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アインシュタインが語る「宇宙的宗教」とは

「牧師さん、それは人間が神様の姿に似せられて造られた——つまり擬人化だが——などと教える宗教じゃないんだ。人間には無限の次元(ディメンション)があり、その良心の中に神を見い出した。この宗教では、世界が合理的であり、人は世界を思い、その法則を使って共に創造することが究極の神である、という教え以外に教義はない。ただし、そこには条件が二つだけある。一つは、不可解に見えるものが日常のものと同じほど重要だということ。二つ目は、われわれの能力は鈍感で、表面的な知識や単純な美しさしか理解できないということだ。しかし、直観を通すことによって、人の心は、われわれ自身と世界について、より大きな理解をもたらしてくれるんだ。」

ウィリアム・ヘルマンス『アインシュタイン、神を語る(新装版)』工作舎, 2015年, p.182


物理学者アインシュタインが神や宗教をどのように語っていたのかという興味深い書籍『アインシュタイン、神を語る(原題:Einstein and the Poet, 1994年刊)』より引用。著者は詩人・社会学者のウィリアム・ヘルマンス。

この対話は1948年9月14日にあるキリスト教牧師となされたものの一部である。つまり、第二次世界大戦、ユダヤ人のホロコースト、原子爆弾の使用といった出来事の数年後におこなわれている。そして、アインシュタインは、人の福利を国家や教会への忠誠に優先させねばならず、そのためには「宇宙的宗教(cosmic relegion)」が必要だと述べた後に上記の引用が続く。

アインシュタインが神を語るとき、スピノザがよく登場する。基本的にはスピノザが考えたような「第一原因(first cause)」としての神、能産的自然としての神を彼は考えていた。それは彼の相対性理論や宇宙観とも合致するものであっただろう。

牧師がキリスト教とユダヤ教の違いなどにこだわる議論を展開するのに対して、アインシュタインの述べる「宇宙的宗教」のほうがより大局的観点に立っているように思える。神が実際に存在するとしても、それは擬人化されたものではないだろうし、宗教・宗派の違いを超越するような、より普遍的なものだろう。

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