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読書で人と人がつながる街に

*これは2015年、名古屋市文化振興事業団が発行する「なごや文化情報」という冊子に掲載していただいた拙文です。市の公共施設で無料配布されていたらしいですが、すでに入手不可能だと思うので、ここに再掲させていただきます。ちょうど秋だし。

「燈火稍(ようや)く親しむ可く/簡編卷舒(けんじょ)すべし」。「秋になって日が短くなったら、灯りの元で書物を開こうよ」という、唐の詩人韓愈(かんゆ)のこの一節が、「読書の秋」の由来だそうです。そろそろ読書の季節ですね。そしてせっかく本を読んだなら、それを人と分かち合ってみてはいかがでしょう。私も大学のサークルで「読書会」と出会い、みんなで同じ課題図書を読み議論や意見交換をする楽しさを知りました。もちろん素朴な感想から深く掘り下げた分析まで、読み方はさまざま。でもどれが正解というわけではなく、いろんな読み方があることがわかれば、自分の読書がさらに広がります。


名古屋市内やその周辺で、たくさんの読書会が開かれているのをご存知でしょうか?「日本最大級の読書会コミュニティ」と呼ばれている「猫町倶楽部」は2006年に名古屋でスタートし、今では東京や関西にもその活動が広がっています。課題図書もビジネス書、文芸書から哲学書、はてはBLまで。さらに映画についてのトーク、書評講座や講演会など、自分の興味関心に合ったイベントに参加できます。

自分の好きなジャンルについて、同好の士と語り合うイベントもあります。その代表が、翻訳ミステリー大賞シンジケート主催のミステリー読書会。これも北海道から福岡まで日本各地で開催されていますが、その中でも名古屋読書会は全国屈指の人気ぶりです。名古屋在住の書評家、大矢博子さんが幹事となって、年3回ほど開催されていますが、その和気あいあいとした雰囲気が最大の魅力。約40名の定員がほぼ半日で満席となるほどの盛況で、毎回遠方から参加される方も少なくありません。さらにプロの翻訳家や作家、編集者などの豪華なゲストから、意外なウラ話なども聞けます。

このミステリー読書会に触発されて、2014年からは名古屋SF読書会も始まりました。やはり名古屋在住のSFライター、渡辺英樹さんや私が幹事となり、SFの楽しさを広く知ってもらおうと、古典的な作品を中心に課題図書を選定しています。また同年に名古屋SFシンポジウムというイベントも始まり、プロの作家、翻訳家の方たちをゲストにお招きしてトークイベントを繰り広げています。


さらに、私が勤務する椙山女学園大学では作家・評論家によるパネルや、作家の方をお招きしてのトークショーを開催してきました。

パネルでは本学教授の堀田あけみさんを中心に、大矢博子さん、水生大海さん、太田忠司さん、吉川トリコさん、後藤みわこさんなど地元所縁のみなさんをお招きして、毎回楽しいお話を聞かせていただいています。

トークショーでは小松エメルさん、澤田瞳子さん、初野晴さんなど、人気作家の皆さんをお招きして、司会の大矢博子さん(本当にお世話になっております!)による鋭い質問やツッコミで、先生方の素顔や本音を引き出します。今、和風ファンタジー「八咫烏」シリーズで大人気の阿部智里さん、じつはこの椙山女学園大学でのイベントが、人生初の単独トークだったんです。

今年度は残念ながら、コロナ禍のための上記のイベントはほとんどが延期または休止となってしまっております。ですが、こうした読書関連のイベントは、さまざまな人とも出会い自分の世界を広げられるのも大きな魅力です。またこうしたイベントがにぎやかに開催されて、名古屋の読書文化がさらに盛り上がっていく日を楽しみにしています。

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