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ドラッカーのマネジメントについて学ぼう - ⑪ 企業活動とリスクテイク

さあ、金曜日だ。
金曜日は、ドラッカーの「マネジメント」について学ぶ日だ。

この本は非常に緻密に書かれており、記事としてはドラッカーが書いた内容を順になぞっていくようなものになってしまうかもしれないと思っているが、可能な限り現代的な解釈をして、わかりやすく解説を加えていきたいと思っている。

先週は「管理とは組織に無理をさせることではない」について書いたが、今日は「企業活動とリスク」について書こうと思う。


経営科学とは

今、ボクは「マネジメント」の第6章 - マネジメントの技能 の30 -「経営科学」という項で手が止まっている。7ページちょいの短い項だが、「科学的に考える人」であるボクとしては、やっぱりこの「科学」というワードを看過するわけにはいかない。

「経営科学」を辞書でひいてみると、以下の説明が出た。

経営科学(けいえいかがく)
経営問題の科学的解明を目ざす研究分野。
具体的には、次の二つのいずれかをいう。

(1)ドイツにおける経営科学Betriebswissenschaftenで、20世紀初頭アメリカで発展した科学的管理法を進化させ、その内容と方法を経営問題に広く適用して分化した諸科学を総称する。インダストリアル・エンジニアリング(IE)のような技術的研究、労働科学のような生理学的研究、労働者の心理的研究、組織に関する組織論的もしくは社会学的研究などが含まれる。全体に共通する統一原理を欠いているため複数科学の集合とみなされ、原語は複数形となっている。

(2)1950年ころからアメリカを中心にして発展してきた経営科学management scienceで、数理的に経営現象を解明する研究を総称する。管理科学とも訳される。この中心はオペレーションズ・リサーチ(OR)である。方法として経営問題を数式モデルや数理的過程のシステムとしてとらえることを特色とし、そのためミクロ経済学との関係が深い。

日本大百科全書 (ニッポニカ)

ドラッカーは「マネジメント」の中で、
-- 経営科学が行うべきは、自らの公準とすべきものを確定することである -- と説いている。「公準」とは「ある理論体系を演繹展開(すでに得ている一般論もしくは信ずる価値観をある事象に当てはめて、その意味するところを「必然的に」引き出す、いわゆる三段論法的な論理展開のこと)するための基礎として承認を必要とする根本命題のことを指す。

経営科学が公準とすべき5つの事実

その「公準」には、以下の5つの事実が含まれる。
① 企業は社会の下僕に過ぎないが、最弱最小であっても社会や経済に直接影響を与える存在である。つまり企業とは、社会的、経済的な生態システムの一員である。
②企業は、人が価値があると認めるものを生み出す存在である。どんなに見事に設計したプロダクトやサービスであっても、顧客の役に立たなければ廃物である。
③企業の測定の尺度は金である。
④企業の経済活動とは、現在の資源を不確かな未来に投入することである。つまり、企業にとってリスクを冒すことこそが基本的な機能である。
⑤世の中は常に変化して行き、後戻りすることはできない。しかしその変化の主体は企業である。

企業活動とリスクテイク

ドラッカーはその5つの事実の中で、④のリスクについて特筆している。

経営科学は、最終目標として「リスクをなくすことや最小にすること」に力を入れている。しかし、企業活動からリスクを取り除くことはできない。なぜなら、企業の経済活動とは、現在の資源を不確かな未来に投入することだからだ。つまり、企業が経済的に進歩する(拡大する)とは、リスクを負う能力が大きくなることと定義しなければならない。

企業の測定の尺度は金だ。
お金という尺度で見るとき、リスクを負う能力の大きさは、その企業の純資産の額の大きさに比例する。しかし単純に額が大きければいいかと言うと、資産や負債とのバランスにもよる。指標としてみるのであれば「自己資本比率」を見るべきだろう。もうひとつの指標としては、フリーキャッシュフローがどのくらいあるかというところになる。

ドラッカーはこんなことを言っている。
経営科学の文献には、リスクを冒したり、リスクを作り出すことを非難する響きがある。しかしそれは、経済活動を責任を伴う自由裁量の世界ではなく、物理的に確定した世界とみなしていることを意味しており、それは間違っているというより最悪である。

(続きはまた来週)


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