三百六十五話 お薬を買う

「ごきげんよう」「神のご加護を…」

朝の清冽な空気の中、女子生徒の挨拶がこだまする…。

学校の校門をくぐると、そこは身も心も清らかな乙女の園…。

そう、ここは神田ミカエル女学院…。

中庭の大天使ミカエル像が、通う女子生徒たちを守護している…。

天界の大天使ミカエルは、ここに通う女子生徒たちを見て何を思うか…?

その御心は、まさに神のみぞ知るということなのだろう…。

ここに三年間通えば、お淑やかなお嬢様になって卒業できるという…。

制服は翻さないように、静かに歩き…。

清廉潔白で文部両道、それでいて純粋無垢な心を持った乙女たち…。

この学院には、そういった生徒しか存在しないのです…。

否、今日から新たに校門をくぐった、たった一人の生徒を除いて。


冬休みに入ったとある日…。

女悪魔グレモリーの言いつけでサタン様に会うことになった。

寒い日が続くので、私は外出したくないんだけれど…。

ずっと炬燵に入っていたい〜。

それでもすぐにサタン様に会うように言われる…。

私はグレモリーの案内で一路新宿を目指すことになった。

山手線で新宿に向かって…。

どうにか新宿駅に着いたのだけれど…。

私はグレモリーとはぐれてしまって…。

迷子になってしまったのだ…。

新宿駅は広大で複雑な構造…。

初めてきた私はどうしようもなくて…。

しゃがみこんで泣いてしまうのであった…。


泣いていたら、銀髪のお姉さんが助けてくれて。

私が落ち着くまでと、喫茶店に連れて行ってくれる。

少し暗くて、落ち着いた雰囲気の喫茶店…。

私はお姉さんにココアをご馳走になって…。

すごい落ち着いたのであった…。

私たちは店を出て…。

お姉さんに新宿都庁まで案内してもらった…。

お姉さんは都庁で働いているらしく…。

なんとよく聞いたら秘書をやっているという。

サタン様も人間界では秘書をやっているらしく。

私はこのお姉さんがサタン様なのでは…?

と思い始めるのであった…。


お姉さん=サタン様は秘書室?に入った瞬間…。

態度が急変…。なにやらすごい起こっているらしい。

サタン様と私が魔界で会った時に何かあったらしい。

魔界のサタン様は巨大な邪竜のような姿で…。

サタン様が言うには会った時に私が不遜な態度で。

サタン様の逆鱗に触れてしまったらしい…。

そして、サタン様は私を丸呑みにして…。

食べてしまったらしいのだ…。


魔界でサタン様に飲み込まれてしまった私…。

でも、なぜか消化できず…。

お尻からそのまま出てきてしまったらしい。

その時、サタン様のお尻がちょっと傷ついてしまった。

サタン様はそのことをずっと怒っているらしく…。

私を裸にして、全裸土下座をしろと要求した…。

私は申し訳なくて、素直に土下座をした…。

サタン様は私が素直に謝ったことが意外らしく…。

少し、態度が柔らかくなったような気がした…。

サタン様はもしかして痔になってしまったのかな?

そう思った私は、痔の薬を買ってこよう…!

そう決意した…。


「あのサタン様、お尻が痛いのでしたら薬をご用意致します」

私は全裸土下座スタイルのまま、そう言ってみた。

サタン様はまだ訝しげな表情をしている…。

「サタン様のお尻は絶対治ります!信じてください!」

サタン様は怒ると怖いけれど…。

新宿駅で泣いていた私を助けてくれた…。

たとえ、それが私を探していてここに連れ込む口実だったとしても。

ココアをご馳走してくれた御恩をお返ししたかったのだ。

「私、薬局で薬探してきます!少々お待ちください!」

私は立ち上がり、部屋を飛び出ようとした…。

「ちょ、ちょっと待ちなさい!裸のまま行く気?」

サタン様はまた指をパチンと鳴らし…。

そしたら、魔法のように私の服が元に戻った…。

私は全裸なのを忘れていたのであった…。

よかった、このまま部屋を飛び出さなくて…。

大事な服も元に戻ったし…。

そもそもこの部屋の鍵はサタン様が閉めてしまったのだっけ?

私は部屋のドアノブを恐る恐る回してみると…。

鍵はしまっておらず、普通にドアは開いた…。

多分、サタン様が開けてくれたのであろう…。

「すぐ戻りますので、お待ちくださいね…」

私は一礼して、部屋を飛び出た…。


部屋を飛び出た私だけれど…。

よくよく考えたら、薬買うお金がない…。

どうしよう…?

戻って、サタン様に言ってみようかな…?

でも、そんなことしたらまた怒られそうだな…。

私はエレベーターで降りながら、考えていた。

都庁のエントランスに出ると…。

「ご主人様!先に都庁に行くなら仰ってください!」

と怒っているグレモリーがいた…。

先にどんどん歩いていって、私を置いて行ったのは誰だ?

そう思った私だったけれど…。

そんなこと言っていてもしょうがない…。

「グレモリー、何も言わずお金貸して…!」

私はグレモリーにお金を貸してと言ってみる…。

しょうがないですねぇ、と財布を取り出すグレモリー。

よかった。これでお薬買える…。

待っててください、サタン様…!

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