競争戦略論[Ⅰ]を読む - ⑯企業はどのようにCSRに取り組むべきなのか
さあ、水曜日だ。
毎週水曜日はマイケル・ポーター著「競争戦略論」をベースに、ボクの気づきや思考をアウトプットするシリーズを展開している。
先週は「中小企業のフィランソロピー戦略」という記事を書いたが、今週は「企業はどのようにCSRに取り組むべきなのか」ということについて書いていこうと思う。
なぜ企業はCSRを考えなければならないのか
CSR(Corporate Social Responsibility: 企業の社会的責任)について考えるとき、多くの経営者はネガティブな反応を示すだろう。
それは、納税について考えるときと似ているかもしれない。やらなければならないことはわかっているが、ついつい後回しにしたくなるものだ。そして、それが国民の義務であることを理解しつつも、できることならば何か良い方法を見つけ出して納税から逃れること(もしくは軽減すること)ができないだろうかと考えてしまう。
しかし現代において、企業活動の責任は第三者から監視され評価され、場合によってはネットなどを使ってバッシングされる時代になっている。そのため、多くの企業(特に大企業)は自社の活動が社会や地球環境に及ぼす悪影響の改善に努め、それをCSR報告書にまとめ、ホームページなどで公開している。
なぜCSRは上手くいかないのか
しかし、マイケル・ポーターは「この種の報告書がCSR活動における共通のフレームワークを示すことはなく、また長期戦略のフレームワークなどは望むべくもない。単に社会への配慮を示すために、ばらばらな活動を紹介する記事を集めた小冊子にすぎない。」と指摘している。
それは、企業と(企業を批判しようとする)社会の双方が、企業活動が社会の利益と対立するものと見なしていること、そして企業自身が(なにかやっておけば批判を避けることができるだろうという考えのもとに)自社の戦略に適したCSRの追求を怠っていることが原因だ。
企業には多くの義務や責任が求められる。
しかし、企業活動は常に矛盾を抱え、経営者は常に難易度の高いハンドリングを求められる。それは、関係するステークホルダーがそれぞれに思惑を持っていて、それぞれに価値観が異なり、使えるコストとリソースは限られているからだ。そういった経営環境の中で「持続可能(Sustainable)な経営をすべき」などと言われても、そのトレードオフの基準をどのように持つべきか判断することはできないだろう。そして、他の会社がやっていることに倣ってCSR活動をするようになってしまうと、それはすでにCSRではなくPRであり、CSR活動に対する自己評価を行うことすら怠るようになってしまう。
企業と社会は相互共存関係にある
企業が成功するためには社会が健全でなくてはならない。安全な労働環境は企業だけで作れるものではない。また天然資源の豊富さは企業の生産性を高める。そして行政や法制度によって、企業の成長が抑制されてしまう場合もあれば、逆に恩恵を受ける場合もある。
同時に、社会が健全であるためには企業の成功が欠かせない。
企業は社会に対して、雇用、資産、イノベーションなどの創出の責任を負う。そして、何よりも税金や寄付、その他の経済活動によって社会が回っているという側面も忘れてはならない。
企業はどのようにCSRに取り組むべきなのか
どんな企業であっても、すべての社会問題を解決することはできない。したがって、企業のCSR活動は、自社の事業と関連性が高い社会問題を選択し、その課題解決に寄与するべきだ。もしくは(関連性が薄くとも)興味のあるカテゴリーにする方がよい。
CSRは、社会にとっての価値と、企業にとっての価値を同時に実現し、地域社会の期待を上回るものでなくてはならない。「迷惑を減らす」というレベルを超えて「社会を良くする」レベルを目指さなければCSRに取り組む意味はない。
そのためには地域社会との対話が必要だ。
CSRが対話のない一方通行なものになってしまうと、ただのPRに化してしまう。自社との関連性が高い社会問題を解決しようとしている(善良な)地域団体や活動家などとの対話を繰り返し、企業としてできることを明確化しなければならない。そしてCSR活動の成果を正しく数値化し、ステークホルダー(特に対象とした社会問題にかかわる人たち)と定期的に共有を行うべきである。
(続きはまた来週)
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