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小学校同級生・東原貴教の証言 【小説】どの顔もあの女#14

 高梨、そんなヤツおったっけ。俺は知らんヤツじゃけど。あ、卒アル持っとる? 見せてくれん? 写真見たら思い出せるかもしれんし。
 あ、こいつね。わかった。男らで集まったときに「高梨ってブスじゃな」って話してたわ。目細いし、眉毛ゲジゲジじゃって、全然可愛くないけん。どんなヤツだったか? あんま覚えてないんじゃけど、俺ん中では存在薄かったな。
 成績良かった? へー、そうなん。俺は勉強せんかったし、成績のことなんか興味なかったからな。高梨が勉強できたとかできんかったとかも、正直全然記憶にないんよ。

 俺がどんな小学生だったか? そんなん、今日の話に関係あるん? ないじゃろ別に。うーん、でも聞きたいんならしょうがないな。俺はただのアホじゃったで。今もアホじゃけど。高校中退で学歴もないしな。
 でも、ヤンキーだったわけでもないんよ。学校やめてからは一応ちゃんと働いとるけん。二十歳で子どもできて、今3人おるけん、ちゃんとするしかないじゃろ。嫁と子どもを食べさせんと。じゃけん、今は真面目に働いとるよ。
 俺が高梨ってヤツに何かしたか? いや、何も覚えてない。喋ったことあるんかな。ほんま記憶にないんよ。

 え、「おめえの手、腐っとるな」って俺があいつに言った? 何のことじゃろ。わからん。しもやけのこと? 手にしもやけができてた?
 ふーん、俺あいつにそんなこと言ったんじゃ。ハハハ。それは結構ひでえな。まあガキってさ、あんま何も考えずにモノ言うもんじゃろ。言われたこといつまでも覚えてる方が怖えよ。
 で、なんで今日、高梨ってヤツのこと聞きにきたん? は? 死んだ? どういうこと?
 最近の写真あるん? ……変わりすぎじゃろ。誰これ? どういうこと? 俺ついていけんわ。なんかもういろいろ怖すぎじゃろ。怖えよ。もう帰れや。


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