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ドラッカーのマネジメントについて学ぼう -⑥企業が有しておくべき2つの機能

さあ、金曜日だ。
金曜日は、ドラッカーの「マネジメント」について学ぶ日だ。

この本は非常に緻密に書かれており、記事としてはドラッカーが書いた内容を順になぞっていくようなものになってしまうかもしれないと思っているが、可能な限り現代的な解釈をして、わかりやすく解説を加えていきたいと思っている。

昨日オフラインでリクエストをいただいた。
それは「②事業とは何か」の回でさらっと触れるに留まった「企業の基本的な機能(マーケティングとイノベーション)」のところを掘り下げて欲しいというものだ。

ということで、今日は「企業が有しておくべき2つの機能」と言うタイトルで、リクエストのあった部分を深堀っていこうと思う。


企業の目的

ドラッカーは「企業とは何かを決めるのは顧客である。なぜなら財やサービスに対する支払いの意思を持ち、経済資源を富に、モノを財貨に換えるからである。しかも顧客が価値を認め購入するものは、財やサービスそのものではなく、その財やサービスが提供する効用である。」と説いている。

つまり、例えばあなたがドラッカーの「マネジメント」の本を買おうとするとき、あなたはその本自体に価値があるから買うわけではなく、本を買って読むことによって自分自身が変化し、読んだ後の組織づくりに良い効果が生まれることを期待して本を買う。それがその本が提供する効用だ。

また、ボクたちが物流サービスにお金を払う(買う)場合、例えばクロネコヤマトに荷物の発送を頼むとした場合に、その「輸送」というサービス自体にお金を払うわけではなく、自分が直接大阪まで行って母の日のプレゼントを手渡するために必要であろう時間と労力を買っている。その時間と労力の削減が宅急便の効用なのだ。

マーケティングとは

ダイヤモンド社は、「自分の組織づくりに不安や不満を持っている人が、それを打破するためのマネジメント理論を知りたい…」という潜在的な欲求を、このドラッカーの「マネジメント」を出版することで有効需要に換えた。
クロネコヤマトは、CtoCの全国輸配送網(宅急便)を整備することによって、「母の日に母親にプレゼントを渡したいが、忙しくて大阪まで往復する時間がない…」という潜在的な欲求を有効需要に換えたのだ。

それがマーケティングだ。
ドラッカーは「真のマーケティングは顧客からスタートする。我々が何を売りたいかではなく、顧客は何を買いたいかを問わなければならない」と説いている。

マーケティングをどのように定義すべきか

そうなると、まずは「顧客は誰なのか?」を定義しなければならない。
シンプルに言うと「顧客=お金を払ってくれる人」だ。
そのお金を払う人がどんな欲求を持っていて、どんなことに価値を感じているかを知らなければならない。そしてその欲求や価値に応えるために、自分たちが何に集中するべきかを問わなければならない。どんな企業でも有しているリソースは限られている。その限られたリソースを何に集中させるのかという目標を定めなければならない。

もう一つは、市場の中の位置だ。ドラッカーは「市場においてリーダー的な地位を占めたい」とか「売上さえ伸びれば市場シェアなど気にしない」と言う考えは間違っていると説く。まず自社における「市場」がどのようなものであるか定義する必要がある。その上で、その市場自体が拡大していく(よりその財やサービスに価値を見出してくれる人を増やす)方向にアクションを取っていくことがマーケティングだ。

市場が拡大すると相対的に自社のシェアは小さくなる。場合によっては自社より大きなシェアを獲る競合他社が出てくるかもしれない。しかし、その「成長していく」市場の中において、自社をどういった位置に置くべきかを、その時その時で模索することを目標にしなければならない。最も良くないのは、井伏鱒二の山椒魚のように市場が変わらないのに自社だけが大きくなってしまい、身動きが取れなくなってしまうこと、もしくは市場と共に事業もシュリンクしてしまうことだ。

イノベーションとは

しかし、マーケティングだけでは企業としての成功はない。
マーケティングだけで存在するのは、手数料をもらうだけのブローカーか、何の価値も生まない投機家だとドラッカーも言っている。

マーケティングは重要だ。
しかし、企業の第二の機能として「イノベーション=新しい満足を生み出すこと」も持たなければならない。マーケティングで顧客の欲求と価値を知り、それに対してその企業が有している財とサービスを供給することだけでなく、その財とサービスをより良くしていかなければならない。

「イノベーション」と言うと、ボクらはスティーブ・ジョブズがiPhoneを発表したときのようなことを思い浮かべるかもしれない。iPhoneの普及によって人々の生活様式が一変した=これぞイノベーションのお手本という伝説的なエピソードだ。

イノベーションをどのように定義すべきか

それは間違っていない。
間違っていないが、ドラッカーはiPhoneの発表の30年も前にこのように述べている。「イノベーションとは、発明のことではない。技術のみに関するコンセプトでもない。経済に関わることである。経済的なイノベーション、さらに社会的なイノベーションは、技術のイノベーション以上に重要である。」

つまり、プロダクトやサービスのイノベーション、つまり世の中を変えるような技術革新も重要であるが、2つ目のイノベーションとして「市場(消費者の行動や価値観)のイノベーション」も重要だ。

それは前述のマーケティングの市場の中の位置の話にリンクしていて、「顧客=お金を払う人」自身がまだ気づいていない潜在需要を顕在化させるというイノベーションを起こし、新しい消費行動を起こしてもらうことを意味している。
だからApple社は次々と新機能を盛り込んだ新機種を市場に投入する。またApple Watchのような新しいガジェットを市場に投入する。それによって、「Apple Watchを使いたい」という潜在需要を掘り起こし、Apple Watchが売れるということだけでなく、AndroidユーザーがiPhoneに切り替えてくれることを期待しているという側面もあるのだ。

3つ目のイノベーションは「プロダクトを市場にもっていくまでの工程のイノベーション」であるが、そのイノベーションの最もわかりやすいものが、この10年のAmazonの躍進だろう。Amazonが売っているもの自体は他のショップでも買うことができるものがほとんどだ。そして必ずしも安いとは限らない。だが多くの人はAmazonを利用する。それによって小売業界は一変した。
Amazonのイノベーションは、まさに「プロダクトを市場にもっていくまでの工程のイノベーション」だ。あらゆる商品をスマホひとつで購入することができ、その購入した商品が、翌日には(場合によってはその日の内に)自宅の玄関前に置かれている、という仕組みを世の中に送り出したことが、Amazonのイノベーションなのだ。

…と、ここまで書いて、改めて驚かされるのは、
ドラッカーが「マネジメント」を書いたのが50年も前のことだという事実だ。

(続きはまた来週)


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