【連続小説】騒音の神様 40 吹田の日雇い大学生、怒る

神様が、盛山の事をハナモリ、「花守君」と言って喜んでいた頃。関西の元気な大学生が怒り狂っていた。「なんやそれ、十人以上もおって、みんなボコボコにされてんの。アホちゃうか。」怒っているのは、関西の大学に通いながら、たまに日雇いで万博工事に来ていた男だった。万博工事に来ていた大学生は、タバコの煙ただよう現場で皆の話に聞き耳を立てていた。「ヒジ討ちの男が、また来たらしいで。」「合気道のやつがやられたらしい。」「現場には二十人以上おったらしい。」「三人は、アゴ叩き割られたって。」「ヒジ討ち男は、爺さんと二人組。武器は使ってないらしい。」。そんな話を聞きながら、関西の大学生は怒りが込み上げてきた。「なんなん、らしいって。中途半端やわ。二十人以上もおって、なんなん、一人にやられて。気持ち悪いわ。」体の逞しい大学生は、いきりたっていた。「俺が倒したるわ、そいつ。二十人も一人で倒せる奴なんか、おらんよ、おらん。みんな騙されすぎ。俺が倒すから。」そう言っていきまいた男、垂水 拳(たるみず けん)。子供の頃から近所の神社や公園の武道の練習に参加し、大学生となった今は拳法サークルを作って活動している。普段行っている稽古は、顔面に剣道のお面のような防具をつけて行っている。顔面パンチあり、蹴りあり、投げあり、関節技ありの激しいものだ。子供のころからそんな武道、格闘に触れていたので相当戦いには自信があった。また、日雇いアルバイトには、拳法サークルの仲間も一緒に来ていたので自分達なら楽勝だろうと思った。垂水は言う。「俺らが成敗しますわ。楽勝でしょ。そいつら、どんな奴ですか、」。垂水は情報を聞き出し、仲間と共有し準備を始めらようと思った。「あいつ倒したら、日当あげてくださいよ、」垂水が日雇いのリーダーに言うと、日雇いのリーダーは、「当たり前や。それだけやないで。現場におる奴全員が、五百円札、いや千円札お前らに払うわ。一人倒すだけで、えらい収入になるで。」と笑いながら言った。垂水は自信満々に、「それ、全部俺らの総取りやで、」と言って拳法サークルの仲間三人で大笑いした。「はよ来い、ヒジ討ち男。吹田の拳法なめんなよ。」

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