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【小説】どの顔もあの女

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自宅マンションで絞殺体として発見された、自称小説家の高梨真矢(33歳)。一体なぜ、誰に彼女は殺されたのか。真矢の恋人が遺された“資料”をもとに、真矢の過去を知る人々のもとを訪ね、… もっと読む
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2020年5月の記事一覧

妹・高梨葵の証言 【小説】どの顔もあの女#28

 実家にいた頃の姉との思い出ですか? ……正直、そんなにないんです。4歳離れてるとあまり交わる機会がないんですよね。  小学生時代の姉がどんな子だったか、ですか。覚えてることを何でもと言われても、意外と難しいですね。なんとか思い出します。  あ、ありました! 妙にケチだったというか、変わったところでケチでした。今でも覚えてるのは、電気をつけずにトイレに入るクセですね。「電気がもったいないから」「つけなくても事足りるから」という姉なりの考えで、電気をつけないんですよ。  だか

バツイチ仲間・結城未来の証言 【小説】どの顔もあの女#27

 真矢ちゃんとは恋愛の話をすることが多かったです。出会ったきっかけですか? 前職の上司が真矢ちゃんと知り合いで、「結城さんと合いそうな子がいるんだ。彼女も格闘技が好きなんだよ」とつなげてくれて。  サバサバした性格も私と相性がよかったみたいで、意気投合したんですよね。一緒に格闘技を見に行ったこともありました。  合コンも何度か行きましたね。私たちバツイチっていうのも共通してて、お互い30歳くらいで別れてるんですよね。私の方が5歳上ですけど、年齢差は全然気にならなかったかな。

落語家・川端辰乃助の証言 【小説】どの顔もあの女#26

 知らせを受けたとき言葉が出ませんでした。高梨さんと知り合ったのは仕事です。僕は前に本を出してまして、出版に絡むインタビューを受けて、彼女の記事がとても評判が良かったんです。それから仲良くしてもらってます。  ……はい、前に週刊誌に撮られた相手も彼女です。真打昇進後数カ月経っていたときで、注目度が高まっていた時期でした。「人気落語家と関根麻里似美女の熱い5時間」みたいに書かれました。高梨さんが関根麻里さんに似てるかはさておき、確かに彼女の部屋に出入りしていたのは事実です。でも

大学同期・近藤知沙の証言 【小説】どの顔もあの女#25

 真矢さんのニュース、聞きました。正直、言葉が出ません……。はい、大学時代、同じサークルに入ってました。私にとって真矢さんは、今まで出会ったことがないタイプの人だったと思います。つかみづらい部分もところどころあったので。  最初にびっくりしたのは、ミクシィで「友達」になって、真矢さんの日記を見たときです。スナックでバイトを始めたと書かれていて驚きました。周りに水商売バイトをする子がいなかったので、けっこう衝撃を受けたというのが正直な感想です。  スナックで働く前はお弁当屋さん

取材相手・杉原拓のメール 【小説】どの顔もあの女#24

Fwd: 【NKP】※11/13午前までのお戻し希望です※ 杉原様へ原稿チェックのお願いです To: 江藤桐花 <kirikaeto@gmail.com> 高梨さんの彼氏さんへ こんにちは。 高梨さんと仕事で繋がりがあった、ライターの江藤桐花と申します。 この一連のメール、当時、高梨さんから受け取りました。 丸ごと転送しますね。 ・取材で出会った、まったく恋愛対象ではない30歳くらい上のおじさんから、1-1での食事に誘われて困っている ・ネットストーカーされていて怖い

前職の先輩・西本早百合の証言 【小説】どの顔もあの女#23

 えっ、真矢ちゃんが死んだ? どうして? 殺されたんですか? え、ホントですか……。信じられないですね。まだ若いじゃないですか。なんで殺されちゃうのかな。  はい、真矢ちゃんは私の部下っていうか、同じチームの後輩でしたね。私は中途入社で、真矢ちゃんは新卒入社です。4学年離れてましたね。うちの会社、新入社員は1カ月研修してから、各部署に配属されるんですね。5月の連休明け、初めて会った真矢ちゃんは、いい子に見えました。暗めな茶髪で派手な印象はなくて、真面目そうだなって。でも、私の