二百八十話 相合傘

「ごきげんよう」「神のご加護を…」

朝の清冽な空気の中、女子生徒の挨拶がこだまする…。

学校の校門をくぐると、そこは身も心も清らかな乙女の園…。

そう、ここは神田ミカエル女学院…。

中庭の大天使ミカエル像が、通う女子生徒たちを守護している…。

天界の大天使ミカエルは、ここに通う女子生徒たちを見て何を思うか…?

その御心は、まさに神のみぞ知るということなのだろう…。

ここに三年間通えば、お淑やかなお嬢様になって卒業できるという…。

制服は翻さないように、静かに歩き…。

清廉潔白で文部両道、それでいて純粋無垢な心を持った乙女たち…。

この学院には、そういった生徒しか存在しないのです…。

否、今日から新たに校門をくぐった、たった一人の生徒を除いて…。

神田ミカエル女学院に転入することになった私…。

教壇の前で、自己紹介することになったけれど…。

空腹と緊張で、教壇の前で気絶して倒れてしまう…。

私は身体が弱いふりをして、担任の先生に頼んで保健室登校をさせてもらう。

新しいクラスに馴染めそうになかったのだ…。

そんな毎日を送り、どうにか?学院生活にも少し慣れてきた頃…。

慣れてきた頃と思っていたら、なんと夏休みに突入してしまった。

明日から夏休みかー。七月も終わりで八月になった。

夏休みに入り、学校に行かなくていいので…。

惰眠を貪ろうと思ったら、グレモリーが起こしに来て…。

どうやら、私に来客があるらしかった…。

私に友達も知り合いもいないはずだったけれど…。

どうやら昨日トイレで知り合った鈴木藍さんが来てるらしかった。

鈴木藍さんを家に招き入れ、3人で朝食を取ることに …。

朝からカップ飯だったけど、麦茶も出てきて結構満足…。

その後、藍さんが遊びに行こうと言うので行くことこに…。

日差しが嫌な私にグレモリーが日傘をくれたのだ。

これで、日差し、紫外線は大丈夫だぞー…。多分…。

食べてすぐ動くのもアレなので、私たちは少しそのまま休んだ。

しばらく休んだあと、ついに私と藍さんは外に出かけることに…。

グレモリーが、いってらっしゃいーと手を振っている。

外に出た瞬間、強い日差しと蝉の鳴き声がものすごくて…。

私は目を細めて、もう嫌になってしまうのであった。

私はすぐにグレモリーにもらった日傘を差した。

するとどうでしょう?ジリジリと暑い日差しはカットされて…。

それだけじゃなくて、私の周りを冷気が漂ってきたのです…。

すごい!すっごく涼しい!これなら外を歩ける…!

グレモリーが魔力を込めてくれたから、こんなに涼しいのかな?

私は真っ黒な日傘をクルクル回しながら歩いた…。

真っ黒な生地にいっぱいフリルがついて、見た目もかわいい…。

要はなかなか私はご機嫌なのであった。

「ノアっち、ちょっとご機嫌ちっくな感じ??」

藍さんにも、私のご機嫌がバレてしまった…。

「こ、この日傘、日差しカットしてくれていい感じなのよ?」

私はありのままのことを藍さんに告げる…。

私は藍さんの方にも日傘を差し込んであげた…。

「お、本当だ!この傘の下にいるとちょっと涼しいじゃん〜!」

そう言いつつ、藍さんは私と腕を自然に組んでくる…。

私の方に藍さんは自分の身体をぎゅっと押し付けてくるのだ…。

そ、そんなに押し付けたら、藍さんの胸が私の腕に当たる…。

藍さんの胸は、グレモリーや翼さんよりは小さいけど…。

すっごい張りがあって、前に突き出してるようなすごい形なのだ…。

今もギャル風制服のシャツから真っ黄色なブラが透けて見えていて…。

ブラに包まれた胸が谷間を作って、私の視界に入ってくるのである…。

その二つの胸の間に私の腕が入っちゃいそうなんだけれど!?

「ノアっち、なんかすごい顔が赤いし?どした?」

藍さんは私に顔を近づけて聞いてくる。顔が近いよ…?

「あ、あの私好きな人がいるの!だから腕組んだりするのは…」

私は思わず、言ってしまった。一瞬藍さんの顔が強張った気もした。

「ふぅーん、ノアっち好きな人がいるんだぁ〜。どんな人?」

「い、言わなきゃダメかな?すっごい綺麗な人で天使みたいな人なの」

言わなきゃダメかな?と言いつつ、喋ってしまった…。

「ノアっちの好きな人って、女の人?」

藍さんの琥珀色の瞳が揺れている…。

「そ、そうだよ…。私女性しか好きになれない…」

「やった!ならあっしも女だよ!脈あるっしょ?」

藍さん、ポジティブすぎるよ。私は翼さん一筋だし…。

もっと、身体を押し付けてくる藍さん…。

日傘差したちょっとゴスな美少女とギャルが相合い傘をしている…。

側から見たら奇異に見えるだろうか?

「あっしもノアっちのこと大好きだし!愛してるし!」

藍さんはもはや、私に抱きついていた…。

歩きづらいんですが、藍さん…。

「ねぇ、あっしセフレでもいいし、お二号さんでもいいし?」

せふれ?藍さんはすごい勢いで私に迫ってくるですが!?

「あ、あの藍さん。友達ならいいよ?」

私は戸惑いつつ、藍さんにそう告げた…。

藍さんはこの世の終わりみたいな表情になって項垂れてしまう。

「そ、それって断り文句じゃんか〜、がっかり…」

藍さんがかわいそうになってしまう…。

「あ、あの断るとかじゃないよ、ズッ友?だよね?」

私は慌てて、そう付け加えた…。

藍さんの表情は一転、パアァァアと明るくなった。

「ズッ友!うちら親友っしょ!親友ならハグももOKっしょ!」

そう言うなり、藍さんはガバッともっと私に抱きついてきた…。

そして、顔を近づけて私の頬にチュッとキスをした…。

「これは親愛の証のキスだし!親友だからいいっしょ?」

はわわわわ、藍さんにキスされてしまった…。

友達同士のキスだからいいのかな?

陽キャの人達って、こう言うのが当たり前なの?

私にはわからなかった…。

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