二百七十九話 お洋服

「ごきげんよう」「神のご加護を…」

朝の清冽な空気の中、女子生徒の挨拶がこだまする…。

学校の校門をくぐると、そこは身も心も清らかな乙女の園…。

そう、ここは神田ミカエル女学院…。

中庭の大天使ミカエル像が、通う女子生徒たちを守護している…。

天界の大天使ミカエルは、ここに通う女子生徒たちを見て何を思うか…?

その御心は、まさに神のみぞ知るということなのだろう…。

ここに三年間通えば、お淑やかなお嬢様になって卒業できるという…。

制服は翻さないように、静かに歩き…。

清廉潔白で文部両道、それでいて純粋無垢な心を持った乙女たち…。

この学院には、そういった生徒しか存在しないのです…。

否、今日から新たに校門をくぐった、たった一人の生徒を除いて…。

神田ミカエル女学院に転入することになった私…。

教壇の前で、自己紹介することになったけれど…。

空腹と緊張で、教壇の前で気絶して倒れてしまう…。

私は身体が弱いふりをして、担任の先生に頼んで保健室登校をさせてもらう。

新しいクラスに馴染めそうになかったのだ…。

そんな毎日を送り、どうにか?学院生活にも少し慣れてきた頃…。

慣れてきた頃と思っていたら、なんと夏休みに突入してしまった。

明日から夏休みかー。七月も終わりで八月になった。

夏休みに入り、学校に行かなくていいので…。

惰眠を貪ろうと思ったら、グレモリーが起こしに来て…。

どうやら、私に来客があるらしかった…。

私に友達も知り合いもいないはずだったけれど…。

どうやら昨日トイレで知り合った鈴木藍さんが来てるらしかった。

鈴木藍さんを家に招き入れ、3人で朝食を取ることに …。

朝からカップ飯だったけど、麦茶も出てきて結構満足…。

その後、藍さんが遊びに行こうと言うので行くことこに…。

日差しが嫌な私にグレモリーが日傘をくれたのだ。

これで、日差し、紫外線は大丈夫だぞー…。多分…。

食べてすぐ動くのもアレなので、私たちは少しそのまま休んだ。

藍さんはスマホを出して、SNSを見てるようだ…。

チラッと見てしまったら、なんとフォロワーが1万人超えていた!?

こ、これが噂の万垢様か…!?素人では初めて見た…。

藍さんすごいな。やっぱりギャルはSNSでもすごいんだなぁ…。

いつのまにか撮ったのかさっき食べたカップ飯の写真を上げている…。

今日食べた朝ごはんをSNSにアップする。よくあるあるですね…。

写真を上げた瞬間、いいねがブワァーと増えていく…。

すごい、これが万垢様の力か!?すでにいいねが100超えているぞ!?

それ以降もグングン上がっていく藍さんのいいね…。

私の陰の者の裏垢ではいいねが100行くとか稀にあるかないかですよ…。

私が文字通り一肌脱いだ写真なんて、あんまり見る人いないよね…。

いっぱい見てくれても、変態おじさんしかいないし…。

私のはいいねというかエロいねだけれど…。

藍さんの光り輝く万垢様のオーラで私の目は焼き切れそう。

まぶしい、まぶしすぎる!?

「ノアっちどした?あっしの顔に何かついてる?」

藍さんが不思議そうに私の顔を見つめてくる…。

その視線がまた、まぶしいっ!?

藍さんの琥珀色の瞳が、揺れて私を見つめている…。

ちょ、ちょ、待って待って…。そんなに見つめないで…。

友達強度がゼロに等しい私にとっては、藍さんの視線でもまぶしい…。

「い、いえ、藍さんもSNSやってるんだと思って…」

私はしどろもどろになりながら、どうにか答えた…。

「ノアっちもやってるの!?フォローしてあげるし!」

私はスマホをだして、SNSのアドレスを教えた…。

当然、日常垢の表側のアカウントだ…。

危うく、裏垢の方を教えそうになってしまった…。

そんなことしたら、人生終わりになってしまう…。

「これでノアっちとも連絡とれるっしょ!やった!」

なんかものすごい喜んでくれる藍さん…。

「レインはやってる?え?やってない?めずらしいね??」

藍さんは今流行りのSNSの名前も出してきた…。

レインは家族とか友達と繋がるのは便利なツールだけど…。

私はあんまり必要と感じないのよね…。

なんせ、友達いないから!家族とも仲悪いし…。

「そろそろ遊び行こうよー!ノアっち〜」

ひとしきりスマホをお互い見てたら、藍さんにそう言われた。

そうだね、そろそろ煩わしい灼熱の太陽の元にいかないとダメよね…。

私は魔界の魔族だから、太陽の元に出ると焼け死んでしまうかもしれないけれど。

グレモリーから託された魔界の日傘を差して、行きましょうか?

意を決して、立ち上がる私…。

私のお気に入りの黒のワンピにこの黒い魔界の日傘。

結構合うと思わない?え?いつもおんなじ服だって?

家出するとき、これしか持ってこれなかったんだからしょうがないじゃない〜。

そいえば、藍さん服を見ると言ってたわね…。

私も服買おうかしら …。でもお金あんまりないわね…。

見るだけならタダだからいいかしら?

そういうわけで、私たちはお洋服を見に遊びにいくことになったのです…。

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