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環境問題を理解する: エネルギーの供給源の種類と特性

さあ、火曜日だ。
火曜日は環境問題について書く日だ。
この「環境問題シリーズ」にはボクの考えが入る余地はない。ただひたすら事実を正確に書くことを目指しているが、将来的に新しい考え方や技術が導入され、ここに書いたことは古くなっていくことをご理解いただきたい。

先週は「エネルギーミックス」ついて書いたが、今日はそれぞれのエネルギーの供給源の種類とその特性について書いていこう。

化石燃料

火力発電の原料は、石炭、石油、天然ガスだ。

まず石炭だが、主な輸入元はオーストラリア・インドネシア・ロシア・カナダとなっている。石炭が最も低コストでエネルギーを生み出すことができるが、その代わりCO2や大気汚染物質の排出量が多いという欠点がある。ちなみに、石炭は火力発電だけでなく、鉄鋼や紙パルプなどの生産の際にも使われ、そこでもCO2を排出することが環境対策の課題となっている。

そして石油だが、サウジアラビア・アラブ首長国連合・カタール・イラン・クウェートなどが主要な輸入国だ。液体であるため、輸送や取扱が容易だという利点があるが、用途によって精製しなければならない。

天然ガスは、火力発電だけでなく、民生用として空調などにも利用されている。主にオーストラリア・マレーシア・カタール・ロシアなどから輸入されているが、輸送時には低温で液化してタンカーに積むらしい。また近年では「シェールガス」の開発が進んでいる。これは近年の技術革新により、シェール層と呼ばれる地層に眠っている石油混じりのガスやオイルが掘削できるようになった天然ガスの一種であるが、なにが大きいかというとアメリカが最大の産ガス国であることだ。これまでロシアや中東に頼っていた燃料がアメリカから輸入できるというところが、日米双方にとってメリットがあるというところだろう。

原子力発電

原子力発電は、核分裂しやすいウラン235を約4%、核分裂しにくいウラン238を約96%混ぜた燃料を使用する。ウランは「ペレット」と呼ばれるセラミック状に焼き固められた小さな円柱形に加工され、これを束ねて燃料集合体を作り、一定の割合で安定して核分裂反応が進む臨界状態に置いて熱を生み出す。
原子力発電は、CO2を排出せずに安定的且つ経済的に電気を生み出すことができるので、ゼロカーボンを達成するためには欠かせないエネルギー供給源なのだが、やはり安全面と使用済み核燃料をどう処理するかというところが大きな課題であることは間違いない。

再生可能エネルギー

水力・地熱・太陽熱・風力・バイオマスなどの自然エネルギーを利用して発電する技術。枯渇することがなく、発電時にほとんどCO2を排出しないというメリットがある。一方で、建設コストが高くなる傾向があり、技術開発がまだまだ未完成なものも多い。そして太陽光や風力などは気象条件に左右される部分も大きい。

>>太陽光発電
太陽電池を使って太陽光を直接電力に換える発電システム。
概ね太陽光の15~20%を電力に変換することが可能だが、気象条件や時間帯によって大きく変動することがネックである。将来的に全発電容量の1/3程度を賄うことができるのではないかと言われている。

>>風力発電
風況に恵まれた地域(北海道・東北・九州など)を中心に、大規模なウインドファームの建設が進んでいる。日本においては、洋上風力発電のポテンシャルが高いだろうと言われているが、まだ技術開発が追い付いていない状況のようだ。

>>バイオマスエネルギー
化石燃料以外の動植物に由来する有機物を燃料として発電する方法を指す。廃材・木くず・生ごみ・家畜の糞尿・サトウキビやトウモロコシ・海藻など、原材料は多種多様だ。廃棄物を再利用するので資源循環を進めることが可能だが、一方で運搬や管理が高コストとなる欠点がある。最近では、バイオエタノールやバイオディーゼルなどのバイオ燃料で走る車などが開発されてきている。

>>水力発電
日本においては、大規模水力発電は開発しつくされていて、これ以上建設することは難しいが、中小の水源を使う発電技術が開発されつつある。また揚水発電(貯水池の段差を利用して汲み上げた水を流して発電を行う技術)は太陽光発電ができない夜間帯の電力を埋めることができる技術として注目されている。

>>地熱発電
地熱を利用(地下から噴き出す蒸気でタービンを回すなど)して発電する方法で、原料が枯渇する心配がないというところは利点だが、開発に長期間かかること、立地地区が温泉地域や国立公園などに被ってしまうことが課題となることが多い。バイナリー発電(温泉水などを使って沸点の低い媒体を加熱→蒸発させて、その蒸気でタービンを回す方法)も地熱発電の一種である。

省エネルギー対策

省エネ対策は、大きく分けて「少ないエネルギーを効率よく活用する技術単体」と「複数の事業体や地域が連携して効率よくエネルギー活用するシステム作り」の2つになる。

>>省エネ技術
1. ヒートポンプ
気体を圧縮すると温度が上昇し、膨張させると温度が下がる原理を利用して、発生した空気の熱を熱交換器で汲み上げてエアコンや冷蔵庫、または温水器などに利用する技術である。
2. 燃料電池
都市ガスなどから得た水素を、空気中の酸素と電気化学反応を起こさせて発電する技術。電気だけでなく熱も発生する(コージェネレーション: 以下に詳細を説明)ため、エネルギー効率の高いシステムとして注目されている。
3. インバーター
交流電気を一旦直流に変換し、さらに周波数を変える装置。
周波数を変えることでモーターの回転数を制御することで、エアコンや冷蔵庫などの温度設定をきめ細やかに行うことができる。
4. 複層ガラス・断熱サッシ
シンプルではあるが、複層ガラスや断熱サッシを使うことによって、窓から熱が逃げることを抑えることができるので、家の断熱性能を上げることができ、省エネルギー化につながる。

>>省エネシステム
1. ZEH(net Zero Energy House)
「エネルギー収支をゼロ以下にする家」の意。
外壁の断熱性能を向上させる、太陽光発電システムを搭載する、などによって、年間のエネルギー収支を実質的にゼロにすることを目指した住宅のこと。一般的な住宅に比べると割高になってしまうので、国や自治体の補助金制度が用意されている。

2. コージェネレーション
電気と熱を一緒に(co)作る(generation)ことを意味する。
発電を行う際に発生する排熱で温水や蒸気を作り出し、地域の給湯や冷暖房に使用するシステムである。排熱まで有効利用することによって、エネルギー効率は75~80%と非常に優れていることが特徴。家庭用のコージェネレーションシステムとして「エネファーム」などがある。
3. スマートグリッド・スマートコミュニティ
スマートメーター(電力の使用状況などを電力会社などと通信して共有し、レコメンドや制御を行う電力メーター)などの機能を活かして、地域全体の送電調整や時間帯ごとの電力契約を進める電力網のことを指す。地域全体で効率的に電気を使うことを考えるので、エネルギー供給や省エネを効率的に進めることができる。スマートコミュニティはさらに省エネルギーの交通システムなども組み合わせるなど、居住者のライフスタイルから省エネルギーに替えていこうという概念である。(TOYOTAのWoven Cityなど)

4. ESCO(Energy Service Company)事業
ESCO事業者が、省エネに関する包括的なサービスを提供し、事業者は顧客が削減できた光熱費の一部を報酬として受け取るという事業のようだが、なんだかよくわからん。興味ある人はESCO・エネルギーマネジメント推進協議会のホームページで確認してほしい。

来週はオゾン層が破壊されるメカニズムに触れていこうと思う。


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