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ベールは壁か

1はじめに

 そもそも、自分以外の人間は全員他人である。それは血のつながっている家族でさえも。そうだとすると、自分の“全て”を知っている人間は自分しかいない。しかし、それでもなお、家族やパートナー、親友は、自分のことを(赤の他人よりは)随分理解してくれている。理由は単純で、自分がありのままを曝け出しているからだ。
 もっとも、家族が知っていること、親友が知っていること、パートナーが知っていること、これらの具体的情報は全て共通しているわけではない。もちろん、自分の性格や生い立ちなどは共通しているかもしれない。しかし、例えば、家計や黒歴史、コンプレックス等、相手によって暗黙/自動に「線引き」がされている情報もある。
 人間関係を円滑に、そして平和に構築していくために、この線引き(≒自己開示)を分類する。大別すると、①見せなければならない(Must)、②見せた方がよい(Better)、③どちらでもよい(Either)、④見せてはいけない(Not)の4点である。
※この人間関係構築における分類をMBEN法と呼ぶことにする(言いたいだけ)。

2見せなければならない(Must)

 これは、関係を築いていくのに絶対不可欠の部分である。家でいうところの土台や骨組みがこれに当たる。
 例えば、①苦手なもの/こと、②大切にしている価値観、③アイデンティティ(ある人にとってはそれが出身地だったり、特技や夢/目標だったり)などが挙げられる。
 Mustを見せないと、長期的かつ安定的な関係構築はほぼ不可能と思った方が良い。ただ、どの段階で開示するかは別途検討が必要となる。
※初対面なのか、何回か食事を重ねた仲なのかetc.

3見せた方がいい(Better)

 確かに必須ではないけれども、しっかり見せることで、より安心できたり、仲が深まったりする。バリアフリーデザインがこれに近い。
 例えば、①好きなこと/もの、②生い立ち、③経験値/能力値などが挙げられる。ポジティブなテーマであるし、共通項として見出すことができれば、関係構築の初期段階で大いに役立つ。

4どちらでもよい(Either)

 出オチだが、関係構築の「外側」にあるテーマがこれにあたる。一般論に対する''感想''のようなものである。
 例えば、実は自分は人より毛量が多いだとか、Macを買うときは(こだわりはないが)グレーを選ぶだとか、そういったものである。
 知ったとて、何か起こるわけでもないが、コミュニケーションのフックにはなるかもしれない。

5見せてはいけない(Not)

 まずもって、いう''必要性''がなく、およそデメリットやリスクしかないものである。クレジットカード番号やパスワード、恥ずかしい黒歴史、究極には犯罪歴(?)だったりがこれに当たる。
 ただし、注意点として、人によってはMustやBetterにあたる情報かもしれないことがある。例えば、かつての恥ずかしい黒歴史(倒産やいじめなど)はその人のアイデンティティかもしれない。

6最後に

 以上が、関係性を築く上で理解すべき「線引き」である。ただ、あくまで目安であって、4(either)や5(not)だと思っていたものが、相手からすれば2(must)の可能性もある。逆も然り。
 経験則上言えることは、「これは言わないほうがいいかな」(ex.罪悪感)と思うものは大抵言った方がよかったりするし、「これは言ってあげた方がいいかな」(ex.お節介)と思うものは大抵言わなくてよかったりする。
 つまるところ、「これは言えない」/「これは言うべき」という白黒はっきりしたコミュニケーションをとることがBestと思われる。

ベール〘名〙 (veil)
① 女性が顔をかくしてつつしみを表わしたり、装飾としたりするためにかぶる薄い布や網。頭にかぶったり、帽子の縁につけてたらしたりする。
② (比喩的に) おおい隠すものやおおい包むもの。
※欧米印象記(1910)〈中村春雨〉大陸横断日誌「その先きなる小き滝も、皆神秘のヴェールの中に透かされて眺められし申候」

精選版 日本国語大辞典

#人間関係 #信頼#自分#他人

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