負けず嫌いになれない「わがまま」
「負けて悔しいと思って、努力するのが負けず嫌い。
負けて悔しいと思っても、何もしないのはわがまま。」
これは、高校時代、メンバー決めの部内試合で負けた私に父が放った一言。言われた瞬間、何かがグサッと突き刺さったような感覚になり、今でも忘れられない。
当時の私は努力の先にあるものが怖くて、がむしゃらに頑張ることができなくなっていた。あるできごとがきっかけで自分に絶望してしまっていたから。
そして、今もなお努力の先に怯えている。当時の絶望が何年も経った今も私のストッパーになっている。あの時から私は「負けず嫌い」になれぬまま「わがまま」として生きているのである。
中学生の頃、私は「負けず嫌い」だった。
部内で一番下手と言われたのが悔しかった。毎日行う長距離走、初めは20人中ビリだったけど、しばらくして5番目以内はキープするようになった(多分)。1番の子はめちゃくちゃ速かったけど1回くらいは1番になれた気がする。
練習は具合の悪い日以外は絶対に休まなかった。メンバーに馴染めず、3年間どこか孤独を感じていたけど逃げたら負けだと思ってた。あまりの辛さに帰宅後玄関で大泣きする日が続いたこともあった。
試合のレギュラーメンバーになることはできなかったけど、全員出してもらえるような試合でまあまあな結果を出したり、結構いいところまで這い上がれたりした。引退直前に顧問の先生がこう言ったとき、私は努力は報われるんだと思った。「この中で1番成長したのはそらだな。」
そんなこんなで私は高校生になった。
私が「わがまま」になってしまったのは先輩たちが引退してしばらく後のことだった。
強い先輩方が引退すると、自然と自分の部内の順位は上がる。ずっと下の順位で生きてきた私が、突然上から数えた方が早いようなところにボンっと現れてしまい怖くなった。
メンバー決めの部内試合を経て、一度だけ公式試合のメンバーになれたことがある。私がやっていたのは個人スポーツなので、戦うのは選手それぞれ。まだ1回戦目、他のメンバーがあっさり勝っていく中で、私だけめちゃくちゃせった。「部活の代表としてここに立ってるんだ。勝たなきゃ。」気付いたら、自分で勝手に膨らませたプレッシャーで自分を押しつぶしていた。
部内試合で勝つことが怖くなった。どんなに努力して部内試合で勝てたとしても本番で実力を発揮できないと思ってしまったから。あの大きなプレッシャーに押しつぶされて、みんなに迷惑をかけるのが怖かった。
それからのこと。ダブルス。また自分で勝手に膨らませたプレッシャーで自分を押しつぶし、緊張しまくりだった。練習からは想像できないくらい、基本的なミスの連続。組んでいるペアに申し訳なくなって、どんどんどんどん自分で自分を苦しめた。もともとネガティブな私がさらにネガティブになり、きっとペアの子も困ってた。
気づけば私と組める人はほんのわずかしかいなくなっていた。ダブルスのプレー自体は好きだった。けど、シングルスの方が精神的に楽だった。ミスは全て自分のせいだし、「ペアの子はどう思ってるんだろう」って申し訳なくなることがないから。でも、シングルスとして出るほどの実力は持ち合わせていなかった。
一度、試合メンバーを決めるために、ダブルスのメンバーを決めないといけないことがあった。私はなれなかった。順位的にはワンチャンなれそうな位置だったと思うけど、相性的な問題で。
当時、私は自主参加の朝練にも積極的に参加してる方だった。けど、その日から引退まで一度も行くことはなかった。今でも私はそれを「逃げた」と思っている。
たとえ努力してメンバーの座を取ったとしても、本番では実力が発揮できない。ペアを組めたとしても、ペアの子に申し訳なくなる。もう、心の底から頑張ろうと思えなくなっていた。
でも、そう思ってしまう自分が嫌いだった。部内試合で負けたとき、どこかほっとしている自分がいるのに気付いて辛かった。みんなはメンバー入りを目指して頑張っていて、チームとしても勝利を目指して頑張っているのに、実は自分だけ恐怖に負けて心の底から頑張ろうと思えなくなっていたから。
結局そのモヤモヤは晴れぬまま、私は最後の部内試合で同期の中で一番早くメンバー落ちが決まった。引退試合のメンバーにはならなかったってこと。
本気になれないモヤモヤは受験にまでついてきた。
自分のレベルよりもかなり高いところを志望していた。頑張りたいのに、頑張らないといけないのに、本気で頑張れなかった。「どんなに頑張っても、どうせ受からないかもしれない。」「意味がないかもしれない」そんな気持ちを消すことができなかった。辛かった。周りのみんなが第一志望に向けて必死に勉強しているのに、どうしても本気になれない自分が嫌だった。どうしようもできなくて、塾の先生の前で2回くらい泣いた。
「努力は報われる」って言うし、落ちたとしても本気で生み出した努力は無駄にならない。もちろんそれはわかっていたし、今もわかってる。だけど、努力の先にあるものへの恐怖には勝てなかった。
そして今もなお、その恐怖に怯えている。
えげつない量の課題とぶち当たってしまったとき、想像できない難易度のものに出会ってしまったとき、足が止まる。引き返したくなる。
でも、もう同じ後悔はしたくないし、また負けるのは嫌。
未来の自分が今の自分と同じような後悔をしてるのは嫌だから
少しだけその恐怖と向き合おうとしている。
真の「負けず嫌い」になりたいから。
まあ、まだまだ道のりは長いんだけどね。
では、皆さま素敵な1日を。
p.s)多分、この話は知り合いにほとんどしたことがなくて。ちゃんと言語化したのは初めて。ちょっとスッキリした。最後まで読んでくれた方がいたら、ありがとうございます🌼