三百六十九話 マダムK

「ごきげんよう」「神のご加護を…」

朝の清冽な空気の中、女子生徒の挨拶がこだまする…。

学校の校門をくぐると、そこは身も心も清らかな乙女の園…。

そう、ここは神田ミカエル女学院…。

中庭の大天使ミカエル像が、通う女子生徒たちを守護している…。

天界の大天使ミカエルは、ここに通う女子生徒たちを見て何を思うか…?

その御心は、まさに神のみぞ知るということなのだろう…。

ここに三年間通えば、お淑やかなお嬢様になって卒業できるという…。

制服は翻さないように、静かに歩き…。

清廉潔白で文部両道、それでいて純粋無垢な心を持った乙女たち…。

この学院には、そういった生徒しか存在しないのです…。

否、今日から新たに校門をくぐった、たった一人の生徒を除いて。


その後、月日はあっという間に経ち…。

冬休みも終わり、2月もあっという間に過ぎた。

2月のバレンタインデーには藍さんたちにチョコをあげた。

かなり喜んでくれたけれど…。

お小遣いがあまりなくて、大したチョコをあげれなかった。

うぅ、自分で自分が情けない…。

藍さんに買ってもらったお洋服代も返さないとだし。

グレモリーから借りた薬代も返さないとかなぁ…?

ちなみにサタン様のカードは使うと…。

私までお尻が痛くなってしまうので…。

使わないようにしている…。

何かすごい即死魔法が使えるらしいのだけれど…。

お尻痛いのは嫌なのであった…。


私はバイトをする決意をしたのである…。

3月に入り、気温も少し上がってきたことだし…。

外出もそんなに辛くない…はず…。

できる限り楽して、稼げるバイトないかなぁ…?

座ってるだけでお金もらえるようなバイト…。

そんなのないかなぁ?

あったら、すごいやりたい…。

前に喫茶店でバイトしたことあるけれど…。

もう接客業は懲り懲りなのであった。

なんにもしなくても稼げるバイトがしたい〜。


私はある日学校から帰ってきて…。

アストラル体になった花子さんにちょっと聞いてみた。

花子さんはとある事情で半透明の魂みたいになってしまった。

花子さんはいつも半透明な身体でいる。

目のやりどころに非常に困るのだ…。

服を着てくれと頼んでいるのだけれど…。

アストラル体なので服は着慣れていないらしい。

最近では、私の方も少しその姿に慣れてきたが…。

聞いてみたというのは、もちろんバイトのことで…。

すっごい楽して、稼げるバイトない?

と花子さんに聞いてみたのである…。

「少しお待ちください、お姉さま…」

そう言うと花子さんはどこからかスマホを取り出した。

アストラル体になっても、スマホは持ってるんだ…。

私はそんなところに感心してしまう…。


花子さんは誰かに電話をかけているようだ…。

花子さんが電話をかけている声が聞こえてくる。

なにやら、マダムKという人物にかけているようだ。

花子さんは電話を終え、スマホをどこかにしまった。

花子さんが前にお世話になったマダムKという人物…。

その人に電話をかけてバイトがないか聞いてくれたらしい。

そのマダムKって何者なんだろう…?

その人が仕事見つけてくれたのであろうけれど…。

すごい胡散臭そうに思うのは私だけでしょうか…?

花子さんは一枚の紙を私に差し出した…。

紙には住所となにやらお店の名前が書いてある。

「そこに行けばいいバイトがあるそうですよ!」

えっへん!と大きな胸を張る花子さん…。

なんかすごい怪しいのだけれど…。

このお店を訪ねてもいいのだろうか…?


私は数日悩みに悩んだ…。

その間、花子さんに早く渡した紙の所に行ってください!と。

すごい急かされたのだけれど…。

そのマダムKって人は本当に信用できるの?

とも、花子さんに聞いてみた…。

断然、信用できます…!と花子さんが答える。

花子さんが学生の時、色々バイトを紹介してくれたそうで。

女の子のための女の子によるバイトを紹介してくれた…。

マダムKはそういった仕事をいっぱい斡旋してくれるそう。

花子さんは懐かしそうにマダムKについて話してくれた。

花子さんは今訳あってアストラル体だし…。

この家から出れないので、学生もバイトもできない…。

ある意味かわいそうな境遇であった…。

しかも、うちの学校ってバイトOKなのだろうか?

それも、花子さんに聞いてみたけれど…。

そんなのバレなければOKです!と答える花子さん。

いいのか、そんなアバウトで…。


悩んでいても致し方ないので…。

私は次の日の放課後、紙に書いてある住所に…。

行ってみることにした…。

本来なら花子さんが案内してくれるはずなんだけれど。

花子さんは半透明なアストラル体なので…。

案内できないことをしきりに謝っていた…。

それは仕方ないのことだよ…。

と私はよく言っておいた…。

ある意味私のせいでもあるし…。


学校から帰ってきて私服に着替えて…。

紙の住所に向かう私…。

住所はどうやら秋葉原らしい…。

住所の横に、いつの間にか地図も書いてあった。

手書きの地図でどうやら花子さんが書いてくれたらしい。

住所だけでは不安だった私は、ほっとした。

秋葉原の中央通りを少し歩いて…。

そこから違う通りに入って少し行った所に…。

小さな雑居ビルがあるらしい…。

私はトコトコ歩いて、ビルを目指した。

程なくして、それらしいビルが見えてきた。

そういえば、履歴書とか持ってこなかったけれど。

いいのかな?もしかしてやばい?

ふと、花子さんからもらった紙を見ると…。

紙の端っこに、話は通してあるから…。

何も持っていなかくていいですよと書いてあった。

はぁぁ、よかった〜。

履歴書もないって怒られるか不安だった。

まぁ、最近は履歴書いらないバイトも増えたらしいけど。

そんなことを考えながら、ビルに向かう私であった。

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