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小学校教諭を1年で退職し、落語教育で人から愛される人を育てる、小幡七海

様々なバックグラウンドを持ったそのまんま荘の住人がこれまでどのような人生を送り、今を生きているのか。住人一人一人の人生を紹介していく連載。

第一回目の記念を飾るのは、小学校教諭を経て、花まる学習会という将来「メシが食える大人」や「魅力的な人」を育てる学習塾で働く、おばちゃんこと小幡七海。

小幡七海(おばたななみ)|1995年生まれ、24歳。京都府出身。
2017年、第14回全日本学生落語選手権策伝大賞で日本一に輝く。その後、京都府で小学校教諭として就職。リアルな教育現場の実態に疑問を持ち、1年で退職し、花まる学習会に夢社員として就職。
落語教育でどんなことも笑いに換える「笑換力(しょうかんりょく)」を鍛えるカリキュラム開発し、様々な場所でワークショップを行なっている。

落語に出会ったきっかけ

「落語に出会ったきっかけは、大学のお笑いサークル」

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--第一回目に抜擢された、おばちゃん!よろしくお願いします!いろいろおばちゃんの人生について聞いていきたいんだけど、落語との出会いについて詳しく教えて欲しいです。

小幡
お願いします!そうね、落語に出会ったきっかけは、大学の落語研究会。まず、大学のお笑いサークルに入りたくて大学受験をしたのね...

--えーー!待って待って、凄いねそれ。大学をサークルで決めたの?

小幡
もちろん先生になりたくて大学には行ったけど、思う存分お笑いに没頭できるお笑いサークルに憧れて。「落語研究会」っていうサークルだったんだけど、大阪のプロの芸人さん達とお笑いライブに出ていたような先輩のやる素敵な落語と漫才に一目惚れして。「この先輩にお笑いを教わりたい!」って思ったの。落語にはあまり興味がなかったんだけれど、思った以上に面白くて、気づいたら落語の虜になってた。

--おばちゃんを虜にした落語の魅力ってどんなところですか?

小幡
落語って話し手は声と表情と仕草だけで物語を伝えるのね。だから聞き手は想像の世界だけで楽しめる。何百年も前から「おもしろい」と言われ、語り継がれた物語。「真の笑い」が落語には秘められている。「こんな世界があるんだ!」と、聞くたびに感動するの。プレイヤーとしては、落語の高座に上って落語をした時にお客さんの笑いの渦に巻き込む感じがたまらなくて、落語にはまってしまった。

--なるほどね。そんな、おばちゃんは、大学三年生の時に「全国学生落語選手権」で日本一になったと思うんだけど、当時の心境はどんな感じだった?

小幡
ここには、いろいろなエピソードがありまして...。大学二年生で同じ大会に出た時に、ベスト8まで進んだの。その大会は決勝に8人進出して、そこから優勝者が選ばれるんだけど、その決勝大会でネタを飛ばしてしまって。会場には、NHKのカメラもあるし、審査員もいるし、お客さんは1000人以上いるし、圧迫感がすごくて萎縮してしまったんだよね。それがすごく悔しくて、このままでは終われないと思って、翌年に出場したら、優勝をいただいた。優勝するなんて思っていなかった。

--優勝を狙っていなかったんだ?

小幡
そう。優勝するために大会に出たわけではなく、去年のリベンジのために大会に出たの。ただ、あの日は何か違った。何かに憑依されている感じがした。会場がすごく小さく見えて、会場のお客さんと一体感もあった。去年のあの失敗があったからこそ、大賞をいただけたのよね。

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落語家ではなく、小学校教師になった理由

「落語クラブの先生との出会い」

--そうなんだね。気になった点があって、日本一になったのに、落語を仕事にせず、なぜ小学校教師になったの?

小幡
腕のある、本当に面白くて素敵な落語家さんはたくさんいらっしゃる。私はそこに張り合って仕事にするのは、少し違うかなと感じていて。ただ単に大会で一位を取って終わるのはもったいないなとも思っていた。私は落語を極める人ではなく、落語を知らない人に落語の魅力を伝えたいという思いになっていったのよね。そんな時に、小学校で落語クラブを作っている先生と出会ったの。その方は落語を使って、子どもたちに自信をつける教育をしていらっしゃって。落語をして自信を付けた子どもたちは、実際に学校でいじめを受けなくなったり、「落語が楽しい」という理由で不登校の子が登校できるようになったりと、クラスの雰囲気がぐんと良くなっていったのよ。落語自体の楽しさも伝えながら、子ども達が実際に落語をすることによって自信も提供できる。私は落語家ではなく、子どもたちに落語の魅力を伝えようって思って教員になったね。

--じゃあ、念願の小学校の先生だね。

小幡
実は..ずっと幼稚園の先生になりたかったの。でも、採用試験に落ちてしまって、受かっていたのが小学校で...。元々、私のやりたい教育が、子どもに勉強を教えること、学力をあげることではなく、コミュニケーションの大切さを教えることだった。例えば、会った人に挨拶をする。相手を思って言葉をかける。こういった人間性の部分を子どもに教えることが出来るのが幼稚園の時期だと思っていて。でも、小学校の子ども達にも教えられることはあると思って。小学校の先生になる決意をしたの。

体感した過酷なリアルの教育現場

「夢だった、小学校の先生?」

--でも、夢の教員で、落語クラブを作るという夢もあって、順調に行った?

小幡
それが、小学校教諭は想像以上に過酷だった。大学時代、教育実習の際に先輩たちに、「とってもとっても大変だけど、やりがいがある仕事だよ」と言われていて、覚悟の上で就職したんだけど、想像の20倍くらい大変だった。1日のスケジュールがすごくハードで、子どもと向き合う時間が取れず、丸つけに追われる日々。授業の片付け、丸つけが終わらないまま、放課後は職員会議に呼ばれ、課題を残したまま家に帰る。また、朝から終わってないものを片付ける。自分がやりたかった教育が全くできない、疲労困憊の日々だった。就職して、1ヶ月で「このままじゃダメだ。何か変えないと」と思った。

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人生が変わった恩師との出会い

「花まる学習会の代表高濱さんとの出会い」

--なるほどー。どういう経緯で小学校の先生を辞めて、花まる学習会に就職したの?

小幡
教育現場の実態を体験してから、「教職を2年間休職して、大学院に入り、もう一度教育について勉強してから子どもたちの前に立ちたい!」と思ったの。そんなある日、Facebookでリアルな教育現場の発信をした投稿を見た知り合いに、花まる学習会の代表高濱さんを紹介してもらい、大阪で初めてお会いして。「私は落語教育をやりたいんです!」と話すと、「落語いいよね~」と言われ、そこで花まる学習会の話を聞いたときに、こんなにワクワクする道があるんだ。もう待ってられない!次の道へ進みたい!と思い、1年で辞職し、花まる学習会の夢社員になる決意をしたの。

--おばちゃんにとって、花まる学習会のどの点が魅力的だったの?

小幡
最初は演劇教育(演劇を使って表現力、人前に出る力を鍛える)というプログラムがあったことがきっかけ。目指す方向が同じだったのでジョインして落語教育をやりたいなと思ったの。就職してから研修や現場を見て、花まる学習会は「目の前の子どもたちの『今その瞬間』と『その先』の成長を見続けること」にフォーカスできる仕事であることを心から感動して。また、夢社員っていう社員制度が花まる学習会にはあって、週3回は花まるで働いて、残りは自分の夢を追いかけていいよ!っていう制度。こんな魅力的な仕事はないなと思い、完全に心をもっていかれた。

親の反対と公務員という壁

「公務員の安定か、自分のやりたいことかを天秤にかけた」

--小学校の先生を辞める時、親の反対はなかったの?

小幡
8月に親に報告をしたんだけど。「もうやめます!花まる学習会に就職します!」って。私は落語教育をやりたいんだって話と共に。所属していた小学校に鬱病の先生が4人出た話をした。毎日くたくたで帰って、このまま続けていたらうつ病になった方が怖いんじゃないかと親が納得してくれました。

--えっ、そんなにスムーズに納得してくれたの?

小幡
いや、ずっと反対をされていたんだけどね。親の悩みの一番は公務員ということからの収入面の不安。「安定してるのに、なんで辞めるの?採用試験も難しいし、福利厚生もしっかりしているのになんで?」と毎回言われた。でも、私はあまり安定に魅力を感じなくて。「安定ってなんだ?」みたいな。ほんとにやりたいことに時間が作れなくて、収入のために働くのは安定なのか?それが幸せなのかな?
それよりも、毎日やりたいことをして、ワクワク生きたいなと思った。上司に継続、辞職を表明する最終決断が12月で、その頃には、親も、曲げない私と「過労で倒れるくらいなら…」と納得してくれた。
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--1年目での決断!早い!

小幡
夢があったから決断できたことだった。もし、私がやりたいことがなければ、ずっと小学校の先生をしていたと思う。嫌いな職業ではなかったから。でも、私がやりたい夢と現状を天秤にかけたときに、落語教育ができる花まる学習会に進みたいと思った。ただ、私は奨学金も、親のローンもなく、生活させていただいていたから、もし自分に奨学金とかがあれば、「安定を捨てる」という決断はできなかったかもしれない。それがあるから、親にはすっごく感謝をしてます。

--なんか、決断時に天秤にかけるっていうのは凄いわかるなー。

小幡
決断をしてから、Twitterで「小学校の先生を辞め、落語教育の夢へと進みます。」と投稿をしたの。すると、凄い数のフォローとリツイートをしていただいたんだけど、その方々のツイートを見て見ると「小学校の先生歴5年。やめたいです。」「転職したい。」のようなツイートばかり。そのうちの1人から、
「どうして辞めたんですか。どうやって決断したんですか。私も辞めたいのですが、やりたいことがないので踏ん切りがつかないのです。」
というメッセージが。これをみて、天秤にかけるものがない人もいるんだなって思ったの。

退職後の心境

「花まる学習会は、最高の仕事場だった」

--先生を辞める時の不安。新しい職場でやりたいことが出来るのかという不安など。いろんな悩みがあったと思いますが、実際、今の心境はどうですか。

小幡
花まる学習会に入ったときに、こっちに来てよかったなって毎日思った。教育を学び直したいから小学校を辞めたって理由が1つあったんだけど、花まるで1から教えていただいた。子どもたちへの関わり方や声掛けの仕方。毎度しっかり言語化をして授業の振り返りが出来て、子ども達と共に学び続けられる場所なんだよね。職場の先輩も自分の成長を見てくれて、目の前の子どもたちのことをしっかり考えらえる憧れの先輩方ばかり。毎日こんなに楽しくていいのかって思ってる。

現在の近況報告

「より多くの人に落語教育を!」

--決断してよかったね!最高だ今の人生!今の近況を教えて欲しいです!

小幡
花まる学習会で、以前までは夢社員だったんだけど、正社員になったの。4月から落語教育のワークショップで小学校や、ワークショップの依頼を受けたらそちらに行き、花まる学習会を知らない人や、落語を知らない人に魅力を伝える人になろうと思っていて。いろいろな所で講演をうちたいと思ってたんだけど、そんな中コロナになって、今は出向けてはないの。今後は自分の活動をもっと広げていき、落語の面白さと落語教育で鍛えられる「笑換力(しょうかんりょく)」の魅力を、たくさんの人に伝えていきたい。講演ができる場所を増やしていくことが直近の私のやることです!

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見ている方へのメッセージ

「やりたいな、挑戦したいなって思ったものをずっと突き進んで生きてね!」

--最後に見ている方へ、メッセージをお願いします。

小幡
子どもたちへ普段やっている授業のようにやるね!
じゃ、じゃん!ななみ先生からみんなにクイズです!ななみ先生の将来の夢はなんでしょう!

1, みんなを沢山笑わせる落語家さん
2, みんなにハッピーを届ける先生をやり続けること
3, おいしいものをいっぱい食べること
さて、どれでしょう!

--うーん、難しいけど、2番ですか?

小幡
正解は1、2、3の全部でした!!!
ここで伝えたいのは、大人になった、今でもやりたいことってたくさんあるんだってこと。夢はいつまでも持ち続けられるし、持っているとワクワクして生きていられるんだよね。だから、みんなも好きだな、やりたいなと思うことに挑戦して、前へ真っ直ぐ突き進んで生きてね!

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小幡七海からの学び

・心が踊ることに、飛び込む。
・夢を持つと、人生の決断がしやすくなる。
・今、ワクワクしながら生きることで、毎日楽しく生きることが出来る。

そのまんま荘については、下記の記事からどうぞ!

(執筆:立野凌央)


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