(小説)騒音の神様 その4 神様の万博計画

神様と盛山は、今日も大きな音を出している工事現場に襲い掛かかった。六人程度の小さな現場だったので盛山はあっという間にヒジ討ちで制圧。神様は「子供の音を町に響かせるんや」と拡声器で話した後、いつものように二人乗りの自転車で家路に着いた。

神様は、瓶ビールを飲みながら「うまい、うまい、最高や」とビールの味に感動している。そしてタバコにマッチで火をつける。「タバコも美味い。マッチも良くできてる。夜も電気で部屋が明るい。最高の時代や。」神様は様々な新しいものに酔いしれながら盛山に話しかけた。「盛山君、大きな計画に移すで。この新しい時代に子供達の音をもっともっと街に轟かせるんや。今は歴史上最も子供が多い。こんなに子供が多い時代はこれまでなかった。なかったんや。」そう言いながら神様はビールを飲みタバコをふかす。「なのに、なのにや、子供が多いのに子供の音がかき消されてる。新しい時代の騒音と言うやつに。騒音に負けたらあかんねや。僕は騒音を消すよ。だからな盛山君、大きな現場を狙っていく。」盛山は返事をする。「はい、神様、大歓迎です。行きましょう。」神様は嬉しそうに言う。「さすが盛山君、頼もしいな。頼りになる。ねらうのは万博や。凄い大きな規模になるらしい。世界中から人が集まるお祭りなをやから。そやから万博の工事現場はでかい。絶対でかい、工事の音も馬鹿でかい絶対。ここを狙う。何回も行くんや。」盛山は「何回でも行きますよ、何人でも倒しますよ。」盛山の自信のある声を聞いて神様は言った。「盛山君、君はどの時代に生まれても強かったやろな。江戸時代の侍の時代でも、もっと昔の戦の時代でもな。」盛山は神様にそう言われると嬉しかった。神様は続ける。「でもな、昔の戦いでは人はすぐ死んだ。負けたら死ぬ。勝ってても死ぬ。簡単に人は死ぬ。ほんまなんや。僕は知ってる。盛山君、これからは生き続けて戦う時代や。死にやすい時代は終わった。戦争は終わった。戦(いくさ)はとうの昔に終わった。これは誰もが生きながら子供の音を街に響かせる戦いなんや。」そう話すと神様は電球の光に見惚れながら外から聞こえる子供の音を探した。そしてその音はすぐにトラックや工事の音にかき消された。神様は言った。「おかしい、おかしい。今頃、町中に子供の音が鳴り響いてないとおかしいんや。子供がたくさんいてるんやから。わしはやるで、盛山君。君なら一緒にやってくれる。万博はでかい大仕事や。戦いは勝つものや。頼むで。」そう言って神様はビールで顔を赤くしながら眠りについた。


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