三百十九話 マリトッツオ

「ごきげんよう」「神のご加護を…」

朝の清冽な空気の中、女子生徒の挨拶がこだまする…。

学校の校門をくぐると、そこは身も心も清らかな乙女の園…。

そう、ここは神田ミカエル女学院…。

中庭の大天使ミカエル像が、通う女子生徒たちを守護している…。

天界の大天使ミカエルは、ここに通う女子生徒たちを見て何を思うか…?

その御心は、まさに神のみぞ知るということなのだろう…。

ここに三年間通えば、お淑やかなお嬢様になって卒業できるという…。

制服は翻さないように、静かに歩き…。

清廉潔白で文部両道、それでいて純粋無垢な心を持った乙女たち…。

この学院には、そういった生徒しか存在しないのです…。

否、今日から新たに校門をくぐった、たった一人の生徒を除いて。


藍さんの下着を買いに原宿まで来た私たち…。

表参道駅から外に出て…。

ほとんど初めての原宿を歩く私…。

藍さんは慣れてる感じがするから初めてでは無いのだろう…。

ガラス張りですごいお洒落なお店ばかりでドギマギしてしまう。

個性的なファッションの人ばかりで…。

中にはプロのモデルの人が撮影とかしていた…。

街中で撮影してる人なんて初めて見たので私は狼狽えてしまう。

本当に原宿ってファッションの街なんだと痛感する私…。

表参道から明治通りに入って…。

藍さんの案内でどうにかランジェリーショップに着いた。

ランジェリーショップは英語の名前のお店で…。

うまく読めなかった…。藍さんは慣れた様子で中に入る。


ものすごいカラフルな下着ばかりあって圧倒されてしまう。

藍さんはショーツを何枚かすぐに取った。

黄色い下着を買うのかと思ったけれど、それも当てが外れた。

ブルーの下着とパープルの下着、黒の下着も持っている。

3枚の下着をすかさず持った藍さん…。

なんか迷う素振りも見せないなんて、藍さんすごい…。

藍さんはすぐに試着室に行った…。

下着をつけてみるらしい…。

なぜか私も手を引かれて、試着室に入ってしまった。

ふ、2人で試着室入るなんて。ドキドキしてしまう…。


藍さんは3つの下着を順番に履いていき…。

私に見せつけるようにお尻を突き出したりした。

3枚とも履いた後にどれがいい?と聞いてきたので…。

私は黒い下着がいいと答える…。

藍さんは黒いショーツとブラを買って…。

そのまま着たままお会計を済ませた。

藍さんは下着のまま出て行こうとするので…。

ギャル風カーディガンとシャツとスカートを着せてあげる。

今度は私のゴスロリ風の服を探す番だ…。

来た道を少し戻って、ラフ○ーレ原宿へと向かう。


さすがラフォ○レ原宿…。

なんとゴスロリ服が売ってるお店が三件も入っている…。

私たちは順番に一件一件回っていったのだけれど…。

最初の二件はコンセプトカラーがピンクだったり…。

テーマが明るいものが多くて、個人的には合わなかったのである…。

三件目に入ったお店はゴシックダークのお店で…。

一目で気に入ってしまった服があった…。

純白のブラウスに漆黒のスカート…。

そして、外側は漆黒で中側は真紅色のマント…。

マントと言うと、仰々しいけれど…。

フード付きの外套みたいな感じですごくよかった…。

私はその3点がいい!と藍さんに言う…。

するとすぐに藍さんはカードでお会計してくれた…。

あとで、知ったのだけれど…。

この服たち合計で6万円弱もしたのである…。


私もそのままゴシックダーク系な服を着て…。

お店を出た…。すっごくいいお洋服だけれど…。

あまりにお高いので、着てるだけで緊張してしまう。

あとで、お金稼いで藍さんに返した方がいいのかな?

私は何故かモヤモヤしてしまのであった…。

「ノアっち!これもプレゼント!」

藍さんは首からかけられるロザリオをくれた。

うわぁ、これも高そうだし!?いいのかな??

すぐ首からかけて!と藍さんに言われたのでかけてみた。

すっごく似合うよー!と藍さんはすごい褒めてくれる。

藍さんはスマホを出して、私を撮り始めた…。

マント翻して!とかフードかぶって上目遣いして!とか…。

ポーズの注文までする始末…。即興の撮影会かな…?

何枚も私の写真を撮る藍さん…。

十分間もいっぱい激写して…。

ひとしきり、満足したのかやっと撮影を終わらせてくれた。


「ノアっち、そろそろお腹空いたっしょ?」

私もスマホを見ると、もうすぐお昼の12時になりそうだ…。

うん、少し空いた…。小声で答える私…。

慣れない服で、激写されて少し疲れたのだ…。

「美味しいスイーツのお店行こっか!」

藍さんは私の手を引いて歩き出す…。

「藍さん、私あれ食べたい…。春に流行ってた」

私はネットで見た美味しそうなスイーツを思い浮かべた。

でも、名前が思い出せないのであった…。

イタリアのローマでよく食べられるスイーツで…。

「マリ…。マリー?マリィ??」

私はよく思い出せないで、よくわからないことを言う。

「あぁ!あれっしょ!マリトッツォ!」

そう!そうそれ!さすが藍さんよく知ってる〜!

パン生地みたいなのにたっぷりの生クリームが挟まれている。

あのお菓子が食べたかった私だった…。

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