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(連続小説)騒音の神様 その3 神様と盛山戦いの後

工事現場にいきなり現れ、次々と作業員をヒジ討ちで倒した男は自転車をこいで家路へ向かう。後ろには小さなお爺さんが乗っている。

お爺さんは、自転車を漕ぐ男に話しかけた。
「盛山くん、ようやってくれた。さすがに強いなぁ、惚れ惚れするわ。」
「ありがとうございます。まあ、正直余裕でしたよ。神様こそ、上手いこと工事の音を消していきましたね。バッチリ静かになってましたよ。」
神様と呼ばれたお爺さんは答える。「ははは、だいぶ機械とかエンジンの切り方を覚えてきたよ。新しい機械もあったなあ。そんなんを見るのも楽しいもんや、」

二人乗りの自転車で銭湯に寄ってから二人は家に帰った。神様と呼ばれたお爺さんは、銭湯でコーラを飲み、家に着くと瓶ビールを飲んだ。そして盛山に話しかける。「コーラもビールも美味いなあ。こんな美味しい飲み物が現れるとは想像もつかんかったよ、数百年前には。まあ、ほとんど覚えてないねんけど。」そう言ってビールを口に含む。そしてまた神様はじっくり話しだす。「もし江戸時代にこんな刺激的で美味しい飲み物があったら大ヒットしてるやろなあ。まあ、今でも大ヒットしてるんやけど。」盛山は笑いながら返事をする。「そうですね、ほんまに美味しいですね。どんな時代でも人気出そうですね。」

そんな話をしながら、神様は昔のことを思い出そうとする。「三百年前には、わしは何を飲んでたんやろか。水かな、お茶かな、お酒は飲んでたはずや。でも思い出せんなあ。何を飲んでたんかなあ。」神様は、しばらく昔の記憶を辿ろうとして黙る。しばらく黙った後、盛山に話しかける。「盛山君、まあ、とにかく今日はよくやってくれた。明日も行けるか?怪我はないか?」盛山は答える。「大丈夫ですよ、無傷です。」神様は嬉しそうに言う。「そうか、ほな明日も頼むで。」神様は、タバコに火をつけ煙を吸い込み吐き出す。「タバコも美味いなあ、それもすぐに手に入る。こんなに美味しい酒や煙草がすぐに手に入る時代がくるなんて、想像したこともなかったなあ。すごい時代や。」そんなことを話しながら、昔にはなかった電球を眺めながら夜を過ごすのが神様の常だった。光を放つ電球は大好きだ。電球を眺めながら神様は盛山に静かに話しかける。「騒音を消すんや。そうすればこの新しい時代に子供の音が響き渡る。子供の音が聞こえれば、みんな喜んでくれるはずや。盛山君とわしならできる。」神様が話し、盛山が話しを聞いている部屋の外では、赤ちゃんの元気な泣き声と、工事の音と振動、そして車が走る大きな音が夜の町に響いていた。

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