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私がどうやって広東語通訳者になれたのかを紐解いてみる(67)- 『コンフィデンスマンJP プリンセス編』その2 -

広東語通訳者なのに
何故『コンフィデンスマンJP プリンセス編』なのか

といういきさつは前回書いた。

『プリンセス編』の撮影場所がマレーシアだったから。マレーシアは多民族国家でメインの人種はざっくり言うとマレー人、華人、インド人。

華人は広東語を話せる華南系が多い。稀に國語のみの華人もいたけれど、ミーティングや撮影現場での話程度なら私も國語対応可能なのでOK。マレー人、インド人とは英語でのやり取りで問題無し。

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クアラルンプール市内での撮影は数日間。一ヵ所での撮影カット数は少ないのに、撮影場所が多いので美術部はドタバタ。

美術部は撮影本隊より数時間先に現場に入り飾り付けや小道具の準備をする。外景での撮影の場合はセットに比べて細かい飾り付けが少ないので本隊とのタイムラグも少ない場合が多い。

ランカウイ島

屋外だけれどもセットを組んだ所はそりゃもう大変だった。例えばここ。

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ランカウイ島の某高級リゾートホテルのプール敷地内。ロケハンも、昼間は客がプールで遊んでいるので静かにこっそり見るだけ。プールの営業が終わった夜になってから、暗い中で使用部分の計測をする。

昼間にある程度の当たりは付けてあるとはいえ、真っ暗な中での計測は実に困難だった。営業時間外だから当然明かりはつけてもらえない。本当に真っ暗。手持ちの懐中電灯で計測するという苦行。そんな困難を乗り越えて創り出したパーティー会場のセットが上の写真。

パーティーで使うニセ・カクテルを作ったりするのは結構楽しかったりもする。

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エキストラの皆さんには「飲み物ではありませんので、飲まないように」と何度もアナウンスするのだけれど、やっぱり飲んじゃう奴がいるのよこれが。

『肥龍過江 / Enter The Fat Dragon / 燃えよデブゴン』の深圳での撮影ではカビが生えているのももろともせず栗を食ってしまうバカたれがいたけれど(以前のエピソードをご参照ください)、ここでも飲んでしまうバカたれがいた。バカたれというより、チャレンジャーかもしれない。

これを読んでいる日本のエキストラさん達はさすがにダメだと言われている小道具を飲んだり食ったりしないだろうけれど、カビが生えていたり食用ではない何か得体のしれない物体で色付けしたりしているので、チャレンジしないでくださいませよ。

しかし、このランカウイ島は素晴らしいリゾート地だった。ちょっとばかりご紹介しよう。

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どうよ、この天国感。仕事で来る所じゃないね。バケーションで来たい。

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恐ろしく快適な環境で仕事しているように見えるかもしれないが、我々はずっとこの「ピーカンの降り注ぐ太陽の下、木陰など無い場所」で走り回るわけですよ。ホンマ体力勝負よ。

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役者さんはアシスタントさんに日傘差してもらえるけれど、我々スタッフは直射日光ですから。

アクション女優

またまたやってしまいました。
アクション女優を。

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オープニング・シーンだよ。下記の一番最初のトレイラーにも少し使われている。

『追捕 / Man Hunt』の時は監督から直々のオファーだったけれど、今回は「この役、Sophie にピッタリじゃん!Sophie やれば?」とキャスティングマネジャーからのオファー。一応地元の女優さんも応募してきていたので、女優さん2人と私の3人分の資料写真をキャスティング・マネジャーが日本で準備中の監督に送った。

「送られてきた写真見て、あれ?アハハ!これ、Sophie じゃん!Sophie やってくれんの?じゃあ Sophie で!って大笑いしちゃったよ!」と撮影で戻って来た監督が言っていた。

よくもまぁ毎回毎回ピッタリくる役があるもんだよね。しかも『追捕 / Man Hunt』では弾着、本作では押されて積み上げた段ボールに突っ込んで商品をぶちまける、その後倒れ込んで息を引き取るという役。本作では『追捕 / Man Hunt』で監督の奥様から頂いた(以前のエピソードをご参照ください)死ぬ役を演じる役者への縁起担ぎの利是(ご祝儀)は無かった。残念。

3テイクぐらい撮ったのだけれど、毎回きちんと積み上げた段ボールに突っ込んだせいで痣が出来たという本格アクションを敢行。なかなか理想的に商品をぶちまけたらしく、カメラマンさんから「いやー、これは Sophie の功績だわ!」とお褒め頂いた。

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ここでも賑やかしエキストラ出演。先の台湾工場の太太役で顔が出ているので、ここでは背中のみ出演。

恭サマ

前回書いたように私、柴田恭兵さんの大ファン。

それを知った日本側美術部の皆が面白がりながらも超級ヘルプを沢山してくれた。

例えば執事ト二―が歩くシーン。カメラ位置が決まりスタッフ全員映り込まない位置に逃げて縮こまって座り込みスタンバイする。

「Sophie!こっち!こっち来て!ここ!」

急いで走り込んだ。「何?」

「柴田さん、ここ歩くから!ここに座るのが一番近い!柴田さんが目の前を通るよ!」

あまりに間近過ぎて見上げるのも恥ずかしいぐらいの最接近位置に私を呼び込んでくれたのだった。

とか、そういうヘルプを沢山してくれた美術部の皆に感謝。

私にくれるためにとサングラスの試着という口実で撮ってくれた顔の真正面どアップの写真は公開しませーん。悪しからず。

一日二日もすれば私もさすがに慣れてきて恭兵さんに直接「おはようございます!」ぐらい言えるようになった。恭兵さんはいつ何時も身のこなしも喋り方も本当にダンディーでメロメロになりましたよ私は。

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最終テイクで「OKでーす!」の声が掛かった瞬間にプロデューサーにお願いして撮っていただいた宝物。

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実は私、もう一役やっている。演じているわけではないけれど、私の役(?)としては一番の大写し。それは・・・遺書。

何が何でも筆記体の遺書を使いたいという日本側制作部の意向で、マレーシア側クルー全員に聞いてみたものの、私以外に筆記体を書ける人がいない。

ということで執事トニーが手にする遺書も私。ギャー!恭サマと共演しちゃったよー!

この作品は、本来の公開直前にスキャンダルが爆発して公開があわやお蔵入りかという状況を乗り越えたところで、Covid-19 の感染大爆発で公開が遅れ、いよいよ公開となった前後で出演者のお二人が天に召されてしまうという、なんとも数奇な運命に翻弄された作品になってしまった。お二人はマレーシアの現場にはいらっしゃらなかったので私はお会いしていないけれど、一つの作品の仲間としてお二人のご冥福を心からお祈り申し上げます。

そして次回作にもお声掛けていただいたのだけれど、スケジュール的に合わず辞退した。本当に残念。しかし、この感染拡大で当初のスケジュールでは撮影できていない(できない)はずなので、もしかして次回作にも参加というチャンスはまだ残っているかもしれない。だといいな。(続)



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