百二十五話 ナポリタン

喫茶店『天使の扉』で働き、休憩を取っている私…。


お昼になり、お腹が空いていた私たち(私&摩耶)に、翼さんがまかないを持ってきてくれた。


まかないは美味しそうに湯気を立てたナポリタンだ…。


オーソドックスなパスタだけど、食欲をそそる…。


天に召します大天使様にお祈りをする翼さん…。


その透き通るような白い肌の、文字通り天使のような横顔も素敵だ…。


瞳を閉じて、敬虔にお祈りしている翼さん…。


翼さんのぷるんとした薄桃色に縁取られた唇に、私は口づけしたくなってしまった…。




まぁ、それはさておき、私はこれでも堕天使なので、大天使にお祈りするわけにもいかなく…。


地獄にいるであろう大魔王様にお祈りするのだ…。


すごい綺麗な金髪をなびかせた中性的な顔立ちの大魔王様の横顔が一瞬だけ私の脳裏によぎった。


一瞬…。ほんの一瞬だけ魔界の記憶が蘇る…。


私は魔界で大魔王様に出会った…。


多分大魔王様に優しくしてもらった…。


一瞬の優しい記憶に浸る私であった…。




お祈りを終えた私たちは、ナポリタンを食べることにした…。


ナポリタン…。


今では日本で知らない人はいない?庶民的な食べ物だ…。


ナポリタンは、私は知らなかったのだけど発祥は日本だそうだ…。


終戦後、横浜にある超有名ホテルがGHQにより接収された折…。


米兵たちはスパゲッティを塩とコショウで味付けし、トマトケチャップで和えた物をよく食べていたそうで…。


その粗食を見かねた二代目総料理長が、ケチャップの代わりに生のトマト、玉ねぎ、ニンニク、トマトペースト、オリーブオイルを使ったオリジナルソースを考案。


炒めたハムとマッシュルームを加えたスパゲッティを、上記のソースと和えた物…。


それがナポリタンの原型なのだそうだ…。




その後、今お馴染みのトマトケチャップを使ったナポリタンは横浜の洋食店で生まれたそうだ…。


異国情緒あふれる横浜で、歴史とともに育ったナポリタン…。


私はよく噛み締めて、食べることにした…。


店長の作ったナポリタン…。すごい美味しいな…。


メイド喫茶風なお店で、こんな本格派なナポリタンを食べられるなんて…。


ナポリタンは庶民的な料理だ…。


食べた瞬間、子供の頃お出かけしてどこかのお店で食べたナポリタンの味が思い出された…。


まだあの時は、両親とも姉とも仲良く、普通に談笑しながら料理を食べていたはずだ…。


私はその頃の記憶がすごい懐かしくなり、いつのまにか瞳から涙が一雫流れていた…。

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