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「農家が土地を守る、大館を守るぞ」 若き農業者、3年目の挑戦

今回ご紹介する谷本弾(たにもとだん)さんは、東京生まれ東京育ち。大学卒業後、24歳のとき、農業を学ぶため大館市に移住してきました。現在は、大館市中山の石垣農園で、農業の勉強に励む日々を送っています。
私生活では、花善の鶏めし大食い大会に出場するなど、精力的に大館での暮らしを楽しんでいる弾さん。
都会からやってきた若者の目に、大館はどんなふうに写っているのでしょうか。「大館で働く・大館で暮らす」という両面に焦点をあて、お話しを伺いました!

<インタビュアー>
  大館市商工課地域おこし協力隊 三澤雄太
  大館市商工課地域おこし協力隊 三澤舞

生い立ちについて

3人兄弟の末っ子として生まれ、野球三昧の青春時代を過ごす

舞: さっそくなんですけど、弾さんお生まれはどちらですか?
谷本弾(以下、弾): 生まれは東京都の町田市というところです。
舞: 生まれも育ちもずっとですか?
弾: そうですね。生まれてから大学生まで22年間、町田市にいました。
舞: じゃあ、大学も実家から?
弾: そうですね。大学も実家から原付で通ってました。
舞: どんな子ども時代を過ごしましたか?
弾: まず、うちの兄弟が男三人兄弟でして、自分が一番下なんですけど、長男が最初に野球を始めて。それにつられるように次男、三男と。自分は幼稚園の年長から野球を始めました。
舞: 中高生の頃、進路ってどんなふうに考えてましたか?
弾: そうですね。中高生の頃は、何も考えてなかったです。目の前にあることをこなすことで一生懸命になってたので、将来こういう仕事就こうっていうのはあまりありませんでした。
 でも、小学校のころは野球をすごいひたむきにやってたので、プロ野球選手がいいなってまず思うんですけど、中学ぐらいから現実味を帯びてきて。野球選手は無理だとして、デスクワークもちょっとやだなと思って。 
 何故かその時ハマってた「ジャングルの王者ターちゃん」っていう漫画があるんですけど、それで秘孔を突くキャラクターがいるんですよ。それを見て、俺“ツボ押し”になろうってちょっと一瞬思ったんです。本気で思ってました。そのために、大学は医学部にいこうかなと。大学行って俺はツボ押しになるんだって、なぜか。
雄太: ちょっとそれは…(笑)
弾: めちゃくちゃな考えをします。(笑)
弾: 高校生は本当部活忙しくて。今、目の前にあることに一生懸命だったので、全然将来の事も考えず、野球をずっとやってました。
 で、受験シーズンになって、本当この先どうしようと思って。ほわほわしてたんで、とりあえずまあ経済学部行けば、どの方面にも行けるかなと思って、大学は経済学部に入りました。
舞: 大学卒業してから就職は?
弾: 卒業してからは、農業法人に。農業を会社化しているものを農業法人って言うんですけど、東京の近くでどっか農業を勉強できるところがないかなと思って、たまたまネットで検索して採用情報をみてたら、埼玉県さいたま市の大宮の近くにある農業法人を見つけて、そこに就職することにしました。
舞: 大学生の頃から農業に興味があったっていうことですか?
弾: ええ、そうですね。大学時代もちょっと一年生は遊んだりとかサークル活動して、「いま」を楽しんでたんですが、本当に将来を考え始めたのが、3年生から始まるゼミ活動で。
 たまたま入ったところが、地域活性化のゼミみたいなところで、地域活性化といっても、いろんな方面あると思うんですけど、なぜか、農業っていうのが頭に浮かびました。
 たぶんいろいろ理由があると思うんですけど、うちの父がもともと農業系の先生ですし、あとは帰省などでたまに大館にきてたっていうのもあって、田園風景が頭の中に浮かんで、農業を使って地域おこししていけないかなと思って、ゼミで農業のことについて調べたり、卒業論文書いたりしましたね。
舞: お父さんは農業の指導しているんですか?
弾: そうですね、もともとは畜産の先生でした。途中で哺乳類系の先生になったり、今は回り回って桜の先生です。
 元々うちの父が秋田が好きなんですけど、だから、定年になったら秋田来て農業やろうかなとか。大学にも農場があったりして、そこで野菜とかも作ってました。
 カナダに5年間、母と父が住んでたんですけど、その時も大学の姉妹校みたいなところでメロンを作ってたり。よく分かんないですけど、なんかいろいろ作ってたみたいです。
舞: そういうお父さんの影響とかも?
弾: そうですね。でも学生時代とかって父の仕事には全然興味なかったんですけど、興味なかったっていうか何してるかもよくわからなかったっていうか、ただ先生っていうのはわかってたんですけど、いざ進路ってなった時に脳裏に浮かんだのは父親の影響もあったかもしれません。
舞: じゃあそれで農業を、まずは埼玉で。埼玉って大宮の近くとかでも農業法人あるんですね。
雄太: 意外ですよね。
弾: 埼玉って、例えば浦和とか大宮とか、川越もところどころ栄えてるっぽいところがあるんですけど、隣の駅行けばすぐもう田舎なんで。田んぼとかも多いですし、自分がたまたま行ったとこは大宮から三駅ぐらい離れたところですね。
 主に小松菜をやってて、あと季節野菜で玉ねぎだったり、トウモロコシだったり、あとクワイっていう、こっちでは珍しいと思うんですけど、おせち料理に使う丸いいもみたいのに芽が出ている植物があるんですけど、それをやってたりしてました。
舞: なんで大館に行こうかなって思ったんですか?
弾: それもタイミングと言いますか。
 素人から農業参入するのってすごいハードルが高いんです。自分は就職したのは会社だったんですけど、会社でも農業やってない素人からしたら、やること全部が新鮮でした。一個、一個の作業が凄いきついというか。
 農業全体を学びたいと思って、就職したんですけど、一部分のことしか出来なかった。農業勉強するってよりは農作業を勉強している感じでした。
 スポーツで言うと試合に出ないでずっと筋トレしてるみたいな。で、2年働くことになるんですけど、一年ちょい過ぎた頃に、もっと学べるとこあったらなーって思ってたら。自分が農業法人2年目の時に、うちの母が大館市の地域おこし協力隊で働いてたんですけど、ちょうどその年で任期が終わるということで、そのタイミングで自分も大館に引越ししたらどうだっていう話を頂いたので、大館に行くのもいいかもしれないなと思って移住を決断しました。

弾さんの視点からみた大館の農業

舞: まず仕事についてお聞きしたいのですが、いまの仕事内容を教えてください。
弾: 大館市中山の石垣農園に就職しました。作物としてはコメとネギとりんご、なしを主に生産しています。

田植え機を運転する弾さん

舞: イメージをもって大館に移住してきたと思うんですけど、実際、働いてみてどうですか?
弾: そうですね。自分は石垣さんにお世話になっておりまして、おかげさまで、色々勉強させて頂いてます。まさしく、自分が求めていた環境だと思います。
舞: 農業って体力仕事っていうか、結構きつそうだなとか、寒そうだなというイメージがあるのですが、抵抗はありませんでしたか?
弾: そうですね。体力はもともと自信はありました。ちっちゃい時から、スポーツやってたので。
 だから大館来る時は全然そこは怖くなかったです。ただ、雪に対する耐性はなかったので、ちょっと不安はありました。ですけど、意外といけましたね。
雄太: 5年後、10年後にはこういうことしてるみたいな、そういうイメージとかって持ってたりしますか?
弾: そうですね、当初は、石垣さんところにお世話になって、いずれは独立するつもりでいたんですよ。なので、最初は3年ぐらいお世話になって、そこから独立しようと思っておりました。
 ただ、独立した農家さんがすぐ隣の田畑で農作業してるのを見るんですけど、その人が寝ずに働いているのを見て、やっぱり一から農業をやるっていうのは、基礎を作るところから始めるので、利益を出すまでにとてつもない時間と労力がかかるんだなと思いました。
 これから農地を維持して行くという意味では、そういう大きい法人がどんどん増えていかないと、この大館の広い農地を守っていけないかなと思いました。それであれば、石垣さんとこの経営体を、大きくする方が先決かなと思って、今は独立というよりは、石垣さんの会社を、大きくするという方針になってきました。
舞: 大館は圃場整備とかも県内で比べればあんまり進まなかった地域なのかなと思いますが。
弾: そうですね。簡単な話ですと、トラクターって必ず必要になってくるんですけど。例えば、一人の農家さんがトラクター一台買うって言っても、その田んぼに使うのって本当一瞬だったりするんですよ。で、それ以外畑に使うっていっても、植える前に一回と植えた後、片づけるときに一回とかそんぐらいしか使わないのに、何百万って投資しなきゃいけないので、それだったら、面積が多くなれば、そのトラクターを働かせる時間が増えるわけですよ。そういう投資に見合った働き方をさせるには、やっぱり大面積やって投入した方が良いのかなと思います。
雄太: たしかに、自分らも活動の中で農家さんから、やっぱり個人でやってても維持できないという話しを聞いたことがあります。
 秋田で農業というと大潟村が有名だと思うんですが、大館の農業には課題とかって見えたりしていますか?
弾: 大潟村はちょっと特殊なんですけど、あそこはもともと農業経営するために作られた地域なので。ひとり15町歩っていう面積を与えられて、そこでいろんな品目回して、どんだけ稼げるかっていうのをやっている地域なんですよね。
舞: 回すというのは、二毛作、三毛作ってことですか。
弾: そうですね。大館や秋田県全域にも言えることだと思いますが、基本的に稲作中心でプラスアルファ野菜を植えるケースが多いと思います。
 今、自分の社長は大潟村のやり方を取り入れて、同じ田んぼに稲作→麦→大豆などのサイクルを用いて、同じ面積でより稼げるようになり、よりいい土作りができる形態を目指しています。
舞: 先ほど、弾さんがお話ししてくれた「農地を守る」ことは、どう大切なんでしょうか?
弾: そうですね。もし仮に農地を守らなかった場合、田畑が草畑になり、そこに人が住まなくなり、道が通れなくなって、その土地の活動範囲が狭まってきて、人口減少の追い風となると思います。そうなるのであれば、その土地を使って稼いで、農地維持できる農業は大切だなと思います。
舞: そういえば、データ的には若い農家さんが増えてるってみたことがありますが、ちょっと農業に興味あるなあ、自分もやってみたいな、という方に、アドバイスはありますか?
弾: 一から農業を始める方には補助金が出るのですが、補助金頼りに農業すると後で苦しい思いをすると思います。なので、数年間の計画を立てて、最初は補助金にお世話になるけど、年数が増すごとに徐々にステップアップして、3,4年後くらいには補助金がなくても経営できる状態になっておくべきだと思います。ただ、それが難しいんですけどね。だから、近くの農家さんやコミュニティに参入して、相互助け合いながら知識と経験を積むことが大事だと思います。
 その土地に合った作物ってあると思うので。普通の企業も同じだと思うんですけど、自分のやりたいことと、やらなくちゃいけない事。まず稼がないとその事業をやっていけないので、大館にあった作物、例えばアスパラガスとかキュウリとかってあるんですけど、まずはその土地に合った作物をやって、そこから自分の好きなやりたい作物があるなら、それに特化した農家の重鎮とかに話を聞いたりとか、チャレンジするのはいいかと思います。まず稼げるものからですね。
舞: 弾さんなりに農業のおもしろいところってどんなところですか?
谷本弾: そうですね。まあ達成感ですかね。やはり自然相手に仕事をしているので、絶対100%思い通りにならないんですよね。ですけど、できるだけ100%に近づけようとして物を作ろうとするからすごく面白いです。 自分の理想には永遠に辿り着かないとは思いますが、そこにチャレンジすることがまた面白いのかもしれません。
舞: それは水の回数とか肥料の加減とかですか?
弾: 全部ですね。だから多分、いや本当芸術に近いんじゃないですか?
自分の納得のいく絵とか音楽とかを求めてやるんですけど、その時は納得してでも、次の年も納得するかっていうとまた別の話で。どんどん、アップデートしていくという。

「大館で働く」ということ

舞: じゃあ、ちょっと角度を変えて、広く考えて、大館で働く事の良さってありますか。
弾: 普通の会社じゃないので何とも言えないですけど、全部に共通するのは、やっぱ車通勤で全然渋滞もないですし、快適に通勤できるかなと思います。東京だと電車が主になるので、満員電車に揉まれる。そういう意味で通勤は快適ですね
舞: やっぱり都会に比べれば収入は少なくなってしまうと思うんですけど、そのあたり弾さんはどうですか?
弾: 農業に関しては、やっぱり都心に近いほど送料とかも少なくすむので、その分、秋田県はちょっと不利な状況にあるんですけど、農業者としても所得は都会のところよりも少ない傾向にあると思います。
 個人的には、埼玉にいた時よりは、最初は低い収入でした。ただ、自分が今いる会社の方針といいますか、成果を出した分、お給料に反映するという形なのでやりがいがあります。いいお給料を稼ぐために働けるのでむしろ楽しくてたまりません。

※北秋田市の地域おこし協力隊の斎藤美奈子さんのYouTubeチャンネル「フードハンターこむぎ子」の動画で、弾さんが働く石垣農園さんのネギの出荷作業の様子が紹介されていますので、ご紹介します!
「#67【農嫁】噂のイケメン農家さんを訪ねて隣町へ・・・」

舞: 実力主義というか、頑張った分がちゃんと収入としてかえってくるというのは新しい試みなんでしょうか。
弾: 埼玉にいたころは、会社の業績がよければボーナスが増えてっていう感じでした。今、石垣さんとこでやるのは、この品目を任せるからそれの売上次第で。今年の業績がよかったら、次年度の基本給も上がるとか、そういうのはなかなか無いかもしれないですね。
舞: それは若手のモチベーションを上げるとか、そういう目的ですか。
弾: そうですね。自分以外にも三人従業員がいまして、自分は農業をやりに来たので、そういうモチベーションは元からあったんですけど、ほかの三人にどう派生して行くかっていうの課題ですね。
舞: みんながみんな農業やりたいって参入している訳ではないって事なんですか。
弾: 農業やりたいって言って来てはるんですけど、例えば、この作業つらいとか。全体的にみたら、このつらい局面を乗り越えたらゴールが見えてくるのに、農業の現実を思い知らされて、ちょっとガッカリすることとか。
 さっきも若手農家さんが増えてるって話があったと思うんですけど、新規参入の数は増えてるのは確かですが、定着率が低く、辞めていく方も結構います。
 それも、一番の原因は多分、イチから農業経営するっていう点だと思います。経営や野菜を作った経験がないのに始めて色々ダメで、補助金使い切ってこの先食べていけないってなって辞めて行く人が多いかなと思います。だから地域の方々がサポートしていく仕組みが必要なんですね。補助金あるうちに色々試行錯誤して、周りからサポートを受けつつ、知識と経験を積むことが必要だと思います。
舞: そうなんだ。
弾: 根気と体力は農作業しているうちについてくるんですけど、そのモチベーションをどう保つかっていうのが、今後の課題ですね。
舞: 挑戦したいこと、他にはなにかありますか?
弾: 今の会社を、大きくすることですね。市場や企業と直接取引できるくらいに!年収は昔から言ってるんですけど、1,000万円を目指してます。ただ、農協の指標通りだと1000万は到底叶いません。
 なので、自分たちで作った農産物の質と量をずっと保持して、それから高く買ってよっていう企業や市場へ営業をして、利益を上げて年収1000万円に届かせようと思います。
舞: これからの大館の農業に期待することがあれば。
弾: まずさっき言った基盤整備を増やしてもらうこと。これからの担い手の人が農作業がしやすい稼げる農地を増やして頂けたらなと思います。
 そして、農家がやっぱりいいものを作ることだと思います。自分が言うのはおこがましいんですけど、みんなに見せても恥ずかしくないものを作る。農産物の単価を上げるのは、やっぱりいいものを作るところからですね。
舞: いっぱい農家さんいると思うんですけど、それぞれやっぱりモチベーションも違いますよね。全体の品質を底上げするために、できることって何かあるんでしょうか?
弾: まず今の若い人が品質向上していく。そして今後新規就農者が入ってきたら、品質向上が大館の農業のためになるんだという指導をして伝承していくようにすればいいのかなと思います。農協青年部という若い農家が集まる組織で、後輩が先輩からアドバイスを頂いたり、指導して頂いていたりしてモチベーションと品質向上に繋がるのではないかと思います

大館での暮らしについて

雄太: 大館に来る前と来てからのギャップはありますか?
弾: 雪かきですかね。冬は雪かきをやったことがなかったので。遊びで手伝いとかしましたけど。毎日これするのかって最初思いました。一年目。ただ、夏とかずっと早起きしてるので、そのノリでそのまま早起きしている感じで。最初は寒いと思ってましたけど、なんだかんだ動くんで体も温まりますし、むしろ眠気が覚めると言いますか、朝のいい運動にはなってます。悪いギャップから良いギャップみたいな。
舞: 趣味は満喫できてますか?
弾: 趣味は、野球をずっとやってたので、去年草野球チームを社長が作ってくれて、名前が石垣ジャイアンツっていう。
 去年は三試合から四試合しましたね。一年目のときに、石垣さん野球やりましょうよって言ってて、そしたら2年目、ようやく実現して、仲間も20人ぐらい集まって。
雄太: すごい!
弾: 春に会長杯っていうのがあるみたいなんですけど、それに参加したり、夏は達子森カップ。あと玉納めに石垣フルーツカップやろうよって。
雄太: ハハハ!なんか楽しんでますね。
弾: そうですね。ヤジもありなんですけど、自分たちのチームだけですけど、相手チームには礼儀正しく、自分たちにはヤジでいじったりして。
舞: 漫喫できてるんですね。
弾: そうですね。本当はもっと野球やりたいですけど、ちょうどシーズンがかぶったりするので、なかなかそこが難しいところですね。遊びと仕事のバランスを取っていきたいです。
舞: 仕事は忙しいですか?
弾: そうですね、基本的に。普通の経営者さんも休みがないと思うんですけど。そんな感覚ですかね、農家は。
 だけど、自分は一応従業員なので、今は月から金まで働いて土日休みなんですけど、忙しいときになると、晴れているうちに仕事を終わらせたいとかって出てくるので。そうなると、一週間休み無い時とかもありますし、あと雨降ったら休み、という具合に分けてますね。その分、冬が休めるみたいな感じなので。
舞: 冬の趣味は?
弾: スキーもはじめました。中二の時と大学一年生の時に二回しかやった事なかったんですけど、せっかく雪国に来たから雪のスポーツやりたいと思って「スキーやりたいな」って言ってたら、たまたま石垣さんがスキー新しいの買ったから古いやつをお前にやるってもらって、一回だけ滑りました。趣味にしたいヤツですね。スキーは。
舞: 生活で物足りなさを感じることってあります?
弾: やっぱり、女性との出会いでしょうか
舞: 確かに。出会いが無いっていうのはちょっとね。大館の未来を考えると、このままじゃいけないような気はするよね?
弾: 合コンじゃなくていいんですよね。バーベキューみたいな。
雄太: ああ、わかるわかる。
弾: いろんな業種をあつめてなんか楽しもうみたいなのでいいんですよ。
雄太: 普通に友達として交流して行くなかで。
弾: たまたまみたいな。
雄太: それが自然だよね、やっぱ。
雄太: 東京とかって普通に生活してるだけですれ違う人の数桁違いで。いろんな人との交流するきっかけが転がってるよね。
弾: 逆に田舎に居ると、相談相手がいて、こういう人探してるんだけどって言ったら「あの人どう?」みたいな感じで、すぐ繋がれる感じがして。もうみんな知り合いみたいな感覚なので、頼りやすいと言いますか、すぐ繋がれるって言うので、実は東京より早く情報だったり、スキルを手に入れられるのかなって思いますね。
雄太: 人に頼ることをよりするようになったなーっていう感じ?
弾: そうですね。頼ってばっかりです。
舞: 大館に暮らしてみて、弾さんが暮らしの中で大切にしていることはありますか?
弾: さっき言ったとおり、みんな近い関係なので。その時他人だったとしても、いつか何かでつながるなって思ってて。
横柄な態度とらないように、みんな親戚だと思って接してます。
舞: じゃあは大館の良さって、弾さん的には何がありますか?
弾: なんか全部自分にとってちょうどいい気がしますね。すごく田舎だと本当に何もないじゃないですか。自分はドラッグストアだけでも楽しいんですよね。あと、ワークマンとか。いとくショッピングセンターとか、そんぐらいで楽しめちゃうタイプなので。まあちょうどいい。
 強いて言うなら、自然に囲まれているのがいいですね。けど、ちゃんと町ぶに行けば飲み屋があるからいいですね。お酒あればなんでも。(笑)
 観光地いけば、例えば愛媛行けばみかんジュースが飲み放題みたいな、とかってあるかもしれないですけど、結局、住む場所って突拍子もない「これがあるから住む」ってわけじゃないと思うんです。ちょこちょことしたところが合うみたいな感じで、ここに住もうって決めるかもしれません。
 あとは、食べ物が美味しいですよ。旬のものが食べられるので。スーパーに並ぶとなると、どうしても2,3日経つので、東京だともっとかかる。
舞: 確かに生産地のすぐ近くで食べれた方が美味しいですよね。
弾: はい。
雄太: この土地で育ったものを口にしやすいっていうのは、大館に住み、大館で育ったものを食べるっていう
弾: そうですね。
舞: さっき話してたドラッグストアだけで楽しいっていうのは、大館にいるからこそって感じですか?
弾: シーズンになればずっと働いているので、小さいことでも幸せに感じられるのかなと思います。
 ワークマンが楽しいのは、仕事に使えるからですかね。仕事してる時間の方が長いので。みんなが、例えば、デスクに置く何かを買うみたいなもんですかね。
雄太: はい、はい、はい、はい。
弾: 武器をそろえるみたいな。今で言うと剪定しているので、ハサミをめっちゃ磨いてますね。数百円の砥石と千円のハサミでずっと磨いているだけで楽しいっていうか、なんて言うんですかね。本当に農家ってそうなんだなって思いました。日頃使う武器を揃えているだけで楽しいとか。作業着もなんかちょっと模様ついているだけで楽しいとか。「明日これ着て仕事するぞ」ってワークマン行って選ぶのも楽しいんじゃないですかね。

弾さんの「武器」を撮影いただきました。

舞: 弾さんの性格的には農業は自分で向いていると思いますか。
弾: 向いてると思います、うん。
舞: どのあたりが?
弾: ずっと体動かせるところですかね。なんだかんだやっぱ体動かすことが好きかもしれないです。時々デスクワークもしてみたいなと思うんですけど、多分ずっとっていうと、無理かもしれません。
 今となっては営業とかもやってみたいなって言うのはありますけど。農業をやって、ちょっと営業して、みたいな感じですかね。やっぱり農業捨てられないかも。
舞: 東京のレストランとか商社さんとか、これからもしかしたら営業行かなきゃいけないかもしれませんよね。
弾: そうですね。「まず食ってみろ」ってね。
雄太: そんな乱暴な(笑)
雄太: どうやったら会社を大きくしていけるか。それに向けて、会社と同じ方向を向いてひたむきになれるのって、こんな楽しいことはないですよね。そこが埼玉のときとの大きな違いなのかな?と思いました。
弾: 大館って本当に農家がいなくなったら、耕作放棄地が増えて、ほとんどの土地が原野になってしまうので、そういう意味では、「農家がこの土地を守る、大館市を守るぞ」っていう目標を共に志す石垣さんと出会えたので、土地を守りつつ稼いで、自分も会社も大館市も潤っていくと思うとすごくやりがいがありますね。
雄太: 最後にいいお言葉をいただきました。弾さん、ありがとうございました!
弾: ありがとうございました!

おわりに

いかがでしたか?
農業者の視点で大館の未来を見据える、谷本弾さんのインタビューをお届けしました。近年、様々な分野で問題になっている「後継者問題」ですが、農業においても例外ではなく、補助制度など様々なアプローチでの対策もあるなかで、谷本さんからは、地域一帯となってサポートして、まずは稼げる農業でベースを築き、それからやりたいことに取り組むことが大事だというお話があったかと思います。また、耕作放棄地とならずに、土地の活用を持続させるためには、農業法人といった規模の大きな農業法人の存在も、地域の未来において重要度が増してくるのではないかなと感じました。
「若者」というだけで注目されることも多いですが、「若者による、次の世代のためにできること」についてもすでに考えられている谷本さんのお話は、地に足のついた、とても力強いものでした。

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