックが往復している。

例えば、ヤマト運輸には6万人のセールスドライバー(配達だけでなく集荷も行うドライバー)がいるそうだ。そして、営業所は約3,000あるので、一つの営業所に20名程のセールスドライバーが在籍している計算になる。彼らは、複数(不特定多数)の荷主から荷物を集荷するが、仮に平均一人のセールスドライバーが100個の荷物を集荷するとするならば、その日に2,000個の荷物がその営業所に集められることになる。

営業所は一日の業務終了時に、その2,000個の荷物を支線輸送用のトラックに積み込み、そのまま中継拠点に送り込む。仮にその中継拠点の周辺に50軒の営業所があるならば、その中継拠点に10万個の荷物が集約されることになるが、中継拠点はその10万個の荷物を数時間の内に、方面別(関東・関西・九州・東北など…)に仕分けをし、幹線輸送用のトラックに積み込むところまでを行う。これは概ね深夜に行われている。

物流網は人体の血流に似ている

トラックは、予め設定された時間で切り離され、それぞれが目的地である中継拠点(直接営業所に向かう場合もある)に向かい、到着次第積んでいた荷物を降ろす。そして(着側になる)中継拠点で50軒の営業所向けに再仕分けを行い、支線輸送用のトラックに積み替えられて、それぞれの営業所に送り込まれる。これが行われるのは概ね早朝だ。その後、営業所に出勤したドライバーは、到着した荷物を自分が配送しやすいように車両に積み込んで配送に出発する。

そうやって(ヤマト運輸を例に取ると)毎日平均600万個の荷物が日本全国を巡っていて、集荷した翌日(距離によっては翌々日)に届けることが可能となっている。それが「物流網(宅配網)が人体の血流に似ている(動脈・静脈=幹線輸送、ラストマイル配送=毛細血管)」と言われる所以だ。そして、それによって現代の日本人は世界的にも優れた輸送サービスを享受できているのだ。

(続きはまた来週)

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