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三十五話

秋葉原の街を、メイド型AI搭載アンドロイドと半ば抱き合いながら歩く私。
イチャイチャするのもいいけれど、だいぶ歩き疲れたなぁ…。
「ねぇ理夢、疲れたからちょっと休憩しない?」
私はアンドロイドの理夢にそう提案した。
「お、お嬢様!?こんな昼間から休憩ですかぁ!?だ、大胆ですねぇ…」
疲れたから休憩したいと言っただけなんですが…。大胆なのかな…?
「休憩でしたらぁ、アキバなら…ここがいいですよぉ〜」
また検索してるのか、瞳と髪の毛の先が虹色に輝く理夢。
理夢は中央通りの目立たない簡素なドアを指差した。
一見普通の喫茶店のドアだな。
「さぁ、入りましょうぉーお嬢様…」
理夢に腕を引っ張られて、喫茶店のような店に入る私。

入ってすぐに受付カウンターがあり、こちらを胡散臭さそうに見る店員がいる。
喫茶店とは違うところは時間制なところだ。
1時間から料金を取られるらしい。
「お嬢様、何時間がいいですかぁ?」
そんなに長居はしたくないので、1時間と答えた。
「1時間ですか…?せっかちさんですねぇ…」
店員が提示した額は、何千円となかなかの額だった。
「え?ちょっと待って…!こんなに払えないよ」
「あらぁそうですかお嬢様。大丈夫誘ったのは私ですから私が払いますよぉ〜」
慌てる私に、理夢は大きな胸を張って答える。
理夢は腰につけたかわいいポシェットから、財布を取り出し料金を払った。
アンドロイドでもお金持ってるんだなぁ…。
変なところに感心する私であった…。

店の受付カウンターを抜け、奥に入る。
照明は薄暗く、辛うじて周りが見えるぐらいだった。
「アキバで休憩できる場所はぁ、こういう所しかないんですよぉ〜」
歩きながら説明する理夢。
あちらこちらから、男女の含んだような囁き声が聞こえる。
「ここはネットカフェだったんですけどぉ、カップルがイチャイチャできるスペースになったんですよぉ」
カップル?イチャイチャ?
「本番は禁止ですけどぉ、それ以外ならおkなんですよぉ〜」
本番?それ以外?どういうこと?
「お嬢様、ずっと私のことエッチな視線で見てましたものねぇ〜」
???私は疲れたから休憩したいと、言っただけなのだが…。
「お嬢様は可愛くて美人で…。私のタイプなんでぇ…。特別サービスしちゃいますぅ」
えっ…!?
休憩したいとは、ラブなホテルに行きたいという意味があると、後に知った私であった。
ここアキバには、そういうホテルがないので、ここを案内してくれたのである。
無知とは恐ろしいものだなと、後々思うのであった…。

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