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【連続小説】騒音の神様 43 垂水猛練習に励む

盛山がしばらくバイクの練習に励んでいる頃、垂水はさらに激しい練習に打ち込んでいた。一対一だけでなく、協力して一人を倒す練習を始めた。サークル仲間達からは、「複数で一人やっつけるって卑怯ちがうか、俺ら拳法家やで。」だとか、「複数練習は、一人で何人か倒すための練習やろ。それが三人で一人倒すとか逆や。簡単すぎるやろ。」などの意見が出た。しかし垂水は、話に聞いたヒジ討ち男のことをなめてはいなかった。垂水は皆に、「分かってないな、みんな。ゆうとくけど、工事現場には喧嘩自慢なんか山ほどおるんやで。力自慢もようさんおる。その喧嘩自慢のおっさんら相手に一人で二十人やで。スコップ持った相手に一人で二十人倒すんやで。なめすぎやろ。相手は怪物やと思え。人間やと思うな。」そう言って練習を再開する。垂水が、「俺が本気だすから、三人でかかってこい。本気で来いよ。」そう聞いた拳法サークルの男達が三人一組になり、垂水に襲い掛かる。垂水は、相手が手加減していると分かると躊躇なく思い切り殴り飛ばし、思い切り蹴りを入れた。「本気出さんと練習ならんぞ。思いっきり来い。それからちゃんと作戦立てろ。何も考えんと来ても無駄や。次や、次来い。」垂水も三人組として練習したかったが、垂水が強すぎてひたすら一人対三人の戦いを続ける。垂水は、自分がヒジ討ち男になった気持ちになって練習を続ける。そして各三人組の作戦力が上がっていく。足首に飛び込み、とにかく足一本の自由を奪うもの。後頭部と背中への攻撃ばかりする者。二人で両足首を抑える作戦、など。垂水はヒジ討ちを打てる所ではなくなり、サンドバッグ状態が多くなった。やっと垂水は、「よし、ヒジ討ち男役、順番に代わっていこか。」と言った。垂水は息が上がり、相当殴られ蹴られてボロボロ状態だったがまだまだやる気満々だった。準備に、ヒジ討ち男役が三人にボコボコにされる練習が続いた。垂水は自信を持った。「この練習をしてたら勝てる、間違いない。」垂水は慌てていなかった。「ヒジ討ち男には、必ず出会える。慌てんでええ。日雇いに行ける奴は、必ず三人で行こ。」そう言って、垂水は決戦の準備を整えていた。だが垂水には、まだまだ練習したいことがあった。二人対一人、四人対一人、五人対一人。垂水が想定すればするほど、ヒジ討ち男に勝てる自信が湧いてきた。もちろん、想定だけでなく全ての想定を必死で練習する気だった。

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