「これをやりたい!と思うのなら…」コロナ禍から未来へ伝えたいこと
実験はオンライン 簡略化された学び
「今年は大学に10回も行ってないんじゃないかな…」
都内の私立大学に通う理系学生・Yさん(大学3年・男性)は大学生活をこう振り返る。
新型コロナウイルスの流行により、大学の講義はオンラインが主流となった。
Yさんは物理学を専攻している。本来であれば実験が多いが、コロナ禍では今まで通りの授業はできない。Yさんは、視聴した実験動画の結果を解析し、レポートで提出することを求められた。
「オンラインによってやりやすい部分もあるけど、十分に理解できていないのでは、という心配の方が大きいです。コロナ禍では、やらなければならないことが簡略化されてしまっている気がします」
大学での学びの醍醐味は、正解がない問いへ対峙することにあるはずだ。
しかし、コロナ禍では、予定調和された実験結果をなぞり、それを解析することを余儀なくされた。
これがはたして、本来の学びの姿なのだろうか。
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やりたいことが出来ない大学生活
新型コロナウイルスは、思い描いていたキャンパスライフを奪い去った。
「こんなことになるなんて、誰も思ってなかったですよね。大学生活でやりたいことが沢山あったんですけど、それが全然出来なくなってしまいました」
時間に余裕のあるうちに国内外へ旅行に訪れたい。一眼レフを片手に、シャッターを切ってみたい。大学内にあるジムで身体を動かしたい。
せっかくの大学生活。やりたいことは、山ほどあった。
しかし、思い描く青写真とは裏腹に、新型コロナウイルスの感染は拡大の一途を辿る。
旅行も写真もジムも、思う存分楽しむことはできなくなった。
「こればかりは誰のせいにも出来ないので、仕方ないと割り切るしかありません。僕は新しくやりたいことを見つけようと思いました」
今まであまり読書をしなかったが、外出自粛中は本へ手を伸ばすようになった。気になる映画も見るようにした。YouTubeでの動画を参考に、創作料理にも取り組んだ。
「こういう状況ですけど、何かを吸収して、自分に身に着けられることに取り組みたいと思いました。やりたかったことは出来ないので、方向性は違いますが、新しいことに取り組めているのは良かったです」
青写真が脆く崩れ去ろうとしている今、私たちはつい下を向いてしまいそうになる。
それでも、Yさんは卑屈にならず、前を向こうとしている。
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オンラインで変わる教育の在り方
Yさんは専攻科目のほかに、教職課程を履修している。一般企業への就職を視野に入れる一方、高校で理科の教員になることを見据えている。
「これから学校の在り方が変わると思っています。ある意味、このコロナ禍では、オンラインでも大学の授業ができることが証明されてしまいました。対面とオンラインのどちらかではなく、今後は対面とオンラインを上手く併用することで、もっと良い教育の在り方が実現できるのではないかと思っています」
コロナウイルスは、これまでの「当たり前」を覆そうとしている。
Yさんは、真剣な表情でこう付け加えた。
「それはすぐに出る答えではないですけど、でも、考えていかなければならないと思っています」
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未来へのメッセージ
私たちはこの新型コロナウイルスから何を学ぶのか。
Yさんは未来へ向けて、こんなメッセージを残してくれた。
「こうした感染症は人生に1度は起こると身構えていた方が良いと思います。コロナウイルスの自粛期間で、僕は自分を見つめ直すことができました。読書や映画など、新しいことを始めたことで、自分を変える良いきっかけになると思います。オンラインによって、社会性やコミュニケーション力が低下するって思われてますが、思っていたよりコミュニケーションできるツールもあるので、それらを上手く使うことが大切です」
そして、もう一つのメッセージ。
「これをやりたい!と思うのならば、すぐに行動することが大事なんじゃないかな…。後悔しないように」
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未知のウイルスは、私たちの当たり前を覆そうとしている。
初めてのオンライン授業。簡素化された実験科目。諦めなければならないキャンパスライフ。
その一つひとつとすぐに折り合いをつけられるほど、人間は丈夫には出来ていない。
それでも、限られた状況の中を、私たちは生きていかなければならない。
「後悔しないように」
後悔しないように生きることは、とても難しい。何をしても、私たちは後悔を避けられないのかもしれない。
でも、目の前の光景が一変してしまってからでは、遅い。
大切なのは、たとえ後悔しようとも、思い描く願いが消え去ってしまう前に行動すること。
Yさんが織りなすメッセージを胸に、私たちはコロナ禍を、そして未来を生きていこうと思う。
(取材日:2020年11月24日)
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上智大学社会学科・田渕ゼミでは、コロナ禍での想いを言葉にする活動に取り組みました。
「コロナを未来に伝える」をテーマとし、多くの方々から未来へのメッセージを募りました。
こちらに34のメッセージを掲載しました!
ぜひご覧ください!
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